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「猫の高血圧症、知ってほしい」腎臓病予防のためにも気をつけたいことは?…ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス

「5月17日は『高血圧の日』、猫にも高血圧症がある!」(ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン主催)
  • 「5月17日は『高血圧の日』、猫にも高血圧症がある!」(ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパン主催)
  • タレントの中川翔子さん(左)と東京猫医療センター院長の服部幸獣医師(右)
  • 「仕事が終わったら、猫たちのためにすぐ家に帰っています!」という中川翔子さん
  • 服部幸  獣医師は「猫の目や表情、様子をいつもよく観察して、何か少しでもおかしいな? と思ったら病院で相談してほしい」と話す
  • ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンの長谷部裕之社長
  • 認知している猫の疾患(複数回答)
  • 猫の血圧測定の認知・実施について
  • 猫の血圧の指標は人間とほぼ同等

ドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイム傘下で、動物用医薬品を取り扱うベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンは、「猫の高血圧症」に関する認知度調査を実施した。5月11日には、日本高血圧学会が定める「高血圧の日」(5月17日)に先立ち、猫の健康に関するメディアイベントを東京都内で開催した。

深刻なリスクのある高血圧症

ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンは、猫の飼い主600名を対象に意識調査を行った。「知っている猫の病気」を複数選択方式で聞いたところ、高血圧症の認知度は13.3%と低いことが分かった。高血圧症は病気が進行するまで気づくことが難しいため、臓器障害の深刻な症状が出て初めて診断されるケースが多いという。

認知している猫の疾患(複数回答)認知している猫の疾患(複数回答)

猫は特に高齢になると腎臓病に罹(かか)ることが多くなり、慢性腎臓病が主な死亡原因の1つになっている。最近の研究では、高血圧症が腎臓に障害をもたらす可能性が示されているそうだ。また、高血圧は網膜剥離など目のトラブルや脳、心臓などに障害をもたらすリスクも招くという。

高血圧症に関する啓発活動の重要性

今回の調査では、猫の健康管理に血圧測定が必要なことを認識していた飼い主は全体の22.0%にとどまった。「知っている」と答えた人でも、1年以内に愛猫の血圧を測ったことがある飼い主は51.6%だったという。この調査結果を踏まえ、適切な情報発信の必要性を感じて今回のイベント開催となった。

猫の血圧測定の認知・実施について猫の血圧測定の認知・実施について

同社の長谷部裕之社長は、今後は「飼い主向けにも猫の高血圧症に関する正しい情報提供の機会を持ちたい」と語る。獣医療関係者だけでなく、飼い主に対しても啓発活動を行い、早期発見・早期治療につながる環境づくりを目指している。

ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンの長谷部裕之社長ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンの長谷部裕之社長

高血圧が腎臓病の原因に

会場では、調査を監修した東京猫医療センター院長の服部幸 獣医師が「猫に高血圧症?」と題した講演を行った。2014年の調査では、15歳以上の猫の81%が慢性腎臓病と診断されたという。別の調査では、慢性腎臓病にかかっている猫の65%が高血圧と診断されたそうだ。さらに、高血圧の猫においては74%が慢性腎臓病に罹患していたという報告もあり、高血圧症と慢性腎臓疾患との相関関係が指摘されている。

人間では「サイレントキラー(=静かな殺人者)」と呼ばれる高血圧症は、猫の場合もなかなか症状が現れない怖さがあるという。ある日突然、眼球の血管が切れて内出血し、失明してしまう猫もいるそうだ。そのほか網膜剥離などの目のトラブルに加え、不整脈や頻脈、心筋肥大などの心疾患や、けいれんといった脳神経系のトラブルなど重い病気を発症してから見つかることが多いという。

服部獣医師は、「高血圧症による症状は変化が見えづらく、飼い主さんが症状に気づいた時は既に病気が進行しているケースがあります」と話す。猫の様子を常に観察したり、定期的に健康診断を受けて血圧測定を行ったり、早期発見・早期治療が愛猫と長く健康に過ごすためには大切だ。

「猫に優しい動物病院」

血圧は人間と同じような仕組みの機械で測定するが、猫の場合は前脚、後ろ脚、または尻尾にベルトを巻くそうだ。ただ、猫の場合は診察が難しい個体も多い。

国際的な組織である「International Society of Feline Medicine」(筆者訳:国際猫医学会)が “猫に優しい動物病院”と認定した「キャットフレンドリークリニック(Cat Friendly Clinic、CFC)」が、現在、日本全国に223か所ある(ねこ医学会ウェブサイトより)。猫の血圧測定には、そうした動物病院の専門スタッフに相談するのが安心だろう。

猫たちに「できるだけお返ししたい」

講演の後は、現在9匹の猫と暮らしているというタレントの中川翔子(しょこたん)さんも登壇してのトークショーが行われた。高血圧については猫好きの間でも話題に上がらないそうだが、飼い主が知識を持ち、意識して生活することの大切さを学んだと話す。

そんな中川さんからは、一般の飼い主が日常生活で気をつけるべきポイントについて服部獣医師に質問があった。腎臓病の場合、水を飲む量が増えたり、おしっこの回数が増えたりする傾向があり、1つの目安になるそうだ。そのほか、目にいつもと違う様子が見られた時は高血圧症が疑われる場合もあり得るとのことで、動物病院で診断を受けるのが安心と言える。また、血圧に関しては、8歳くらいを目途に注意するのが良いとのことだ。

高血圧は加齢によっても引き起こされるため、完全に避けることは難しいが、「肥満や脱水は飼い主さんの注意で防げる要因。また、歯周病や歯石が多いなどデンタル系の疾患と関連性が見られるデータもあるので口の中のケアも大切だと考えられます」(服部獣医師)という。

中川さんからは、「猫たちは、人間の何倍ものスピードで歳をとってしまいます。病気も進行が速いと思うので、未然に守ってあげたい。見た目も性格も、みんな違ってみんな可愛い猫たちが、いつも私に愛情をくれます。できるだけお返ししたいので、ずっと健康でいてほしいと思います」と猫たちに対する強い愛情の言葉が聞かれた。

服部獣医師からは、若いうちから健康管理や食事の相談などで猫と一緒に病院に行くことに慣れておくことで、病気になった時に診察が受けやすくなるとのアドバイスがあった。病気でなくても、様々な相談に乗ってもらうため信頼できるかかりつけ医を決めておくのも重要だろう。

タレントの中川翔子さん(左)と東京猫医療センター院長の服部幸獣医師(右)タレントの中川翔子さん(左)と東京猫医療センター院長の服部幸獣医師(右)

なお、ベーリンガーインゲルハイム アニマルヘルス ジャパンでは、愛猫の目や表情に注目する習慣を促す取り組みとして、6月からSNSにて投稿写真の募集を予定。「Cat's Eye Project #猫の目かわいい選手権」に参加すると、抽選でイラストなどがプレゼントされる。

《石川徹》

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