動物園や水族館で人気のコツメカワウソは、愛くるしい動作に加え、ビロードのような毛並みを持っている。泳ぎが得意なため水槽メインの展示室が多いが、埼玉県こども動物自然公園は屋外で小川と池を模した展示で、カワウソたちが元気に遊び回っていた。
鳴き声を使い分け、仲間と意思疎通
飼育小屋からでてきた4頭のコツメカワウソ(ビジュ、ボンジリ、ピースケ、カシラ)は、まず展示エリア(縄張り?)のチェックをはじめた。水路に水が流れ始めると、1頭が滑り台のように水路を下って小さい池に入っていく。他の3匹も後を追うように池に飛び込み、水辺で遊びだした。4頭はじゃれ合うように遊んでいたが、その時の声がなんともいえない鳴き声だ。小鳥のようであり、猫のようでもある。
コツメカワウソは、基本的につがいのペアを中心に15頭前後の群れをつくるという。研究によれば、少なくとも12の鳴き声を使い分け、仲間と意思疎通を行っている。今回聞いた声が遊びなのかケンカなのかは不明だが、ケンカだとしても本気モードではなさそうだ。しばらくすると池から上がり、水気のない乾いたエリアにそろって移動していった。
枯れ葉で体をゴシゴシ
そこは、灌木と落ち葉が敷き詰められたエリアだ。全員が濡れた体を拭くように枯れ葉や地面の上を転がりだした。泥だらけになるかと思ったが、あまり土がつかない。ラッコ(英名はsea otterで直訳すると海カワウソ)がそうであるように、コツメカワウソの毛皮も油分があり中に空気を保てるようで、毛皮の奥まではなかなか濡れないので乾きも速い。まるで落ち葉をタオルとして使っているようだった。コツメカワウソたちは、落ち葉で体を拭くだけでなく、潜って遊ぶこともあるそうだ。
なお、体の一番小さいのが「ビジュ」でお父さんだそうだ。小さくても一番強いのがお父さん。長男のピースケは弟のボンジリとカシラに押され気味だそうだが、寝るときは4頭一緒になって寝るほど仲がいい。
密猟・密輸が問題に
コツメカワウソは、名前のとおり小さい爪を持つカワウソだ。カワウソの仲間では最小と言われている。指が小さく爪も鋭くないが、魚やカニなどを器用につかむことができる。生息域は東南アジアの川や池など淡水域。
テレビ番組などの影響で人気の動物で、ペットとして飼っている人もいるが、コツメカワウソは絶滅危惧II種(VU)に指定されている。現在は取引も制限されているので、ペットとして飼う動物ではない。絶滅危惧種に指定されているのは、東南アジア諸国の開発による生息域の縮小もあるが、ラッコやイタチ、カワウソは毛皮の需要もあり個体数の減少原因の一つにもなっている。ここにきて、さらにペット需要があるとされ密猟・密輸が問題となっている。
ペットショップは「自家繁殖」として販売しているかもしれないが、安易な購入・飼育が密猟や乱獲を後押しすることになる。カワウソは排泄物と肛門腺のにおいによってマーキングをする。顎は小さいが牙は鋭い。手術をすれば、抜歯すれば飼えるのではないかと思う人は、そもそも動物を飼うべきではないだろう。