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【愛犬からの贈り物 vol.1】遺伝的疾患が見つかって…“ガラス細工の首”を持つトイプードル

手のひらにのる子犬時代
  • 手のひらにのる子犬時代
  • 首に病気を抱えながらも元気に成長
  • 病気がちだった子犬時代
  • やんちゃ坊主に成長した平蔵
  • 首の骨がきちんとつながっていない状態
  • 椎間板が背骨同士をつなげる
  • 第1頸椎と第2頸椎は「歯突起」と靭帯がつなぐ
  • 肩関節を強制するブレース

犬の遺伝的疾患と、それをとりまく環境についてシリーズでお伝えします。

REANIMALに時々登場する「ひめりんご」は、もうすぐ6歳になるチワプー(チワワとトイプードルのミックス)です。「ぬいぐるみみたい」とよく言われますが、自己主張の強さで飼い主を毎日振り回す女王様キャラです。テディベアカットの下には、がっちりした骨格と「筋トレしたみたい」と獣医さんに言われる筋肉が隠れています。

ひめりんごと同居しているのが、2歳下のトイプードル「平蔵」です。ひめりんごとは正反対に、聞き分けの良い性格で手間がかりません。ただ、時々関節を痛めることがある華奢な体格が心配な子犬時代でした。

その平蔵、今のところ元気に過ごしていますが、命にかかわる疾患をもっています。いつ爆発するか分からない爆弾を首に抱えて生まれてきました。小型犬には意外に多い「環軸椎(かんじくつい)不安定症」という病気と、そこから垣間見えた犬たちをとりまく課題について、3回にわたってご紹介します。

首に病気を抱えながらも元気に成長

3回目の「うちの子記念日」を迎えて

子犬をお迎えした日をお祝いする愛犬家が増えていますよね。去年の11月には、平蔵も3回目の「うちの子記念日」を迎えました。手のひらに乗るくらいだった子犬が、今では体重2キロを超えました。決して大きくはありませんが、しっかりした身体つきに成長してくれました。

でも健康優良児のひめりんごとは違い、平蔵にはこれまで色々なことがありました。生後3か月の頃には、全身に湿疹ができて年末年始はシャンプーの毎日。1歳の時は、重い急性胃腸炎からくる下血で身動きもできなくなりました。「お散歩デビュー」した当初は何にでも興味津々で、ちょっと目を離したすきに小石を飲み込んでしまい、慌てさせられました。

そんなことがありながらも、獣医さんや看護師さん、トリマーさん、トレーナーさんなど、たくさんの方々に愛情あふれるサポートをいただいて元気に育ちました。

やんちゃ坊主に成長した平蔵

ガラス細工の首

最近は病気に罹ることもなく食欲旺盛で元気いっぱいですが、平蔵にはとてもリスクの高い先天的な疾患があります。「環軸椎(かんじくつい)不安定症」というのは聞きなれない病名かも知れませんが、首の骨である第1頸椎(「環椎(かんつい)」とよばれます)と第2頸椎(「軸椎(じくつい)」)がきちんと繋がっていません。怪我で生じることもあるそうですが、平蔵の場合は生まれつきです。

首の骨がきちんとつながっていない状態

ちょっとした衝撃や力がかかっただけで、状況によっては骨がズレてしまい、中を通っている神経(= 脊髄:せきずい)が傷つく危険性が高い状態です。首の痛みや脚のしびれ・麻痺などのほか、運が悪いと呼吸や循環系の機能不全に陥って突然死に至ることもあるそうです。いわば、ガラス細工のような首…。

この病気には、首にネジを何本も入れてセメントで骨同士を留める手術以外に根本的な治療法はありません。かなりのリスクを伴うため、症状のない状態では経過観察という判断に至りました。幸い、いまだに症状は出ていませんが、いつどうなるかは予測できません。元気に過ごせる1日1日を、「贈り物」だと思って大切に過ごしています。

遺伝的体質:靭帯のゆるみ

犬の背骨は7個の頸椎(けいつい=首の骨)、13個の胸椎、7個の腰椎、3個の仙椎(せんつい=骨盤あたりの背骨)と6から23個の尾椎(びつい=しっぽの骨)から構成されています。それぞれがクッション性の高い組織である椎間板(ついかんばん)によってつながり、背骨にかかる力を吸収したり柔軟な動きを可能にしたりしています。

椎間板が背骨同士をつなげる

唯一の例外が環椎と軸椎です。人間も同じですが、頭をぐるぐる回しやすいように、椎間板ではなく靭帯(じんたい)が軸椎(第2頸椎)から伸びる「歯突起(しとっき)」というでっぱりと環椎(第1頸椎)を繋げています。

第1頸椎と第2頸椎は「歯突起」と靭帯がつなぐ

平蔵は、身体の様々な場所にある靭帯が生まれつき伸び過ぎる傾向があり、首だけでなく両肩の関節も緩いことが分かっています。「肩関節不安定症」のため、1歳の時に約半年間、両前脚に矯正用の装具(ブレース)を着けて生活しました。

肩関節の可動域が広すぎる(つまり、靭帯が緩く前脚が外に広がり過ぎてしまう)ため、ちょっとした高さから飛び降りただけでも無理な角度で力がかかり、関節を痛めることがあったからです。両腕が外側に開き過ぎないように制限する装具を着けて、骨や筋肉が強く成長するのを待ちました。

肩関節を強制するブレース

装具を着けての半年

かかりつけの先生と動物理学療法の第一人者である獣医さん、犬用の義足でも知られる動物用装具メーカーさんのおかげで、ぴったりのブレースが出来上がりました。

初めてのブレース

できるだけ不自由のないように作って頂きましたが、遊びたい盛りだった平蔵は両腕を中心に上半身を拘束されて当初は落ち込んでいました。

それから半年、寝る時以外はブレースを着けての生活が続きました。動きを制限される不自由さに装着を嫌がることもありましたが、徐々に慣れて不自由なく歩けるようになりました。おかげさまで、その後は肩を痛めることなく元気に過ごしています。

ブレースにも慣れた頃

先生からお許しが出て、久しぶりに装具なしで散歩に出かけた時の嬉しそうな足取りは目に焼き付いています。今も、できるだけベッドやソファには上がらせないように注意していますが、本人はすっかりブレースを着けていた日々を忘れてしまったようで、毎日飛び跳ねています。

元気いっぱいに成長

そんな時に舞い込んできた予期しない知らせ。次回は、悲しいニュースをきっかけに考えた、ペットの繁殖と遺伝病についてご紹介します。

《石川徹》

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