家の中では対等でいたい。その気持ちからスタートした「けだま」の放し飼いチャレンジは、部屋をマメに掃除するなど、少しずつけだまにとって安全な空間を作り上げていくと同時に、私が家に居る時間限定から完全な放し飼いへ、徐々に移行していきました。
規則正しいうさぎの生活リズム
ゲージに閉じ込められることのない、自由な暮らしを手にいれたけだまの1日は、まずは日の出と共に、私が寝ているベッドに飛び乗り、早朝に私を起こすところから始まります。
夏は4時過ぎ、冬は6時前というように、太陽と共に私を起こすと、私が補充した1日中食べ放題のチモシーと朝晩2回のペレットを食べて少し遊んだ後、ベッドと壁の隙間にあるお気に入りのポイントでひと眠り。不安になるほど突然、パタンと横に倒れてそのまま寝息を立てて熟睡する無防備な姿は、本当に幸せな気分にさせてくれます。
その後、私が仕事に行く気配を感じると起きてきて、「出かけないで」と訴えるかのように付きまとうなど、一般的な犬や猫のイメージと行動に大差はありません。
おしっこをする時はキチンとケージに戻り、その中のトイレでしてくれるので、放し飼いをすることによる特別な問題はありませんでした。とは言っても、遊んで欲しい時に構ってもらえないと、布団に嫌がらせのおしっこをするなんてことは時々ありますが、ワガママは心を許してくれている証です。
唯一困ったことと言えば抜け毛で、ホーランドロップイヤーの毛は細かくてフワフワなため、部屋や服が毛だらけになってしまいます。
ウサギには毛球症の問題があるため、週に1回グルーミングをしていたのですが、それでも毎日の抜け毛がすごいので、出かける前に洋服に付いた毛を取るためのコロコロが必須の生活となりました。
ワガママは信頼関係の証
ホーランドロップイヤーは抜け毛が多く、どうしても毛球症による「鬱滞(うったい)」になりやすいため、数か月に1度は病院に連れていくことになるのですが、けだまを病院に連れて行くといつも驚かされるのは、その大人しさでした。
うちでは、グルーミングなどの嫌なことは「嫌」と、足ダンをしたり噛みついたりと「不快感」を全身全霊で伝えてくれますが、病院では無抵抗。「THE 内弁慶」で、私には心を許してくれていることを十分感じ取ることができます。
私がベッドでゴロゴロしていると、わざわざベッドに飛び乗り、私の隣で足を延ばしてくつろいだりと、けだまと私は一緒に生活をしているうちに、どんどん「居ることが当たり前」の存在になっていきました。
不調は突然やってくる
そんなウサギとの生活で気を付けなくてはいけないのが、突然訪れる体調不良。
そのほとんどが、前述した鬱滞という症状で、ウサギが自分の体をなめてキレイにすることで、少しずつお腹の中に溜まっていく毛が上手く排泄されず、胃腸の動きを止めてしまう命に関わる病気です。
そうなると、昨日まで元気に遊んでいたのに、ある日突然うずくまり、ご飯も食べなければ、ウンチもおしっこもどんどん減っていき、一気に衰弱していきます。もちろん、けだまも何度かその症状を発症し、その症状の重さに別れを覚悟したこともありました。
一緒に暮らし始めて間もない頃は、その鬱滞の症状は突然やって来るというイメージでした。しかし、何度か繰り返していくうちに、その予兆や応急処置の方法が少し分かってきたので、まとめます。
まず、お腹に毛が溜まりはじめると、あまり水を飲まなくなる傾向があるので、毎日水を飲む量はなんとなくチェックしておくと、不調の始まりが分かってきます。
水を飲まなくなったら、どんどん循環が悪くなってしまうので、シリンジなどで強制的に果物の汁などを混ぜた薄いジュースにして飲ませるか、市販されている水分補給用のゼリーや生野菜を与えると、少しずつ改善することもありました。
また、ウンチを定期的に割ってみて、毛が混じっていないかをチェックすることも大切です。毛が頻繁に混じっているようなら、要注意。少しずつお腹に溜まり始めている証拠です。その場合はヘアボールリリーフという、ペット用品店やネットショップなどで購入可能な、サプリメントチューブを与えると、毛の排出をサポートしてくれます。
ヒモのようなもので繋がったウンチが出ている場合も、毛球症になりかけている可能性が高いので要注意。どの場合も、できるだけ早く病院に連れて行くようにしてください。
鬱滞はほとんどの場合、病院での注射や点滴を数日から数週間繰り返すことで改善します。治療費は病院によって多少の幅はあると思いますが、けだまの場合、レントゲンを撮ると1万3000円ぐらい、点滴と自宅での飲み薬を処方された場合は約6000円程度でした。
状況により、すぐに病院に連れて行けない時のために、私は治療時に処方される胃を動かす薬と食欲増進剤を余分に処方してもらい、鬱滞が起こった時の常備薬として、常に冷蔵庫で保管しているのですが、少しの食欲不振ならこの薬だけで治ってしまう事もあるので、この方法もおススメです。
また、1番刈りなどの硬いチモシーも、固まりかけたお腹の中の毛を消化の過程で少しずつ削り取ってくれるので、できるだけ食べさせるようにすると健康を保てます。
私とけだまは、こういった危機を何度も乗り越えながら少しずつウサギの生態を学び、共同生活を続けていきました。
先川知香:モータージャーナリストとして、全国各地を駆け回る干物系女子。8年前にウサギの「けだま」と出会い、今は2代目「まー様」と同居中。好きなものは、クルマとバイクと愛ウサギ。