東日本大震災から11年。先日も東北地方を中心に大きな地震があった。各家庭では災害対策について改めて考えているはずだ。しかし、人間のための災害対策をしっかりと行っていたとしても、愛犬の災害対策についてはどうだろう。3.11で被災した経験のあるわが家では、以来、愛犬のための対策もしっかりと行っているつもりだ。今回はどんな対策を講じているかをお話ししたい。
◆車内を避難場所として使えるように
家庭内の対策としては、まず愛犬用のフードの備蓄、薬を常用しているのであれば、そのストックも欠かせない。ただし、最悪、家に住めないような状況の場合、家族とその一員である愛犬は、避難を迫られる。そんなとき、もし、愛車であるドッグフレンドリーカーが無事であれば、そこが愛犬同伴の避難所になりうる。
環境省がペット同伴避難を推奨していても、実際、災害時に開設される避難所のほとんどは屋内にペットを同伴することはできない(敷地内の屋外にペット避難所があるところもあるが…)。愛犬家としては、家族の一員である愛犬と離れ離れになることなど考えられないはずで、だからこそ、万一のために車内を避難場所として使えるようにしておきたいのである。もっと言えば、ドライブ旅行中に災害に遭遇することだってありうるのだから。
◆車内に常備している10アイテム
さて、わが家では、3.11の被災経験から以下の10アイテムを車内に常備している。その一部は、人間にも流用できるものである。もっとも、フード類は車内環境での備蓄に適さないため、すぐに運び出せるように玄関近くに置いてある。
1.ペットシーツ
日常的なドライブシーンで重宝するペットシーツは、災害時にも大活躍。車内、車外でペットシーツとして使うことはもちろん、人間用の緊急トイレとしても用いることができる。水分を固め、消臭効果があるほか、水を含ませ丸めることで水枕になったりもするので、これはマストな常備品である。わが家では、場所を取らないよう、ラゲッジルームの床下に敷き詰めて収納している(防音効果も期待できる!?)。
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2.エチケット袋&うんちが臭わない袋
毎日のお散歩でも使っているエチケット袋は、ドライブ中はもちろん、災害時にも不可欠なアイテム。わが家では1週間分(つまり1日1頭3枚×7=21枚)をクルマに積んである。さらに、医療用としても使われている防臭素材の、うんちが臭わない袋も、散歩、ドライブ中に排泄物を入れておくのに重宝するアイテム。災害時、トイレに排泄物を流せなくなる可能性は十分にあり(3.11の際、わが家も2カ月弱上下水道が使えず、トイレは公園の仮設トイレを利用していた)、愛犬はもちろん、人間用としても活躍してくれるはず。SSからLサイズまで揃っているが、災害対策用として考えると、Mサイズ以上が適切だ。箱入りで購入した場合は、箱から出して保管すれば、場所を取らない。
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3.水と水飲み皿
ペット用の飲料水は、水道水で十分だが(というよりこれが一番)、災害時、断水しているとすれば、ペットボトルのミネラルウォーターが、初期の水分補給のための飲料水となるはずだ(3.11でのわが家の周辺では、自衛隊の給水車が出動するまでに時間がかかった)。しかし、海外のミネラルウォーターに多いマグネシウムやカルシウムが多く含まれる硬水は、犬猫に飲ませると尿結石症を引き起こす要因になると言われている。そこで、家庭内そして車内に軟水のペットボトル、またはペット用ボトルウォーターの用意が欠かせない。愛犬が飲み切ってもボトルは捨ててはならず、水道水が手に入るようになったら、犬用の水ボトルとして使い続けたい。愛犬の水分補給には、もちろんお皿が必要。ペタンと畳める水飲み皿(フード用としてもラップを敷いて使える)も不可欠な常備品となる。
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4.スペアリード&カラー
災害時、家から避難する際、慌ててリードやカラーを付けずに愛犬を抱いたまま、あるいは連れたまま外に出る、なんていう事態も(リードとカラーを付けて非難することが必須だが)起こりうる。そんなとき、車内にスペアリードを常備していれば、事なきを得られる。わが家では、ドライブやクルマでの避難中に迷い犬を見つけたときのために、小型犬、中型犬、大型犬用のスペアリードとカラーを用意している。いずれも水濡れに強いナイロン製で、普段のドライブ中、突然雨に降られた際のスペアとしても利用している。いずれにしても、ペット同行避難では、リードとカラーは不可欠である。
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5.愛犬用の敷物またはベッド
