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人間の生活を幅広くサポートしてくれる介助犬…人にも動物にもやさしく楽しい社会へ

「仕事」でなく遊びの一環で使用者をサポート
  • 「仕事」でなく遊びの一環で使用者をサポート
  • 車いすの移動を補助する介助犬
  • 介助犬は靴の脱着もサポート
  • 落とした物を器用に拾って渡す
  • 場所を探すことから自発的に行動
  • 冷蔵庫の開け閉めも行う
  • 「楽しい」と感じる訓練
  • 介助犬には遊び好きな明るい性格が適しているとのこと

新型コロナウイルスによる社会不安が広がる中、ペットを飼い始める家庭が世界的に増加しているという。終生飼育を不安視する声もあるが、ペットに安らぎを求める人間の心理がその背景にあると言われている。

こうした「癒し」など心理的なものだけでなく、「仕事」を通して私たちの生活を支えてくれている動物たちもいる。その中から「介助犬」について紹介する。

3種類の「補助犬」

2002年に施行された「身体障害者補助犬法(補助犬法)」によって、病院、飲食店、ホテルやスーパーマーケットなどの施設や交通機関に「補助犬」を同伴することが可能となった。補助犬として最も知られているのは盲導犬だろう。現在、1000頭近くが日本中で活躍している。

また、耳の不自由な方をサポートする「聴導犬」も最近はメディアなどで取り上げられるようになっている。全国で約70頭と盲導犬に比べれば数は少ないが、認知が高まっている印象を受ける。

一方、現在61頭と、まだ普及が進んでいないのが「介助犬」だ。目の代わりをする盲導犬、耳の代わりをする聴導犬と比べ、その役割がすぐに理解できないこともその一因かもしれない。介助犬の仕事は、手脚の不自由な方のサポート。家の中での日常生活や、車いすや杖を使って外出する場合など様々なシーンで活躍するマルチな才能を発揮する。

介助犬は黄色のベストに「介助犬」の文字が目印

介助犬の仕事

介助犬は、「主要8動作」を通して人間の生活をサポートする。
1)落ちた物を拾う、2)指示した物を持ってくる、3)緊急連絡手段の確保、4)ドアの開閉、5)衣服の脱衣補助、6)車いすの牽引、7)起立・歩行介助、8)スイッチ操作(日本介助犬協会HPより)。

落ちた物を拾う動作では、平らな床に落ちた硬貨など、厚みのほとんど無い物でも器用に拾い上げるように訓練されている。飲み物は、指示があれば自ら冷蔵庫の扉を開けて取り出し、冷蔵庫の扉を閉めて使用者に渡す。

ハンディキャップを持った方の中には体温調節が難しい場合も多いため、冷えた飲み物を取ってきたり、ブランケットを渡したり、扇風機のスイッチを入れたりといった動作が命を守る重要な仕事となる。

その他、靴を脱ぐ時のサポートや脱いだ靴下を洗濯かごに入れるなどの仕事も行う。緊急時には、「電話」と指示を与えれば携帯電話や電話の子機を自ら探して使用者に渡すこともできる。

介助犬は靴の脱着もサポート

日本介助犬協会

こうした介助犬の訓練や健康管理をはじめ訓練士の育成、希望者へのカウンセリング、調査・研究およびPR活動を行っている団体の1つが「社会福祉法人 日本介助犬協会」である。日本では、1992年にアメリカから連れてこられた介助犬からその歴史が始まった。その3年後に発足した任意団体「介助犬協会」が同協会の始まりである。

2004年には介助犬の育成と提供および継続したサポート体制を築くことを目的に「全国介助犬協会」が設立され、2年後に現在の日本介助犬協会に改称して今日に至っている。2009年、愛知県長久手市にオープンした「介助犬総合訓練センター・シンシアの丘」では、約25頭の介助犬「候補生」がトレーニングを受けている。

使用者のニーズに応じた動作を行う介助犬

役割がある程度決まっている盲導犬や聴導犬と異なり、介助犬には使用者の日常生活を幅広くサポートすることが求められる。さらにハンディキャップの内容や程度、生活環境などに応じ、必要とされるスキルも異なる。「介助犬は一頭一頭オーダーメイド(の訓練)が必要です」と、協会関係者は語る。

楽しんで仕事に取り組む介助犬:「ごめんね」ではなく「ありがとう」

そんな介助犬のトレーニングはかなり厳しいものだろうと思ったが、実際には真逆のようだ。日本介助犬協会では、「犬が楽しいと思うことを自然にできるように」介助に必要な動作を教えているそうだ。仕事を「やらされる」ものではなく、パートナーである使用者に「褒めてもらえて嬉しい」から行う自発的な楽しい動作になるよう、1頭ごとの個性に合わせて遊びの延長として訓練されている。

使用者にとっても、犬が自然に行う動作であれば気兼ねなくサポートを頼めるため、日常を心穏やかに過ごすことができるという。例えば、夜中に飲み物を頼んでも、「(就寝中に仕事をさせて)ごめんね」という気持ちではなく、自然に「ありがとう」と言えるような関係を築くことができるそうだ。

「楽しい」と感じる訓練

人にも動物にも優しい社会に

同協会のモットーである「人にも動物にもやさしく楽しい社会をめざして」という姿勢が、このようなところに見られる。我慢させられることなく介助犬が仕事を楽しみ、その結果、使用者も幸せになる、という環境づくりが同協会のめざすところのようだ。

このようにマルチな才能を発揮する介助犬を育成している日本介助犬協会だが、その活動はもっと幅広い。現在では、病院の入院患者向けのプログラム(「動物介在活動」や「動物介在療法」)や適性を見極めた犬を発達障がいのある子どもに譲渡することも行っている。REANIMALでは今後、日本介助犬協会のこうした幅広い活動についても紹介していきたい。

《石川徹》

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