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犬のトレーニングだけでなく、人材育成とリハビリの場としての役割も…介助犬総合訓練センターレポート vol.1

介助犬PR犬のレモン
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  • 介助犬総合訓練センター「シンシアの丘」
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  • 宿泊型訓練室(介助犬総合訓練センター)
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これまでREANIMALでは、手脚の不自由な方の自立と社会参加を支援する「介助犬」(参考記事)や「身体障害者補助犬法」(参考記事)を紹介してきた。また、日本介助犬協会が行っている、犬の「寄り添う力」を病気の治療などに役立てる「動物介在活動・動物介在療法」という取り組みについても触れた(参考記事)。今回はそうした介助犬の育成について紹介する。

唯一の介助犬総合訓練センター

社会福祉法人 日本介助犬協会(本部:神奈川県横浜市)は、2009年に国内唯一の介助犬訓練施設をオープンした。愛知県長久手市にある「介助犬総合訓練センター」は、2002年の「身体障害者補助犬法」成立に貢献した介助犬のラブラドールレトリーバー、「シンシア」にちなんで「シンシアの丘」とも呼ばれている。ここでは毎年、およそ25頭の若い候補犬がトレーングを受けている。

2階建て施設のメインフロアには、犬舎や犬のトレーニング室、職員の執務室などがある。興味深いのは5部屋ある「宿泊型訓練室」。ここは、介助犬の希望者が実際に生活しながらパートナー候補の犬と一緒に訓練を受けるために宿泊する施設だ。

人のリハビリにも重きを置く日本介助犬協会

同協会は、介助犬の育成事業を「介助犬を通した障がい者の自立と社会参加を促進するリハビリテーションを担う(同協会)」ものと位置づけている。シンシアの丘は犬の訓練施設であるだけでなく、介助犬ユーザーとなる人がリハビリを行う場としての役割も担っているとのことだ。

介助犬の希望者は2~3週間ここに寝泊まりし、日常的に必要な世話も含めて介助犬について学習する。また作業療法士など外部の専門家も参加し、一人ひとりの身体の状態などに合わせた飼育管理動作や介助動作をパートナー犬と使用者が共に学ぶ。

宿泊や外出への抵抗感軽減にも配慮

この宿泊型訓練室は低い位置に設置されたスイッチ、高さ調整の可能なベッド、リフトが使用できるバスルームなど、車椅子で生活しやすいよう設計されている。さらに、暖かみのある木目調の家具や床材を使用したり、部屋ごとに少しずつレイアウトを変えて好みに対応したりすることで、できるだけ心地よく落ち着いて生活できる工夫が施されている。障がいによって行動範囲が狭まる傾向にあるユーザーにとって、この訓練が外出や宿泊に対する抵抗感を無くすきっかけになれば、という思いもあるようだ。

宿泊型訓練室(介助犬総合訓練センター)宿泊型訓練室(介助犬総合訓練センター)

犬のことだけでなく法律や福祉まで幅広く学習

この宿泊型訓練室の並びには、「研修生室」も4部屋用意。約7畳のワンルームには、ベッドや机、冷蔵庫、エアコン、収納家具や有線LANなどが備えられている。また、共用のキッチンや洗濯機もあり、すぐに生活を始められるようになっている。

同協会では職員になる前の1年間、「研修生」として学ぶ。2005年から始まったこの研修生制度は、「介助犬の育成・普及活動に携わる人材を養成していくこと」を目指してスタートした。ここで生活しながら週4~5日の研修を受け、法律、福祉、障がいや広報・啓発活動などについて幅広く学習すると同時に、犬と触れ合いながら介助や犬に関する理解を深める。

中身の濃い1年間を経てそれぞれの道へ

朝の散歩から始まり介助犬候補のトレーニング、グルーミングや犬舎周りの清掃などの作業や講義などに1日を費やす。休日は自由に時間を使うことができ、犬舎作業のアルバイトやトレーニングの見学をする場合もあれば、自宅に犬を連れ帰って過ごすこともあるという。3ヶ月ごとの定期テストや卒業研究などもあり、かなり中身の濃い1年のようだ。

なお、この研修は協会への就職を保証するものではなく、研修後はそれぞれの希望と協会のニーズに応じた職業に就くことになる。もちろん日本介助犬協会の職員になる場合もあるが、そのほか作業療法士などの仕事を通して介助犬に関する啓発活動を行うなど進路は様々だという。毎年2~3人が研修生として勉強し、現在は14期とのことだ。

介助犬総合訓練センター「シンシアの丘」介助犬総合訓練センター「シンシアの丘」

今回は、日本介助犬協会の「介助犬総合訓練センター」について、まず人に関わる施設について紹介した。次回は、もう“ひとり”の主役である犬たちについて、その訓練の場である「トレーニング室」や生活の場である「犬舎」などを中心に紹介する。強く印象に残ったのは、そうした施設とそこに暮らす犬たち、そして働くスタッフの明るさだった。

《石川徹》

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