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ペット同行避難の原則「知らない」が8割以上、周知に課題…アイペット損保調べ

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  • アイペット損保、ペットのための防災対策に関する調査を実施
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アイペット損害保険は、犬・猫飼育者の1015人を対象に、ペットのための防災対策に関するアンケート調査を実施し、その結果を発表した。

今年で5回目となる同調査では、「同行避難」に対する認知・理解度に加え、災害時の迷子対策として有効なペットへのマイクロチップ装着について、装着率および2020年から3年分の装着目的の変化について比較。また、6月より施行されるマイクロチップ装着義務化に向けて、その認知度や情報の入手経路などについても新たに調査している。

「同行避難」の理解浸透に課題

まず、自宅の最寄りの避難場所を認知している人に対し、「自宅から最寄りの避難場所がペットを連れて避難できるか」を尋ねたところ、「知っている」と回答した人は25.4%にとどまり、「知らない」との回答が7割以上を占めた。また、「知っている」と回答した人の中で、「避難場所のペットの受入れ体制がわからない」と回答した人は14.7%で、8割以上が受入れ体制についての内容を把握していることがわかった。昨年と比較すると、「建物の中に一緒に入ることもできる」と回答した人が5ポイント増加した一方で、「建物の中に一緒に入ることはできない」が半数以上となっており、依然として、避難場所のペットの受入れ態勢については課題を感じる結果となった。

続いて、「ペットと一緒に避難生活を送ることを想定した場合、ペットに関する心配事」を尋ねたところ、犬・猫飼育者ともに「他人や他のペットとのトラブル」「慣れない場所でのトイレ」が上位となり、昨年と同様の回答が並んだ。避難生活における心配事は、犬・猫飼育者共通のようだ。

次に、「災害の発生時に、飼い主が飼養しているペットを同行し、指定緊急避難場所まで避難すること」という文章を提示し、それが「同行避難」「同伴避難*」どちらに当たるかを尋ねたところ、正解の「同行避難」を選択した人は51.9%で、昨年(55.7%)と比べ3.8ポイント減少、内容を理解していない人が半数近くにも上るという結果となった。自然災害の多かった2021年に微増した認知・理解度は、2020年(51.8%)と同水準となり、周知が進んでいないことがうかがえる。

「災害時ペットは飼い主との「同行避難」が原則とされていることを知っているか」の問いに対しては、「知っている」と回答した人は19.2%にとどまった。特に猫飼育者では、8割強が「知らない」と回答しており、室内飼いが推奨される猫飼育者については、「在宅避難」という選択肢への意識が高いことがわかる。

昨年より、環境省は各自治体向けにペットの受入れ態勢などについてのチェックリストを作成するなど、「同行避難」に関する態勢整備や周知などを強化しており、「原則認知」については微増していている。しかし、ペット飼育者への理解浸透という点については、課題を感じる結果となった。

続いて、「災害を想定して、ペットに関する防災対策を何かしているか」を尋ねたところ、何かしらの対策をしている飼い主は19.6%で、昨年に比べ2ポイント減少した。犬飼育者の回答では「「待て」や「おすわり」など基本的なしつけができている」、猫飼育者の回答では「ペット用の防災グッズを揃えている」が最多となった。また、昨年の調査と比較すると、災害時の迷子対策として有効な「マイクロチップの装着」については、特に犬飼育者が減少(昨年、22.2%)している。今年6月からマイクロチップ装着が義務化されるが、災害対策としての装着意識は低いことがうかがえる。

「ペットのために現時点で備えている防災グッズ」を尋ねたところ、犬・猫飼育者ともに「フード(おやつ含む)・飲料水」「トイレ用品(猫砂を含む)」が上位となった。次に多かったのは、犬飼育者は「リード」、猫飼育者は「ケージやクレート」で、昨年と比較して大きく増加した項目は、犬飼育者は「常備薬・療養食」、猫飼育者は「ペットの保険証・健康手帳」だった。

