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【“命の商品化”を考える vol.7】具体的な飼育管理基準案について…従業員が世話をする犬・猫の数ほか

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  • 動物の飼養又は保管に従事する従業員の員数に関する事項
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7月10日に開催された第6回「動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会」では、飼養スペース、つまりケージや運動場のサイズに続き、繁殖業者やペットショップなど現場における従業員と動物の数に関する基準案が環境省から提示された。

十分な人数による日々のケア

動物の愛護及び管理に関する法律(愛護法)の現行基準では、「飼養又は保管をする動物の種類及び数は、飼養施設の構造及び規模並びに動物の飼養又は保管に当たる職員数に見合ったものとすること。」とされている。世話が行き届くように、職員の人数を十分に確保するための規定であり、その「見合った」数を具体化する取り組みである。

繁殖施設では1人当たり犬15頭・猫25匹、販売施設では犬20頭・猫30匹

今回提示された案は、繁殖施設において管理できる犬の頭数上限を従業員1人当たり15頭、猫を25匹としている。ペットショップなどの販売施設では、これが20頭と30匹とされた。この数については、環境省から計算根拠の説明もあった。従業員1人の労働時間を8時間とし、犬1頭および猫1匹に必要と考える平均作業時間で割ったものだそうだ。

動物の飼養又は保管に従事する従業員の員数に関する事項動物の飼養又は保管に従事する従業員の員数に関する事項

計算根拠:犬の場合

具体的には、犬の場合、清掃に10分、給餌に3分、「個体チェックと運動等」に11分と想定し、1頭あたりに必要な時間を24分と算出。8時間(480分)を24分で割り、ペットショップ等で従業員1人がケアできる犬の上限を20頭としている。繁殖業の場合は、これに「繁殖関連のケア・子の世話・ふれあい等」に8分が追加されて32分となり、上限が15頭とされた。なお、母犬と同居している子犬の頭数は、この計算から除外されている。

計算根拠:猫の場合

猫の場合は、清掃と給餌にかかる時間は犬と同じとしながら、個体チェック等の時間を3分と想定し、合計16分となり、従業員1人当たりが世話のできる上限を30匹としている。また、繁殖関連のケアについても犬より短い4分とし、合計20分で上限が25匹とされた。

繁殖業者・販売業者ともに、この数字を基準として都道府県等がチェックを行い、問題のある業者には個体数を減らすなどの対処を検討している。一方で、優良と認められる事業者には上限値の緩和も可能とするよう、柔軟な運用が可能な省令を検討したいとのことである。

専門家からの意見

委員からは、出産後の母犬・母猫には日常のケアに手間がかかることを考慮に入れる必要性が指摘された。また、ペットショップなどの販売業においては、動物の世話に加えて接客その他の作業に多くの時間が割かれるため、例えば「販売に関わらない(従業員)」などの条件を追記すべきとの意見があった。そのほか、日常の世話に要する時間は、実際には犬と猫とで大きな違いはないとのコメントも聞かれた。

動物愛護団体や議連の提案

こうした意見を踏まえ、上限の柔軟な運用なども含めて環境省の事務局で現在修正案が検討されているところだろう。

ちなみに、前回の第5回「検討会」で行われた民間団体のヒアリングでは、「公益財団法人動物環境・福祉協会 Eva」からは8頭から最大10頭を限度とすべきとの意見が出された。また、「動物との共生を考える連絡会(連絡会)」は、犬15頭・猫20匹を提案している。

4月3日に「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟(議連)」が小泉進次郎環境大臣に提出した要望書では、繁殖犬15頭・販売犬20頭・猫25匹とされている。

その他:健康管理、休憩、身体の手入れと人とのかかわり

そのほか、1年に1回の獣医師による健康診断、展示の場合は6時間ごとに休憩時間を設けることや猫カフェなどでは休憩できる設備に自由に移動できるしくみの設置などの義務化が提案された。加えて、「被毛に糞尿等が固着した状態、毛玉で覆われた状態、爪が伸びたまま放置されている状態等」を禁止し、虐待につながるような飼育の防止がうたわれている。

さらに、将来は家庭で暮らす動物としての行動を学習することの重要性にも触れ、「人とのふれあいの実施」として散歩や遊具を用いた活動も、事業者の義務として定めることを検討しているとのことだ。

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次回は、ケージサイズや今回紹介した飼育頭数上限とともに議論の柱となっている、繁殖の方法や回数・環境などについて紹介する。

《石川徹》

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