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「殺処分ゼロ」に取り組む行政の姿勢 vol.2…動物福祉の向上のためか行政の宣伝ツールか

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  • 「殺処分」に関する東京都独自の定義

前回は、国が定める「殺処分」の分類について紹介した。治る見込みの無い重い怪我・病気や激しい攻撃性による安楽死、ペットとして飼育可能な状態にも関わらず殺処分されたケース、および怪我・病気や衰弱などで手当ての甲斐なく死亡したもの、の3つである。この分類に関しては議論の余地もあると思われるが、現状ではこれら3つの理由で自治体の施設に収容された後に亡くなった動物は「殺処分」数に含まれるのが国の枠組みである。

東京都は国と異なる独自の定義

東京都の場合、犬猫の処分に関してはこれとは異なる定義を作成し、国とは違う分類を行っている。まず、「致死処分」という独自の言葉が創られている。東京都の資料によれば、この致死処分は以下の3つに分類される。

1.動物福祉等の観点から行ったもの
2.引取り・収容後死亡したもの
3. 「1」、「2」以外の致死処分

東京都の「ゼロ」は国による分類の一部のみをカウント

東京都の場合、3番目の分類である「1、2以外の致死処分」のみを「殺処分」としている。

「殺処分」に関する東京都独自の定義

「動物福祉等の観点から(殺処分を)行ったもの」の説明を見ると、「苦痛からの解放、著しい攻撃性、衰弱や感染症によって成育が極めて困難」とされている。つまり、国の定義では殺処分の分類「1」に該当する「譲渡することが適切ではない(治癒の見込みがない病気や攻撃性がある等)」ケースを、東京都は独自の「致死処分」と呼ぶことで、殺処分から除外している。

また、国の分類では「3」にあたる「引取り後の死亡」も同様に、東京都は「殺処分」としていない。こうした定義と分類の違いが、環境省の資料にある犬と猫の殺処分数113と東京都の主張する「ゼロ」の背景である。

国のデータでは、東京都で殺処分に分類されるのは犬12頭、猫101匹

国の分類で見た場合は、平成30年度に東京都で「殺処分」された犬は12頭。7頭は「引取り後の死亡」、つまり救えなかった命とされている。残りの5頭は「譲渡することが適切ではない」ための殺処分に分類されている(病気・怪我による安楽死か攻撃性による処分かは不明)。

猫については、合計で101匹の記載がある。このうちの97匹が、「主に離乳していない個体を示す」とされる「幼齢個体」とされている。また猫の場合は衰弱に加え重い病気や事故による怪我で収容される場合も多く、ほとんどが動物愛護センターなどへの収容前からの病気や怪我、衰弱などが原因と想像できる。

独自の枠組みで混乱を招く都政

収容以前に負った大怪我や罹患した重病、幼齢による衰弱などの事情によって亡くなった犬や猫を殺処分と呼ぶことには、議論の余地はあるかも知れない。また、いわゆる安楽死を殺処分に含めたくないという東京都の意向があるのかも知れない。「動物福祉の観点から(殺処分)を行ったもの」や「引取り・収容後死亡したもの」を除外する東京都の姿勢が全面的に間違っているとは言えないと感じる。

しかしながら、オープンな手続きを経ないまま自治体が国と異なる独自の枠組みを設けることには大きな疑問を感じる。国単位での状況把握や、それに基づいた自治体ごとの取り組み内容の比較、そこから得られる「学び」による実行計画の改善などに大きく支障をきたすだろう。また、「このたび、目標を達成しましたので、お知らせします。」(2019年4月5日、東京都福祉保健局による報道発表資料より)と、公式に報道発表する行政の姿勢には疑問を感じざるを得ない。

なお、東京都は現在、新型コロナウイルス感染症に関しても、「重傷者数」の分類に国とは異なる独自の定義を創作・運用していることが知られている。

国の基準を当てはめると、東京都では357の犬と猫を殺処分

東京都が公表している情報は、国の発表と数字そのものにも大きな乖離がある。都の資料では、平成30年度には犬が合計15頭、猫が342匹、犬・猫合わせて357の個体が「致死処分」されたとある。一方で、国の発表は前述のとおり12頭と101匹、合計で113。この原因については調査中だが、いずれにしても行政による命への取り組み姿勢には問題を感じる。

「殺処分ゼロ」に関する行政面での課題

同様の「独自基準」による殺処分ゼロ達成には、東京新聞が今年の5月に報じたように、茨城県に対しても疑問が投げかけられている。また、奈良市では「自然死・安楽死」を除外する一方で、「攻撃性や病気等があり、譲渡が難しいと判断し、処分すること」を「殺処分」と定義している。取り組みへの姿勢とともに、枠組みも自治体によりバラバラな現状がある。これについては、中央政府(環境省)がリーダーシップを取ることを期待したい。

また、自治体(= 「動物愛護センター」等)の収容数を減らすため、過剰な譲渡による愛護団体の崩壊といった報道もしばしば見受けられる。現場の獣医師や職員などは、日々、動物愛護センターなどで命と正面から向き合っていることだろう。一方で、「殺処分ゼロ」が行政によるアピールの道具にとどまらないよう、自治体の取り組みについては今後も慎重な検証を続けたい。

《石川徹》

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