マイクロチップ装着率は約24%

続いて、今年6月より施行されるマイクロチップ装着義務化(既に飼われている犬や猫については「努力義務」)を前に、「マイクロチップ装着が義務化されることを知っているか」を尋ねたところ、「知っている」と回答した人は57.3%で、4割近くは、「知らない」と回答した。

「知っている」と回答した人に「どこから情報を得たか」を尋ねたところ、犬・猫飼育者共に「テレビ」が最多となった。6月の施行を前にニュースやテレビ番組で特集が組まれる機会も増えており、そこから情報を得た人が多いようだ。なお、行政・自治体が発信している情報から得た人は、犬飼育者5.9%、猫飼育者は、3.3%にとどまった。

現在の装着有無についても尋ねたところ、装着率は全体で23.8%となり、昨年(25.4%)に比べると微減した。特に猫飼育者は、犬飼育者の約半分となる15.3%にとどまっており、入手経路としてペットショップで迎え入れるよりも「拾った、迷い込んできた」も多いと言われている猫の入手経路が影響している可能性も考えられる。

装着目的を尋ねたところ、犬・猫とも「装着されていたペットを迎え入れた」がトップで、昨年よりも8ポイント増加。またこの3年の推移を振り返ると、「装着されていたペットを迎え入れた」は、一昨年も同様に増加しており、この2年で約16ポイント増加した。犬・猫飼育者別では、犬飼育者が、昨年から9ポイント増加しており、この2年で18ポイント以上増加、猫飼育者では、この2年で約13ポイント増加している。

「装着していない」と回答した人を対象に、今後装着の可能性を尋ねたところ、「検討しない」が全体の6割を超えた。「検討しない」理由では、犬・猫飼育者とも、「必要性を感じない」「痛そう、かわいそうだから」が上位となった。その他自由回答では、「高齢のため」「持病があるため」「寝たきりのため」などペットの年齢や体調を気づかう声のほか、「どこで装着できるのか不明なため」との声もあった。

今年6月には、販売用の犬や猫へマイクロチップの装着を義務づける改正動物愛護管理法が施行される。既に飼っている人については、装着は努力義務となるが、マイクロチップは、飼い主の責任を明確にし、捨て犬や捨て猫を防ぐ狙いがあるほか、災害時には、迷い犬・猫の発見などにも有効な手段になると言われている。そのため、この機会に検討する人が増えることが期待される。

同社では、2019年10月に青森県と動物愛護に関する連携協定を締結。同県との取組みの中で、県内在住のペット飼育者が、災害時にペットと一緒に安全に避難するための「避難所マップ」をWEB上で公開している。避難所マップでは、ペットと一緒に過ごすことができる「同伴避難OK」の避難所など、県内にある全ての避難所を確認することができる。同マップは、県民自らがペットの受入れ態勢の状況などの情報を確認し登録する参加型の仕組みとなっており、2019年の開始当初は約40ヶ所だった青森県内の同伴避難ができる避難所は、現在では94ヶ所(2021年3月現在)まで増加している。

コロナ禍において、ペットを家族として新たに迎え入れる人は増加傾向にあると言われているが、新たに迎え入れた人も、ペット防災への意識を高め、万が一の時、大切なペットを守れるよう、積極的に行政が発信する情報に日頃から耳を傾けるとともに、有事の際にペットとどのような行動をとるべきかなどを考えておく必要があるとしている。

■調査概要
調査対象:全国の犬・猫飼育者
調査人数:男女1015人
調査期間:2022年2月3日~11日
調査方法:インターネットによるアンケートを実施

* 「同行避難」が、ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)を示す言葉であるのに対して、「同伴避難」は、被災者が避難所でペットを飼養管理すること(状態)を指す。ただし、同伴避難についても、指定避難所などで飼い主がペットを同室で飼養管理することを意味するものではなく、ペットの飼養環境は避難所等によって異なることに留意が必要。(出典:「人とペットの災害対策ガイドライン」環境省)
《鈴木まゆこ》

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