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愛知県で狂犬病発症を確認、国内では14年ぶり…海外での感染に注意、愛犬には予防接種を

インドネシアで狂犬病のワクチンを受ける子犬
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5月22日、愛知県豊橋市は、市内の病院に入院中の患者が狂犬病と診断されたことを発表した。日本では、2006年にフィリピンで犬にかまれた旅行者2名が帰国後に発症・死亡して以来14年ぶりとなる。

フィリピンで感染

この患者は、今年2月にフィリピンから来日。5月18日に体調不良で入院した。狂犬病の疑いがあったため、翌日検体を採取しPCR検査を行ったところ、22日に狂犬病と確認された。検出されたウイルスは現在フィリピンで流行しているものと非常に似ており、入国後に動物との接触歴も無いことから、昨年9月にフィリピンで犬にかまれたことが原因と考えられている。

発症した場合、ほぼ100%の致死率

狂犬病は犬だけでなく人を含めた全ての哺乳類が感染するウイルス性の病気で、発症後の有効な治療方法はなく、発症するとほぼ100%死亡する。日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドを除く世界各地、特に発展途上国では現在も発生しており、世界保健機構(WHO)の推計によると、年間5万人以上が亡くなっている。人から人への感染はなく、犬、猫、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリ、マングースなどにかまれることでウイルスが唾液から体内に侵入し発症する。

発熱や食欲不振、強い不安感などの初期症状から、ウイルスが神経組織に達すると麻痺や精神錯乱などの神経症状を呈し、昏睡状態となって呼吸障害により死亡する。また、水を飲もうとする場合や冷たい風にあたった時に首の筋肉がけいれんする、「恐水症」や「恐風症」といった症状が現れる場合も多い。潜伏期間にはばらつきがあり、人間では1~3ヶ月ほどと言われているが日本獣医学会によると7年の報告もある。

犬の場合の潜伏期間は2週間~2ヶ月程度と言われている。発症すると、極度に興奮し攻撃的になったり、麻痺が起こったりした後、昏睡状態になり死亡する。人間同様、発症後の治療法はない。

日本国内では撲滅

日本では1920年代に年間およそ3千500人が犠牲になったが、1950年の「狂犬病予防法」施行により激減し、1956年の1人(犬は6頭)を最後に国内での感染例はない。発症も、1970年にネパールで、2006年にフィリピンで犬にかまれた旅行者2名が帰国後に発症し死亡した合計3例以外はない。

海外での感染には注意

流行地を訪れる場合には、事前のワクチン接種が安心である。かまれた場合、狂犬病に感染しているかどうかを発症前に調べる方法はない。したがって、帰国時に空港などの検疫所(健康相談室)に申し出て、できるだけ早期にワクチン接種を行うためのアレンジを行うことが肝要である。また、最寄りの保険所でも狂犬病ワクチン接種が可能な病院について情報を得ることができる。

筆者はベトナム旅行中に犬にかまれた経験がある。重症な場合はすぐに現地の病院を受診することが必要だが、幸い大事には至らなかったため帰国後に保健所で紹介された病院でワクチン接種を受けて事なきを得た。ただし、事後の場合は複数回の接種が必要で、記憶が正しければ初回以降、3日後、7日後、14日後、30日後と、5回の接種を受けた。90日後にもう一度接種する場合もあるようだが、状況等により異なるため医師とよく相談の上、接種プログラムを決めることになる。

日本の狂犬病予防法

日本では「狂犬病予防法」によって生後91日を経過した犬の飼い主は、その犬を所有してから30日内に市町村に犬を登録し、狂犬病の予防注射を受けさせて注射済票の交付を受けることが義務付けられている。法律上は、登録されていない犬、狂犬病の予防注射を受けていない犬、鑑札や注射済票を装着していない犬は捕獲の対象となる。その場合、飼い主には20万円以下の罰金が科せられる。法的には、役所で渡される鑑札や注射済票は首輪などに取り付けて常に愛犬に装着させておく決まりになっている。

予防接種の必要性と注意点

狂犬病の予防は愛犬や飼い主だけでなく、周りの犬やその家族を守るためにも必要なことである。ただし人間用も含めた他のワクチンと同様、副反応(副作用)のリスクは存在する。農林省関連団体のデータでは、年間20件ほどの死亡例が報告されている。400万頭以上が接種しているため死亡リスクは非常に低いと言えるが、その他一過性の副反応も起こる場合があるため、予防接種を受ける場合には愛犬の体調などに充分注意するのが安心である。

《石川徹》

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