寅年なのでトラのいる宇都宮動物園(栃木県宇都宮市)へ行くことにした。なぜ宇都宮かというと、2021年に生まれたホワイトタイガーの子どもがいるからだ。しかも現在は母子一緒に見ることができるという。
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なお、香川県のしろとり動物園でも、21年11月にホワイトタイガーが生まれている。こちらも取材したかったのだが、残念ながら遠征の都合がつかなかった。
21年3月に生まれた「イーサン」
取材日、宇都宮動物園にいたホワイトタイガーは3頭。まず最初に「シラナミ」「イーサン」の母子に会える。イーサンは、シラナミと「アース」の間に昨年3月に生まれた子ども。この日、お父さんのアースには会えなかった。イーサンは、生後9か月とあって見た目の子どもっぽさはなくなってきているが、見ているとシラナミの寝ているそばにあえて入り込んで甘えたり、棒切れで遊んだりと子どもっぽくよく動く。お母さんのシラナミはそれを高台の上から見守っている様子だ。
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シラナミ・イーサン母子の奥には、2歳の「グーナ」がいた。グーナのお父さんとお母さんもアースとシラナミだ。つまり宇都宮動物園ではホワイトタイガーの繁殖に2回成功しているということ。イーサンはシラナミが育てているため、一緒のケージにいる。グーナはすでに親離れしているが、途中でシラナミの母乳が出なくなり、人工哺育だったそうだ。
白い体は“毛色の違い”
ホワイトタイガーは、ベンガルトラの白変種。野生下で稀にホワイトタイガーが生まれることがある。現在、トラ全体が絶滅の危機にさらされており個体数が少ないので、野生のホワイトタイガーを見ることはまずない。動物園など飼育下ではホワイトタイガー同士の交配がしやすく、国内でも複数の動物園が飼育している。白変種というのは、いわゆる「アルビノ」とは違う。アルビノは体毛や皮膚の色素となるメラニンを生成できない遺伝子上の欠陥を持った個体だ。
ホワイトタイガーなどの白変種は、メラニン色素に異常はなく、トラ特有の黒い縞模様は残っている。毛色が珍しいというだけで、他のトラとの違いはほとんどない。生息地や環境に合わないということで、狩の成功率が変わるかもしれないが、一般には寿命や健康状態に違いないとされる。アルビノの場合は皮膚癌のリスクが高くなるなど野生下では長期の生存が難しい。
毛色の違いということで、同胞の兄弟・姉妹が全部ホワイトタイガーで生まれるとは限らない。例えば、しろとり動物園で生まれたホワイトタイガーは、普通の毛色とホワイトタイガーの双子だ。この2頭の両親は共に普通の毛色の虎だが、両方とも母親がホワイトタイガーだったそうで、隔世遺伝と考えられる。
2頭のアムールトラも
宇都宮動物園には、アムールトラもいる。「ルイ」と「アズサ」の2頭だ。オスのルイはいかにもというトラの精悍さが際立つ。メスのアズサは小顔美人で印象もやわらかい。毛繕いのしぐさは猫そのものだ。
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トラの亜種は6種類と言われている。ベンガル、スマトラ、インドシナ、マレー、アムール(シベリア)、アモイの6亜種が遺伝子研究によって分類されている。このうちアモイトラはすでに野生下では絶滅したと考えられており、残り5亜種の合計生息数でも4000頭に満たないとされる。