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全国につながりを作り、より多くの人に知ってもらいたい… 日本介助犬協会の広報という仕事 vol.2[インタビュー]

日本介助犬協会 管理部広報グループの後藤優花 副主任とPR犬のファンタ
  • 日本介助犬協会 管理部広報グループの後藤優花 副主任とPR犬のファンタ
  • 日本介助犬協会 管理部広報グループの後藤優花 副主任
  • 日本介助犬協会 管理部広報グループの後藤優花 副主任とPR犬のファンタ
  • 広報としてイベントや講演会で介助犬について伝えている
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  • 日本介助犬協会 管理部広報グループの後藤優花 副主任とPR犬のファンタ
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前回は、日本介助犬協会 管理部広報グループの後藤優花 副主任へのインタビューを通して、介助犬に関する情報発信活動の概要を紹介した。また、後藤さんの横顔から、そこで働く人たちが「キラキラ」して見えるという同協会の組織風土を垣間見ることもできた。今回は、今後の方針について聞いた。そこから見えたのは、「人にも動物にも優しく楽しい社会をめざして」という日本介助犬協会の願いだ。

介助犬ユーザーの明るい表情に感動

----:小学生時代からの夢を叶えたと言える今のお仕事ですが、一番うれしいと感じるのはどんな時ですか?

後藤優花 副主任(以下、敬称略):私にとっては、仕事ですが趣味でもあるので、楽しいことしかないんです(笑)介助犬のことをみなさんにお伝えして、色々な方に知ってもらえるのはうれしいですね。それから、犬を介して人と人とがつながっていく、つまり、色んなご縁が広がっていくのを日々感じられるのも楽しいです。

----:介助犬ユーザーの方々との交流もありますよね。

後藤:はい。ユーザーの方々の変化を感じることができるのも、介助犬にかかわる仕事の魅力ですね。最初は暗い表情の方が多いんです。でも、介助犬と過ごすにつれて笑顔が見られるようになります。それも、「そうしなきゃいけない」と努力して変わるのではなく、犬がいることで自然と変化していくんです。

障害を負ってからは外出しなくなっていたという方から、「最近、(介助犬と)一緒にどこそこに行って来たんですよ」などと聞くとすごくうれしいですね。ユーザーさんが、笑顔で明るく、活動的になっていくのを見ると本当にやりがいを感じますし、近くで見ていると感動します。そんな感動も、もっと広めていきたいなと思っています。

----:辞めたいと思ったことは?

後藤:ないです(笑)でも、悔しい経験はありますよ。最初の頃は、介助犬のことを十分に伝えきれないことがありました。講演の後で、「良かったよ、盲導犬の話」と言われてしまったことも。そんな時は悔しいですけど、「じゃあ、この人にはどう伝えたらいいかな」と考えることが私の勉強にもなります。

楽しいことに突き進んでいるので、辞めようと思ったことはありません。私の進む道は楽しいか楽しくないかだけなんです。(この仕事は)楽しいので、突き進んでいるだけです。

あと8県で全国制覇!

----:介助犬のお仕事はずっと続けて行かれると思いますが、今後の目標は?

後藤:全国につながりを作りたいと思っています。つながりがあれば、その地域のユーザーさんとのお付き合いもスムーズになります。それから、伝える仕事も私1人では限界があります。もっとたくさんの方々に介助犬のことを知っていただくためにも、全国にネットワークを作りたいと思っています。

47都道府県、すべてに講演やイベントなどに行くという目標を立てているんです。実は、あと8県で達成です。お付き合いがない所にアプローチをかけるのが好きなので、全力でやっています。また、シンシアの丘(介助犬総合訓練センター)のある愛知県周辺ではしっかりとした施設があることもありメディアとのお付き合いがありますが、関東地域ではこれからです。今後、各地を回るキャラバンで、メディアのみなさんにも「こちらから仕掛ける」活動を検討しています。

----:そのためには、広報部門の体制作りも必要ですね?

後藤:そうですね。一緒にできる人材を増やしていくことも考えています。(日本介助犬協会に)後輩が入ってきているので、みんなで同じ方向に向かって行けるように体制作りをしていきます。

介助犬を通して、社会全体が優しくなるお手伝い

----:小学生時代からずっと持ち続けている夢を語る後藤さんには、とてもエネルギッシュな印象を受けます。その力はどこから来るのでしょうか?

後藤:直感で「ここだ」と感じれば、そのまま突き進んでしまう性格なんです(笑)介助犬を通して、社会全体が犬にも周りの人たちにも優しくなるお手伝いができればいいなと願っています。その思いがエネルギーをくれるのかもしれません。

小学校に講演などでお邪魔した時は、「周りにいる人たち、みんなのことをちゃんと見てね」、ということを特にお話ししています。近くにいる人がどんな反応をしているか、嫌がっていないか、自分がその子の立場だったらどう思うか。犬たちや障がい者の方だけでなく、友達同士でも、お互いに気持ちを考えて生活しようねっていう話をよくします。

----:日本介助犬協会が目標に掲げる「人にも動物にも優しく楽しい社会をめざして」という考え方につながっていますね。

後藤:世の中では、「知らない」ことが原因で起きている争いが多いのではないかと思います。だから、介助犬を通してみんながお互いを理解して、優しい気持ちを持てるようなメッセージを発信できたらいいなと思います。

----:これからも、その笑顔とエネルギーで頑張ってください!

後藤:ありがとうございます。

犬たちが教えてくれる、「誰もが生活しやすい社会」の大切さ

介助犬という存在は、使用者となる手脚の不自由な方の間でも十分に知られているとは言えない状況だそうだ。また、社会的な認知が広がらなければ、同伴拒否などにもつながる。介助犬を通して「優しい社会」実現への貢献を目指す日本介助犬協会の取り組みは、犬の訓練や障がい者のリハビリテーションだけでなく、広く一般に向けたコミュニケーション活動にも及んでいることがよくわかった。

「誰もが生活しやすい社会になればいいな」という思いで日本介助犬協会の職員となったという後藤さん。小学生時代から犬の訓練学校時代まで、迷ったことはまったくなかったそうだ。「私はここで働けて、楽しくてしょうがない」とキラキラした笑顔で語ってくれた。そんなところからは、「人にも動物にも優しい」同協会は、職場としての魅力も大きいのではないかと感じさせられる。

《石川徹》

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