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「第二のわが家」としての老犬・老猫ホーム…止むに止まれぬ事情を抱えた場合の選択肢

東京ペットホーム・ドッグホーム
  • 東京ペットホーム・ドッグホーム
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  • 16歳の黒柴・コロちゃん(東京ペットホーム・ドッグホーム)
  • トイプードルのプリンちゃん(東京ペットホーム・ドッグホーム)
  • 認知症のコロちゃんの部屋は、クッション性の高い素材で保護されている。プリンちゃんはこの部屋がお気に入りだそう(東京ペットホーム・ドッグホーム)
  • こじろうくんはマイペースなので、自分の部屋で過ごすことが多い。それぞれの個性に合わせた対応を心がけている(東京ペットホーム・ドッグホーム)
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  • お気に入りの場所でお昼寝(東京ペットホーム・ドッグホーム)

日本では現在、879万7000頭の犬と977万8000匹の猫が飼育されている(2019年一般社団法人ペットフード協会調べ)。世帯数としては1万2676にのぼり、4世帯から5世帯に1件は犬か猫、またはその両方と生活をしている計算になる。

寿命の延びる犬と猫

小動物医療の充実やペットフードの高品質化、外飼いから室内飼育へと生活環境が改善したことなどの要因によって寿命も延びている。国民生活センターによると、昭和40年代の犬の平均寿命は10歳前後だったようだ。これが、昨年のペットフード協会の発表では14.44歳にまで延びている。また、猫の平均寿命は15.03歳とのことだ。

ペットの高齢化に伴う課題

飼い主にとって、家族の一員である愛犬や愛猫が長生きするのは喜ばしいことに違いない。しかし、高齢化には課題も伴うのが現実である。愛犬や愛猫の身体が不自由になったり認知症を発症したりした場合、飼い主は仕事など自身の生活とペットの介護を両立する必要に迫られる。また急病や家族の急死など、飼い主側の高齢化によって飼育が困難になるケースもある。

その際、選択肢として考えられるのが「老犬・老猫ホーム」だ。人間の老人ホームと同様、有償ではあるがそれぞれの状態に応じたケアが受けられる。「東京ペットホーム」は、東京・大田区で「ドッグホーム」と「キャットホーム」を運営している。

ドッグホーム

「陽の光を浴びてくつろぐわんこの『わが家』」と表現されるドッグホームには、現在10頭が終生預かりとして生活している。それぞれに約1.5畳分の広さの個室が与えられるとともに、好みに応じて日当たりの良いフリースペースで自由に過ごしている。飼い主と十分に話し合いを行い、個性に合わせた対応を心がけているとのことで、散歩も毎日1頭ずつ行うそうだ。

それぞれの事情

16歳の黒柴「コロ」ちゃんは認知症が進み、看護師として多忙な毎日を過ごす飼い主さん一人では十分に面倒を見られないために入所することになった。個室の内側には転倒してもけがを負わないよう、クッション性の高い素材が貼られている。また、認知症にありがちな生活リズムの崩れを防ぐため、朝は太陽の光を浴びさせたり身体のマッサージを行ったりと、きめ細かなケアを受けている。

職員によると、「とてもまじめな方」である飼い主さんは、ホームに預けることについてはかなり悩んだそうだ。現在、コロちゃんが手厚い介護を受けられると同時に、自身も仕事に集中できる環境となり、「ホッとしている」とのことだ。

トイプードルの「プリン」ちゃんは、大好きだったお父さんが亡くなり「パパさんロス」から体調を崩したそうだ。飼い主さんと2頭の同居犬の励ましにも関わらず状況が改善しなかったため、ホームで生活環境を変えることで元気を取り戻したという。この日に着ていた可愛いシャツや綺麗にトリミングされた姿から、飼い主さんの変わらない愛情が感じられた。

東京ペットホーム・ドッグホーム

きめ細やかなケア

「みんな老犬なので(健康面で)常に緊張感はありますが、出会う犬たちが可愛くてたまらない」と、ドッグホームの増見美佳マネージャーは語る。また、愛情あふれる飼い主からそれぞれの「犬生」についての話を聞くことができるのも、この仕事の大きな魅力だそうだ。