わが家のドッグフレンドリーカーはコンパクトなステーションワゴンだが、今では夫婦だけで暮らしているため、後席の右側3分の1は愛犬のジャックラッセルのララ専用席となっている。いつでもクルマに乗せられるよう、ドライブ用ベッドを安全確実に固定し、愛犬をハーネス&リードなどで後席のヘッドレストアンカーに固定できるよう、常にセットしてある。災害時、例えば実家、親戚、友人の家に一時避難する際、そして運よく避難所に入れたとしても、愛犬は災害に怯え、落ち着かないはず。そんなとき、自身のにおいがついた敷物やベッドがあれば、少しは安心して過ごし、寝ることができるはず。乗員の関係で愛犬用ベッドを常時、設置できない場合は、敷物だけでも積んでおきたい。
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6.消臭剤
これは普段はもちろん、災害時は特に大活躍するアイテムだ。車内に長く滞在しなければならない事態になれば、人間の体臭や動物臭が充満するかもしれない。無論、愛犬の鼻にやさしい天然素材、臭いの強くないものを用意したい。
7.愛犬用体拭きタオル
災害避難が長期化した場合、人間は自衛隊などが用意してくれた簡易的なお風呂や、ホテルなどの浴室を利用できるかもしれない(3.11の際、わが家は近くのホテルの好意で、客室のバスルームを使わせてもらった)。が、愛犬となると、そうした施設は利用できない。そこで簡単に愛犬の体を拭ける、シャンプー代わりの体拭きタオルを用意しておくと安心だ。災害によるホコリなどを浴びた犬も、すっきりするに違いない。避難途中、雨に濡れることもあるから、ペット用の吸水タオルもあるといい。
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8.粘着ローラー
日常的な愛犬とのドライブシーンでも、ダブルコートの被毛の抜け毛の多い犬種だと、車内は抜け毛だらけになりがちだ。万一、車内で過ごす、シートのフラットアレンジが可能な車種で仮眠する…といったケースでは、車内はもちろん、飼い主も愛犬の抜け毛で毛だらけになることもある。そんなときに、車内に粘着ローラーが常備されていれば、車内を清潔に保ちやすくなる。これは災害時だけでなく、日常にもマストなアイテムと考える。コンパクトなサイズのものなら、場所も取らない。
9.愛犬用靴下
3.11の際、わが家でもっとも困ったのが、愛犬の散歩だった。家の周りのいつもの散歩道は水道管の破裂などで水浸しになっていて、割れた舗装路面が瓦礫となり、さらには地震発生時に工事をしていた業者が慌てて帰ったのか、道路にクギが散乱。安全に犬を散歩させるどころではなかったのである。小型犬なら、抱っこして安全な場所まで連れて行くことができるが、大型犬だとそうもいかない。以来、わが家に常備しているのが、肉球をいたわる犬用の靴下。足先前面がラバーの滑り止め加工が施されたタイプで、トイプードルからレトリーバーまでの各サイズが揃っている。ただ、犬は靴下を履く習慣などないから、突然履かせると嫌がること必至。なので、普段から練習のつもりで、履かせている。
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わが家では、そうしたアイテムをひとつの“お散歩バッグ”にまとめて、ラゲッジルームの壁面のフックに吊るしてある(一部、ラゲッジルームの床下に収納)。
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10.カート
上記の通り、大災害時には、歩いて避難するにしても、お散歩するにしても、道路が大変なことになっていたりする。そんなときの愛犬同伴避難・移動で威力を発揮してくれるのが、ドッグカートだ。わが家には大型犬用と小型犬用のふたつのカートがあるのだが、実は3.11の際には、近所の公園にやってきてくれた自衛隊の給水車から家まで水を運ぶカートとしても重宝した。さすがに車内に積みっぱなしとはいかないケースがほとんどだが、玄関に用意してあれば、クルマで避難する際、サッと積み込める。今では小型犬のジャックラッセルのララ1頭との生活なので、コンパクトに畳めるドックカートは、普段からラゲッジルームに積んでいる(ラゲッジルームの4分の1しか占領しない)。言い方を変えれば、ドッグカートを常用している飼い主にとって、ドッグカートが余裕で積めるクルマこそが、その家族の理想的なドッグフレンドリーカーでもあるわけだ。
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なお、愛犬用の災害グッズを揃えるのは面倒、というなら、ペット用の防災グッズをひとつにまとめた「BOUSAI GO BAG」という商品も販売されている。
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愛犬との非難時に、クルマに積んでおくと助かるアイテムを紹介してきたが、実は、どれもが日常のドライブ先でも役立つものばかり。この機会に愛犬用災害対策アイテムを揃え、見直し、クルマに積んでおいてほしい。災害はいつやって来るか、分からない。