6月4日・5日に、埼玉県越谷市で「レイクタウン防災フェス2022」が開催された。災害への備えや発生時の対応について学べる体験型のイベントで、2012年から防災意識の向上を目的に実施されている。ペットのための備えについての展示も行われ、愛犬連れの来場者も多く訪れた。
大切な家族を災害から守るために
ペット用品販売などを手掛けるイオンペットは、2020年に越谷市と「災害時における愛護動物救護活動支援に関する協定」を締結している。初参加の今回は、同市と共同で「ペットの防災への備えの重要性」を飼い主に訴えた。
ペットフードや体を拭くウェットティッシュ、トイレシートや猫砂、においの漏れないビニール袋など避難生活で必要な一式が「防災おすすめグッズ」として紹介されていた。こうした小物類は、ひとまとめにして人間用の非常用持出袋と一緒に保管しておけば安心だ。
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災害時には、ペットと一緒の「同行避難」が環境省から国の指針として各自治体に推奨されている。ただ、愛犬や愛猫と一緒に過ごせるかどうかは避難所の方針や設備によって異なる。いずれの場合も、周囲への配慮は欠かせない。折り畳み式のサークルやケージ、クレートなども防災には欠かせないグッズとして紹介されていた。
ペットの移動病院「ドクターカー」
動物病院の運営も行う同社では、緊急時や災害時にドクターカーが活躍している。フランスのルノー社製商用バン『カングー』をベースにしたクルマには、エコーなどの医療機器や酸素ボンベを搭載。温度管理の必要な薬剤などは、備え付けの冷蔵庫に保管しておくことができる。
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そのほか、洗浄用のシンク(水100リットルを貯蔵可能)や診察台も完備した“ペットのための移動病院” は、幕張(千葉県)と相模原(神奈川県)にある24時間対応の動物病院に配備されている。日よけを設置することも可能で、屋外での診察もできるように作られており緊急時だけでなく災害時には頼りになる存在だろう。2017年に起きた岡山県の水害では、幕張からこのドクターカーが出動し、倉敷で被災したペットのケアにあたったという。
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獣医師による無料健康相談
期間中の2日間は、獣医師による無料健康相談も受け付けた。4歳のチワワを連れた飼い主は、愛犬が頻繁に咳き込むのが心配だとブースを訪れた。「これまでの検査で悪いところは見つからなかったのですが、念のためにこちらでもご相談しました。アドバイスも頂けて安心できました」と話していた。
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マイクロチップの装着
イオンペットのブースでは、健康相談とあわせて犬へのマイクロチップ(MC)装着を行っていた。装着費用は税込み5500円だが、イオンペットの店舗(ペテモ)で使えるポイントに還元されるため実質無料となる。動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)の改正に伴い、この6月よりブリーダーやペットショップなどの販売業者は犬と猫にMCを入れることが義務化された。既に一緒に暮らしている犬・猫に、一般の飼い主がMCを装着させる法的義務はない(努力義務)。

とはいえ、MCによって迷子になった場合に家族が見つかる可能性が高まり、災害時などにも役立つ。専用の器具で登録番号を読み取り、環境省のデータベースに照会することで飼い主が分かる仕組みだ。一部で健康上のリスクを心配する声もあるが、イオンペットの小倉政光獣医師によれば安全性は高いそうだ。
「イギリスのデータでは、MCを入れて腫瘍ができるリスクは370万頭に2頭と言われています。日本で飼育されている犬は約710万頭ですから、日本中の犬にMCを入れても(腫瘍ができるのは)4頭ほどです。一方、熊本の震災では、1000頭の犬と1400匹の猫がいなくなりました。熊本で飼われている犬は8万頭いますので、80頭に1頭が迷子になった計算です。それを考えると、迷子になるリスクの方が高いのでMCを装着する方が良いと思います」と飼い主には説明しているという。
今回のイベントでは、2日間で80頭の健康相談を受け付け、17頭にMCの装着を行った。装着費用のポイント還元は、7月1日から2023年2月28日までの期間、全国のペテモ動物病院またはイオンペット系列の動物病院でも実施され、同社は引き続きMC装着の推進・サポートを行っていくとしている。
クレートトレーニングの重要性
そのほか、もしもの時に慌てないための準備や非常用持出品のチェックリスト、「家にペットがいます」と書かれたステッカーや携帯用カードの無料配布も行っていた。
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こうしたアイテムを活用し、大切な家族の一員である動物たちと離れ離れにならないための準備を日ごろから心がけたい。
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小倉獣医師は、災害対策で大切なことの1つとして「クレートトレーニング」を挙げる。
「私も熊本の震災時には現地で救護活動を行いました。避難所での生活では、クレートの中で落ち着けることが大切です。動物自身だけでなく、周囲の方々も大きなストレスなく過ごすことができます。移動中もキャリーに入れることで、瓦礫(がれき)や割れたガラスなどでケガをしたり、離れ離れになってしまったりするのを防ぐことができます。普段から自ら喜んで中に入り、くつろいだり眠ったりできる場所にしておくと安心です」
楽しく学べる体験型イベント
レイクタウン防災フェスではこのほかにも、消火器を使う「初期消火体験」や高所作業車への試乗、非常食の試食など体験型のコンテンツが多数用意されていた。救急車の内部見学や白バイに座っての記念撮影、水陸両用車両の展示などもあり、ファミリー層を中心に賑わいを見せていた。地震や洪水などに見舞われることの多い昨今、子どもから大人まで、楽しみながら防災について学べるイベントの意義は大きい。
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ペットの飼い主は、フードやペットシートなどの必需品を整理して備蓄しておくと共に、犬や猫に関してはクレートトレーニングを忘れずに行うことが重要だろう。
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