アパレルやインテリア業界で販売関係の仕事をしていたというユニークな経歴だが、そのキャリアで培った経験が大きく役に立っているそうだ。犬だけでなく飼い主が何を望んでいるか、どうしたら喜んでもらえるかなどを「キャッチできる力」が、個性の違う犬や飼い主と付き合っていく上で大切だという。

東京ペットホームを運営する合同会社・羽田ライフサービスの渡部帝(あきら)代表(左)とドッグホームの増見美佳マネージャー(右)

キャットホーム

ドッグホームから歩いて5分ほどのところに、「猫の集会所」キャットホームがある。22匹まで収容できる施設には、現在16匹の猫が暮らしている。ドッグホームと同様だが、日中は2名のスタッフがケアを行っている。そのほか、4:30~7:00までの早朝シフトと20:00~24:00までの深夜シフトに加え、週の半分は宿直担当者も配置する体制がとられている。

東京ペットホーム・キャットホーム

渡部まいこ店長は、猫の「私にだけに心を開く」感じがたまらないと笑顔で語る。最高齢の「ピーコ」ちゃんは21歳。認知症だというが、「ブラッシングは長生きの秘訣だと思っている」という店長が毎日丁寧に被毛ケアをしているため、毛玉もなく健康な状態に保たれている。他にも、飼い主さんがガンの余命宣告を受けたためやって来た子や、兄弟で預けられている子たちがいた。

店長によれば、「猫たちは全部助けたい」気持ちが強い一方、経営面での葛藤があるのがこの仕事で最も大変なことのようだ。

キャットホームの渡部まいこ店長

きっかけは「3.11」の東日本大震災

東京ペットホームを運営する合同会社・羽田ライフサービスの渡部帝代表が同社を立ち上げたのは約6年前。東日本大震災で多くの「被災犬」がいたことを知り、もし同じことが東京で起こったら自分の愛犬の運命はどうなるだろう、と思ったのが設立のきっかけだそうだ。当時経営していた工務店を廃業し東京ペットホームを設立した。

受け入れのシステム

小型犬では入居金が30万円、半年間の飼養費として30万円の費用が掛かる。猫の場合はそれぞれ24万円ずつで、ドッグホーム、キャットホームとも半年ごとの更新と修正一括契約が選択可能(健康状態により必要な介護費・医療費は別途)。なお、面会や一時帰宅、生活環境が整った場合の契約解除も希望に応じて対応する。

決して安い金額ではないが、散歩や食事、他の犬や猫との交流もそれぞれの個性に配慮したきめ細かな対応を行うため、犬は10頭、猫は22匹を上限としており経営面は楽ではないそうだ。ドッグホームで空いた「個室」は、受け入れを拒否されることもある老犬用のペットホテルとしても活用するなど経営効率向上の努力も行っている。

選択肢の1つとして

「ペットの第二のわが家」として老犬・老猫が心地よく暮らせるよう、また飼い主さんが安心できるよう、「プロとしてお金を頂いて託されている」責任を常に意識しているという渡部代表。飼い主と相談しながら、1頭ごとに十分なケアを行い、犬・猫はもちろん、飼い主にも満足してもらうことに妥協は無いようだ。

経済的な面を考えると、誰もが利用できるわけではないペットホーム。ただ、状況が許せばペットだけでなく飼い主も心穏やかな時間を過ごすことができる、こうした選択肢は意義があるだろう。

ドッグホームで出迎えてくれた犬たちが、とてもフレンドリーで明るかったのが印象に残るまた、老犬には見えない毛艶の良さには驚かされた。猫たちも自由にのびのびとホーム内で過ごしていた。犬猫共に、止むに止まれぬ事情があって入所することになったが、飼い主さんは面会にも訪れ、今でもたっぷりの愛情を注がれているそうだ。ホームの環境の良さと職員の熱意に加え、飼い主さんの変わらぬ愛情による心身の健康が犬猫たちの表情にあらわれていると感じた。

《石川徹》

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