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【猫がなりやすい病気】糖尿病性ケトアシドーシス編…糖尿病の最も注意すべき合併症

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どんな病気?

猫の糖尿病の初期病態はほぼ2型糖尿病で、人の糖尿病と似ている。インスリン分泌能力はあるものの、血糖値を十分に低下させられない状態になる。糖尿病性ケトアシドーシスは、糖尿病の最も注意すべき合併症で、糖尿病の初期に同時に発症することや、糖尿病治療中で、急性膵炎や尿路感染症、腫瘍性疾患などを併発したタイミングで発症することが多い。

糖尿病性ケトアシドーシスの発症メカニズムは、インスリン欠乏が生じた際、中性脂肪や筋肉を代謝してエネルギーを得るようになるというもの(健康な体内ではグルコースを代謝してエネルギーを得ている)。また、インスリン濃度低下により脂肪分解が抑制されないため、脂肪の代謝産物であるグリセロールや遊離脂肪酸の血清濃度が上昇し、筋肉代謝によるアラニンの濃度も上昇する。グリセロールやアラニンは、肝臓での糖新生の元になる物質なので糖新生が促進される上、インスリン欠乏によりグルカゴンの分泌も刺激されるため、さらに糖新生が促進される。また、グルカゴンはミトコンドリアにおける遊離脂肪酸からケトン体への変換を促進するホルモンであり、正常であればインスリンがミトコンドリアへの遊離脂肪酸の輸送を抑制することで、ケトン体の生成を抑制しているが、インスリンが欠乏するとそのままケトン体生成が進行する。生成されるケトン体である、アセト酢酸やβヒドロキシ酪酸は強酸なので体内に蓄積することで体が酸性に傾き、アシドーシスという状態になる。

ケトン体は、脳の延髄を刺激し食欲不振や嘔吐、悪心を誘発する上、体が酸性になることで浸透圧性利尿を起こし、脱水、循環血液量減少、低カリウムなどに発展する。また、重度の脱水やナトリウム喪失は、腎血流量減少と血液粘稠度増加を引き起こすため、腎不全や血栓塞栓症などの合併症を引き起こすリスクにもなる。このように全身状態が非常に悪化する疾患なので、亡くなることもある恐ろしい疾患である。

かかってしまったら?

治療は、食事療法、運動療法、インスリン注射で治療することがほとんどである。特にグルコース中毒症が関与しているので、初期治療からインスリン療法が必要になる。グルコース中毒症とは、血糖値540mg/dl以上の高血糖が持続すると、始めの3、4日は血糖値に対応し過剰にインスリンを分泌することで血糖値を正常に維持しようとするが、その後も高血糖が持続するとインスリン分泌を停止してしまうというもの。

ほとんどの糖尿病の猫はグルコース中毒で来院し、その半数が糖尿病性ケトアシドーシスになっている。初めて糖尿病と診断され、インスリン治療を開始する猫でしばらくの間高用量のインスリンが必要になるが、突然インスリンの量が激減することがあるのは血糖値が安定することによりグルコース中毒から離脱し内因性のインスリンを再開するためだ。インスリン療法を適切に行い、グルコース中毒から離脱すれば糖尿病が寛解することもあるので、糖尿病でも悲観的にならず希望をもって治療してほしい。

必要な検査は、血中や尿中のケトン体を検出することで診断可能である。尿試験紙では、猫で増加する主要なケトン体であるβヒドロキシ酪酸は検出できないので、偽陰性になることもあるので注意が必要。症状は食欲不振、虚脱、昏睡、嘔吐など非特異的である。また、ケトンは出ているが、アシドーシスにまで至らない場合は一見元気そうに見えることもある。

治療は、基本的に入院が必要になる。初期治療は、脱水による循環血液量減少と電解質異常の改善のための輸液。低リン血症になっている場合は、溶血性貧血を引き起こす原因になるので輸液剤に添加される。同時にケトン血症のコントロールとして短時間作用型インスリンの投薬が行われるが、これにより低カリウムや低リンが悪化するので、必ずモニタリングしながら行う。長期間の食欲不振を放置することで、肝リピドーシスを併発することがあるので、特に肥満猫では注意が必要だ。できるだけ早期に食事を始め、難しいようなら食欲増進剤の投与や強制給餌も行う必要がある。

予防法は?

糖尿病にならなければ、ケトアシドーシスに陥ることはないので、食事管理を行い日ごろから肥満にならないようにすることが重要である。

《M.M》

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