動物のリアルを伝えるWebメディア

「愛玩動物看護師法」の成立で、動物看護師が国家資格に

イメージ
  • イメージ
  • 愛玩動物看護師法の概要
  • 愛玩動物看護師法の施行スケジュール
  • 愛玩動物看護師の受験資格
  • 愛玩動物看護師の業務範囲

2019(令和元)年6月に成立・公布された「愛玩動物看護師法」の施行日が、2022(令和4)年5月1日に決定した。 この法律は、主にペットを対象とした動物看護師の資質向上と業務の適正化を目的としている。所管する農林水産省と環境省は、背景と狙いを以下のように述べている。

「犬・猫等の愛玩動物は、今日、多くの家庭において、家族の一員としてかけがえのない存在となっています。(中略)今後ますます重要性が増していくことが想定される愛玩動物を対象とした動物看護師の資質向上・業務の適正を図ることを目的に、愛玩動物看護師の国家資格を定めるものです」(農林省および環境省のHPより)。

「愛玩動物看護師法」による定義

同法で規定する愛玩動物は、「獣医師法第17条*に規定する飼育動物のうち、犬、猫その他政令で定める動物をいう」とされており、主に犬や猫などのペットが対象となる。その仕事には、ケガを負ったり病気に罹ったりした動物の診察サポートと看護を含む世話のほか、飼い主へのアドバイスなども定義されている。この法律によって、法的にはこれまで獣医師のみに限られていた診療行為の一部を「診療の補助」として行うことが正式に認められることになる。

愛玩動物看護師法の概要愛玩動物看護師法の概要

施行スケジュール

昨年12月1日に法律の一部施行が始まり、国家試験を実施する機関の指定や細かな省令の検討などが行われている。同時に試験資格を得るために必要な、教育カリキュラムの策定も進行中だ。農林水産省および環境省が開く「愛玩動物看護師カリキュラム等検討会」において、同法が規定する愛玩動物看護師の養成に必要な科目の話し合いが行われている。なお、今年の10月9日には施行期日を定める政令が閣議決定され、同法律の全部施行が2022(令和4)年5月1日に決定した。

愛玩動物看護師法の施行スケジュール愛玩動物看護師法の施行スケジュール

国家試験の受験資格

2023(令和5)年12月末までには最初の国家試験が予定されており、その後も年1回以上は行われることになっている。国家資格である愛玩動物看護師となるためには、この試験に合格し国(農林水産省および環境省)から免許を受けることが必要となる。

国家試験の受験資格を得るためには、以下の3つの方法がある。

1.大学で、国が指定する科目を履修し、卒業する
2.国が定める基準を満たし、都道府県知事の指定を受けた専門学校などで、必要な知識・技能を3年以上かけて修得する
3.外国の関連学校等を卒業するか、外国で愛玩動物看護師免許に相当する免許を取得する

施行から5年間は受験資格に特例措置

ただし、施行日から5年間は特例が認められている。以下に該当する既卒者と在学者は、国が指定する講習会に参加することで受験資格を得られる経過措置が設けられている。

既卒者の場合
1.指定された科目を履修の上、施行日(令和4年5月1日)前に大学を卒業した場合
2.専門学校などで必要な知識・技能の修得を、施行日前に終えた場合

在学者の場合
1.施行日前に入学した大学で、指定された科目を履修の上、施行後に卒業した者
2.専門学校などで必要な知識・技能の修得を、施行日後に終えた場合

大学や専門学校などを卒業していない場合でも、愛玩動物看護師の業務にかかわる実務経験が5年以上ある場合などにも特例が認められる。そのケースでは、国が指定する講習を経て予備試験を受け、合格すれば国家試験の受験資格が得られる。

これらすべての経過措置は法律の施行日から5年間とされている。その間、予備試験も年1回以上の実施が予定されている。

愛玩動物看護師の受験資格愛玩動物看護師の受験資格

愛玩動物看護師としてできること

正式に免許を取得すると、「獣医師法第17条*の規定にかかわらず、診療の補助を行うことを業とすることができることとする。(法第40条第1項)」とある。農林水産省および環境省の資料には、「診療の補助」の具体例として、獣医師の指示の下に行う採血、投薬(経口など)、マイクロチップ挿入、カテーテルによる採尿などが獣医師以外では「愛玩動物看護師のみ実施可能」とされている。そのほか、入院動物の世話や診断を伴わない検査などは愛玩動物看護師以外も行うことができる。

愛玩動物看護師の業務範囲愛玩動物看護師の業務範囲

「愛玩動物看護師」の使用制限

また、「愛玩動物看護師でない者は、愛玩動物看護師又はこれに紛らわしい名称を使用してはならないこととする。(法第42条)」と同法で規定されている。したがって、今後は紛らわしいものも含め、名称の使用制限がかけられることになる。

* 獣医師法第17条:「獣医師でなければ、飼育動物(牛、馬、めん羊、山羊、豚、犬、猫、鶏、うずらその他獣医師が診療を行う必要があるものとして政令で定めるものに限る。)の診療を業務としてはならない。」

《石川徹》

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top