このコーナーでは、一般家庭で暮らす動物たちを紹介しています。家族の一員として生活する犬や猫、その他の動物たちが登場。今回は、熊本県に住む猫の「mana(まな)」ちゃん2歳です。飼い主の佐紀さんにお話を聞きました。
manaちゃんはトイプードルの「hina」ちゃんに育てられました
友人からのヘルプに駆け付け
----:出会いはどこで?
佐紀さん:仕事中に友人から電話がかかってきたんです。「うちのビニールハウスに、脚が動かない子猫がいるんだけど…。近づくと『シャアシャア』言って引っ掻かれるんだよね。助けて!」って(笑) 仕事が終わって、すぐに駆け付けました。
----:子猫が“ひとり”でいたのですか?
佐紀さん:そうなんです。背中をケガしていて、傷口に膿が溜まっているし、(後ろ)脚は動かないし…。
「お話」で落ち着かせて病院へ
----:佐紀さんには懐いたのですか?
佐紀さん:やっぱり「シャアシャア」言っていました。生後3ヶ月くらいだったんですが、精一杯抵抗していたんだと思います。友人には、「私がこの子とお話しするから」と言ってふたりだけにしてもらいました。「分かるでしょ? 私は怖くないよ」って、話しているうちに落ち着きました。
----:その後、お宅に連れ帰ったのですか?
佐紀さん:「ケガの治療をしないと」と思い、動物病院に電話しました。「こんな猫を保護したんです」って言ったら、先生には「またか~」って言われました(笑) 以前にも保護した動物を診ていただいたことがあったので…。
----:ケガの診断は?
佐紀さん:背中の膿は取り除いてもらいました。でも、骨が3か所折れているのが見つかりました。(下半身がまひしていたので)おしっこを自力で出せなければ、安楽死をおすすめすると言われました。翌朝、おしっこが出たと聞いて一安心。脚が動かないのは背中のケガが原因だろうということで、様子を見ることにしました。
あまり悩まず自然な流れで決めたお迎え
----:すぐに治ったのですか?
佐紀さん:10日間、入院しました。その間、里親を探すことも考えましたが、私が引き取ることにしました。
----:脚のこともあったわけで、悩みませんでしたか?
佐紀さん:先生から「向き合う覚悟はできている?」と聞かれました。でも、「hana(はな)」(愛犬)が亡くなって翌年のことだったので、「あの子の代わりに来てくれたのかも」という縁を感じて、迎えることに決めました。あと、茶トラのメス猫は珍しいとも言われました。「珍しい子なんだ!じゃあ、飼おうかな」って(笑) ウチはみんな茶色だし(レッドのトイプードルたち)、「色合いもちょうどいいかな~」くらいで、あまり深くは悩まなかったですね(笑)
----:初めての子猫だったそうですが、心配はありませんでしたか?
佐紀さん:子育ては、「hina(ひな:トイプードルの女の子)が何とかしてくれるだろう」と思ったんです。それまでに2回、自分の産んだ子犬を育てた経験があったので。実際、すぐに“母親”になって面倒を見てくれました。
毎月の入院を経て健康に
----:ケガはすぐに治ったのですか?
佐紀さん:1か月ごとに入院していました。骨の中に膿か細菌が入って、全部取り切れない状態のようでした。手術は避け、膿が溜まって(体の表面に)ポコンと出てきた時に処置していただいていました。2018年の2月に保護して3月から治療を始め、2019年の6月までは毎月入院でした。
----:1年以上…大変でしたね。今は治っているんですか?
佐紀さん:はい。私の妊娠が分かったと同時に、症状が消えたんです。(動物病院の)先生も驚いていました。このヒト(息子さん)が治してくれたのかも知れないですね(笑)
----:脚も治ったのですか?
佐紀さん:脚の回復は速かったんです。股関節を動かしたり、膝を曲げ伸ばししたり、リハビリはしましたが1~2か月で動くようになりました。最初はぎこちなかったですが、生後半年を迎える頃には普通に歩けるようになりました。
----:ケガの原因は何だったのでしょうか?
佐紀さん:はっきり分かりませんが、「カラスに突っつかれたんじゃないか?」と言われました。本当に小さかったので、鳥に襲われるのもあり得るかなと思います。
トイプードルの夫婦が子猫の子育て
----:お宅にいるワンちゃんたちとケンカしたりしませんでしたか?
佐紀さん:ひなが本当によく子育てしてくれました。特に仕事に行っている間は、彼女にお世話になりっぱなしでした。猫が嫌いで威嚇したりするひなが、まなにだけは最初から優しかったんです。
どこかに行こうとすると、「危ないよ」という感じでまなの首の後ろをくわえて近くに寄せたり。自分の子どもの時と同じように、子育てしてくれました。
----:問題はなかったんですね?
佐紀さん:全然ありませんでした。ひなと「leo(レオ:ひなちゃんのパートナー)」に挟まれて寝てました(笑) あの頃は、“3にん”の写真を撮るのが癒しでたまりませんでしたね。
毎晩、木村さんを癒していた「3にん」
◆今では「自分が1番」なツンデレ
----:それから2年。元気な大人に成長したまなちゃんは、どんな子ですか?
佐紀さん:気が強くて神経質です。私やひなやレオに対しては強気で、いつも「自分が1番」。
私の父に対してはすごく甘えん坊で、一緒に寝ないとダメなんです。強気なのに甘えん坊な「ツンデレ」加減が可愛いんです! でも神経質なので、苦手な(人間の)子供が家に来ると、隠れて絶対に出てきません。
----:毎日癒してくれていた“3にん”に、一言掛けるとしたら何と言いますか?
佐紀さん:「絶対迎えに行くから、ちょっと待っててね」。結婚して、今は離れて暮らしているんです。環境を整えて、またみんなで一緒に暮らすのが今の目標です。
動物病院の先生に「またか~」と言われたという佐紀さんは、これまで色々な動物を保護してきたそうです。愛犬のレオ君も、1歳の時に飼育放棄の家庭からお迎えしました。そのことも出会いの一つと捉えているようで、佐紀さんからは「保護」といった身構えは感じられません。
インタビュー中、抱っこしていた1歳半の息子さんの顔を見せながら、「命はみんな同じじゃないですか~」と明るく語ってくれました。
その様子からは、すべてに自然体で接する純粋さが感じられます。警戒して「シャアシャア」言っていた子猫を、「お話」で落ち着かせたという佐紀さん。彼女のそんな姿勢が、言葉の壁を越えて気持ちを伝えたんでしょう。
動物との付き合い方には、こんな形もあるのだということを知る新鮮なインタビューでした。ちなみに、manaはハワイ語で「奇跡」という意味だそうです。色んな奇跡に彩られたまなちゃんと佐紀さんの物語からは、学ぶことも多そうです。
佐紀さん
現在は、結婚前からご主人と暮らしていた「じぞー」君(2歳のマンチカン)と「ねこを」君(9歳のメインクーン)、1歳の息子さんと“5にん”で福岡県に暮らす。実家のある熊本県の障がい者施設で働いていた際、セラピー犬の力に触れ、将来は得意の音楽に動物介在活動を合わせた取り組みをしたいと語る。学生時代はバドミントンで全国的に活躍したスポーツウーマン。保育士の資格ももつエネルギーに溢れる女性。