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【“危険な犬種”は存在するか? vol.4】法規制が必要なのは犬種か飼い主か

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  • 茨城県の「特定犬」に関するパンフレット1
  • 茨城県の「特定犬」に関するパンフレット2

日本でも、ピットブルや土佐犬など、元々は闘犬として作られた犬種による事故がしばしば報道され、「危険な犬種」というイメージを与える場合がある。

茨城県の「特定犬」条例

茨城県は、「人に危害を加えるおそれのあるもの」として8犬種*を「特定犬」に指定し、条例で「必ずオリの中で飼うこと」と制限を加えている。前述のネット記事でも、同様の規制を作ることが提案されていた。

一方で、このシリーズのvol.1
で紹介したように、ゴールデンレトリーバーなど温厚と考えられる犬種による死亡事故も発生している。この例からも、不幸な事故を防ぐために必要なのが犬種による規制(BSL)であるとする考え方には疑問がある。アメリカで行われているように、エビデンス(科学的根拠)不在の「イメージ」で規制を強めるのではなく、犬種でなく個々のケースを検証した上で飼い主の管理面を含めた法整備、つまり犬種非特定規制(BNL)が重要ではないだろうか。

飼い主は適正な管理ができていたか?

国内の例では、伊豆で警察官をかんだのは「『半グレ』と呼ばれる集団のリーダー格」がノーリードで伴っていたピットブルだったと新聞は報じている(産経新聞)。千葉でトイプードルをかみ殺し、女性に全治40日のけがを負わせたノーリードのピットブルの飼い主は、狂犬病の予防接種を受けさせなかった狂犬病予防法違反の疑いも持たれている(千葉日報)。北海道で女性を溺死させた土佐犬のケースでも、飼い主はリードを離す際の注意義務を怠ったとして懲役2年6か月の刑が確定するとともに、民事訴訟でも6500万円の賠償金支払いが命じられる判決が下ったそうだ(苫小牧民放)。

「悪い犬がいるのではない」

確かに犬と人間は動物としての「種」がまったく異なり、その行動を100%理解し制御することはできないかも知れない。しかしながら、人類と犬との生活は農耕が始まった約1万年以上前からの歴史があるといわれている。長い歴史の中で培われた互いに対する理解は深く、人間生活の枠組みやルールの中で大きな問題を生じさせずに暮らすことは可能と考える。

もちろん、サイズや犬種、それから1頭ごとの個性によって付き合い方(= しつけ)は異なるが、明らかな疾病による障害の場合を除き、共同生活に必要な管理は可能ではないだろうか。著名ドッグトレーナーのシーザー・ミランはピットブル愛好家としても知られている。彼は問題犬と言われる犬の「リハビリ」を行う際、「悪い犬がいるのではなく、ダメな飼い主がいる」ことを認識すべきだと語っている。

規制すべきは犬種なのか?

例えばクルマにも大型のSUV(スポーツ多目的車)や馬力の大きなスポーツカーから、軽自動車まで様々な種類がある。不幸にして事故が起こった場合、一般的にはサイズや重量、パワーの大きいクルマは物や人に与える損害が大きくなる。

だからと言って、大型車を法律で一律に禁止している国はない。ドライバーは、ルールやマナーを守るのはもちろん、場合によってはその車に合わせ、安全に心がけた慎重な運転をする。犬の管理も同じだろう。責任ある飼い主は、愛犬のサイズや気性に合わせて必要なしつけを行ったり、リードの素材を選んだり、身体に合ったフェンスなど飛び出しを防ぐ設備を設けたり、といったことを行うだろう。

犬に対する好みも様々で、小型犬種の愛らしさを好む愛犬家もいれば、大型で堂々とした犬に魅力を感じる人も多い。特定犬種を一律に法律で規制することは、アメリカの例を挙げるまでもなく個人の自由を侵害することにつながる。それだけでなく、BSLが安全にも動物の福祉にもつながらなかったのは、多くが認めるところとなっている。

人間においても多様性が叫ばれる時代、必要なのは犬に関しても固定観念による偏見ではなく、個性に応じた活かし方を考えることだと感じる。いずれにしても、基本的には管理する側の人間の問題ではないだろうか。

「日本はどんなヤバい犬も飼い放題」として茨城県と同様な規制を設けるべきとの専門家の意見もあるようだが、犬にとっても人間にとっても良い方向は何なのか慎重に考えたい。

次回は、テリア種を中心に長年ブリーディングとトレーニングに携わってきた専門家の意見を基に方向性の提案を行いたい。

* 秋田犬、紀州犬、土佐犬、ジャーマン・シェパード、ドーベルマン、グレートデン、セントバーナード、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア(アメリカン・ピット・ブル・テリア)(茨城県HPより:原文ママ)

《石川徹》

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