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劣悪繁殖業者の撲滅へ…イングランドで「ルーシー法」が施行

キャバリア(イメージ)
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4月6日、イングランドで子犬および子猫をペットショップやその他の動物取扱業者など、ブリーダー以外の「第三者」が販売することを禁止する法律が施行された。

この法律は、かつて繁殖犬だったキャバリア・キングチャールズ・スパニエルの名前を取って、通称「ルーシー法」と呼ばれている。

「ルーシー」は劣悪な飼育環境下で何度も子犬を産まされ、てんかんの発作も患って5歳で繁殖犬を引退。保護された時は、お尻の毛が固まり、背骨は曲がり、被毛が所どころ抜けるなどひどい健康状態だったが、新しい飼い主のもとで治療を受け、幸せな時間を過ごしたそうだ。

日本やアメリカだけでなく、イギリスでも、こうした「パピーファーム(直訳:子犬農場;アメリカではパピーミル=子犬工場と呼ばれる)」が社会問題となっている。子犬たちは生後2~3週間で母親から引き離され、インターネットなどを通して販売される。また、ペットショップなどへの長距離移動を強いられる場合もあり、肉体的・精神的な病や社会化面での問題を抱えるケースが多いそうだ。この改善に向けて、動物愛護団体や著名人が積極的な活動を行ってきた結果、昨年5月に法案が議会で承認され、今年の4月6日施行に至った。

今後、イングランドで生後6か月未満の子犬・子猫の譲渡ができるのは、保護施設と認可を受けたブリーダーに限られる。さらにブリーダーには、子犬が産まれた場所で、母犬と一緒に生活している様子を直接見せることが義務づけられる。違反者には、最高6か月の懲役または罰金が科せられるが、金額の上限は「無制限」としている。政府はさらに、動物虐待の最高刑を現在の6か月から5年に引き上げる計画だそうだ。

この法律によって、子犬や子猫が安全で清潔な環境で生まれ、母親とともに成長し、そこから新しい家族のもとに巣立っていく環境が整備されることが期待できる。また、生まれて間もない子犬を、ペットを装って国外から違法に持ち込む「密輸業者」の排除も可能となるとしている。

昨年の法案提出時、環境大臣、Michael Gove氏は以下のように語っている:
「この法律は、動物たちがベストな環境で命のスタートを迎えられるように、また、ルーシーのような苦しみを味わう動物がいなくなるように、という思いでつくられました。親犬・親猫の飼育環境が改善されると同時に、母親から早期に引き離される子犬や子猫がいなくなるでしょう。この法律はまた、動物の生命を守るだけでなく、善良な市民(飼い主)を悪徳業者から守るものでもあります。第三者による販売を禁止することで、すべての飼い主は、健康な新しい家族(ペット)を、責任あるブリーダーから迎えられます」。
《石川徹》

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