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イギリスの動物愛護事情 vol.7…動物虐待に対する最高刑の引き上げが決定

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REANIMALでは3月に、動物福祉法(Animal Welfare Act)の改正案が下院(House of Commons)を通過し、上院(House of Lords)での審議を経て夏前には成立の見込みであることを報じた(参考記事)。4月29日、この法案が英国政府によって承認された。これまで6か月の刑務所への収監が最高刑であった動物の虐待が、5年に引き上げられる。

遅れていたイングランドとウェールズ

イギリスは正式名称を「グレートブリテンと北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」という。グレートブリテン(島)にはイングランドのほかウェールズとスコットランドがある。また、ブリテン島の隣に位置するアイルランド島の一部、北アイルランドを含めた4つの地域からなる「連合王国」を日本語では「イギリス」と呼んでいる。それぞれが独自の議会を持ち、法規制なども異なる部分がある。

すでに、スコットランドと北アイルランドは欧州先進諸国と同様に動物の虐待に最高5年の収監という厳罰を科していた。一方でイングランドとウェールズでは法律の定めが最高6か月にとどまり、王立動物虐待防止協会(The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals:RSPCA)を始めとする各方面から法改正を求める声が上がっていた。2019年6月に2人の議員が改正法案を提出し、2年で成立となった。

2か月の猶予期間を経て6月29日より改正法が施行

改正された法律は、成立から2か月の猶予(周知)期間を経て今年の6月29日より施行される。RSPCAによれば、これまで判決が罪の重さに対しては不十分なことを認めるコメントが裁判官から聞かれることもあり、早期の法改正が望まれていたという。今回の法案に関しては、RSPCAを含め多くの団体や個人が署名等の活動を行ったことも成立の後押しとなったようだ。

日本の動物愛護法は実効性のあるものになるか

日本でも、今年の6月1日に「動物の愛護及び管理に関する法律(通称、動物愛護法)」改正に関連した動きがある。飼育するケージや運動スペースのサイズ、従業員1人当たりの飼育頭数上限など、犬や猫に関する飼養環境の改善を目的とした俗にいう「数値規制」が繁殖、販売、競り斡旋事業者などに課せられる(「“命の商品化”を考える」シリーズ参照)。

一部の項目に最高4年の猶予期間が設けられたことや、定められた遵守義務のチェック体制をどうするかなど、実効性に不安があるとする意見もある。一方で、環境省の担当局は今回の数値規制を「悪質な事業者を排除するため」と繰り返し明言しており、決意がうかがえる。日本でも、法改正が動物たちの福祉向上に一定の効果を及ぼすことに期待したい。

《石川徹》

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