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【命の商品化を考える vol.3】改正愛護法の飼育管理基準に関する議論…皆が幸せな環境づくりに期待

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  • 改正愛護法第21条に関する環境省令作成スケジュール

前回は、来年6月から第一種動物取扱業者に遵守義務が生じる飼養(飼育)管理基準について、ペット業界、愛護団体および専門家それぞれの基本的なスタンスを紹介した。

ペット業界の現状を踏まえて実行可能な基準の検討を求める業界団体と、あくまで動物主体に考えるべきだとする愛護団体および専門家の間で意見が分かれている。

これに対し環境省は、省令での規制は最低限のレベルにとどめながら、理想的なあり方は別途定めたい意向を示している。「アニマルベースメジャー(=動物を基にした施策)の考え方を基本」としながらも、「公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な措置でなければならないため、許容される最低限の水準の設定に留めざるを得ない」(環境省)としている。

特に議論を呼んでいるケージのサイズ

7つの項目のうち、特に大きな論点となっているのが繁殖施設や販売現場における犬・猫の生活スペースのサイズだ。改正愛護法の「ケージ等の基準」は、「体長・体高比として、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる等に必要な1頭あたりのスペースを具体化」するとされている。また、飼育が長期間にわたる場合には、運動エリアの広さも定量化することになっている。

昨年11月、業界団体である「犬猫適正飼養推進協議会」が環境省主催の第53回「中央環境審議会動物愛護部会」に「飼養施設の数値指標(試案)」を提出した。資料によれば、寝床(目安)が「高さ=体高 × 1.3倍、幅(短辺)=体高 × 1.1倍」で、生活エリア(運動場)は「設置せず」とされている。繁殖業界の現状を最も知る立場から、現実的なものとして提示された基準だろう。

これに対しては、愛護団体を中心に反対の声が上がっている。4月3日には、基本的な方針を同じくする超党派議連「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」が、環境大臣に飼養管理基準に関する要望書を提出した。ヨーロッパの法律や専門家の意見を基に、こちらも具体的な案をまとめている。

ケージの大きさについては、1頭あたりの体高ごとに必要とされる最低面積が具体的に示され、高さも「後肢で立ち上がった犬の前肢の先端が上端に届かない」とされている。また、同じ空間に複数が飼育される場合の追加面積や寝床の構造、床の素材、採光・空調・温度・湿度などについてもドイツやスウェーデン、イギリスなどで既に定められている基準を参考にした提案がなされた。

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事業者の利益と動物の福祉

立場や視点が異なれば意見を異にするのは自然なことであり、こうした議論はオープンな形で行われれば健全なことであると言える。「業界として色々な批判もあるので、問題のある業者をどうやって指導して辞めさせるのか、ということも考えている」と協議会が「検討会」で発言したことが、環境省の議事録で公開されている。愛護団体も含めた愛犬家が、まず望んでいるのも「色々な批判」に晒されているような劣悪な環境での飼育撲滅だろう。

同検討会では、「公益財団法人動物環境・福祉協会 Eva」が動物取扱業者の意識向上を訴えている。議事録には以下の記録がある:「動物の販売に反対しているのではなく、悪質な業者が排除され、適正に動物を扱うことのできる健全な事業者のみ存続してほしいと考えている。事業者の利益を守るために動物たちが苦しんではいけない。」

具体的な管理基準ができることは、ペット関連業界にもメリットはあるだろう。基準を遵守した適正な飼育によって、子犬や子猫の購入後に見つかる疾患や問題行動といった客とのトラブル減少につながることが考えられる。また、管理基準をガイドラインとすることで、個々の業者の質が向上し業界全体の底上げも期待できるだろう。

さらに明確な基準があることで、違反業者に指導する場合の自治体職員の負担も軽減され、問題事案に集中できる環境が作られるはずだ。犬や猫自身はもちろん、愛犬家・愛猫家とペット業界、さらには行政といったすべてのステークホルダーにとって良い環境をつくるための省令づくりに期待したい。

今後のスケジュール

新型コロナウイルスの影響で当初の予定から若干修正されている可能性はあるが、来年の施行に向けて省令の作成は進んでいる。今秋までに素案が決定し、年末をまたいでのパブリックコメントと事務手続きを経て来年6月19日までに施行の予定である。改正愛護法第21条が、真に動物福祉の向上につながるものになるかどうか、注目したい。

改正愛護法第21条に関する環境省令作成スケジュール

《石川徹》

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