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【猫がなりやすい病気】猫免疫不全ウイルス感染症編…感染猫との接触を避けるために室内飼育を

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どんな病気?

猫免疫不全ウイルス感染症は別名猫エイズともいわれる。猫白血病ウイルスと似たウイルスで、レトロウイルス科レンチウイルス属の猫免疫不全ウイルスに感染することで発症する。

このウイルスは、リンパ球やマクロファージなどの白血球に感染する。ケンカなどによる咬傷伝播なので雄猫のほうがリスクが高く、特に口腔内に病変を有する猫からの感染が多い。また、外に出る猫の感染率は15~30%で、屋内のみの猫に比べると20倍の感染リスクがある。感染しても発症するのは一部なので、ウイルスを持っていても何の症状も出ないまま一生を終える猫もいる。また、人のエイズと同じで、無症状の期間があるため5歳以上の発症が多い。

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病期としては、急性期(感染後数週間~4ヶ月)、無症候キャリア期(数ヶ月~数年持続)、持続リンパ節腫大期、エイズ関連症候群期、エイズ期の5つに分類されている。

・急性期:発熱、リンパ節腫大、白血球減少、貧血、下痢のなどの症状が見られるが猫エイズに特異的な症状ではなく、対症療法で改善するケースも多いので気づかれないことがある。
・持続性リンパ節腫大期:リンパ節腫大が見られるが、明確な症状がないことも多い。
・エイズ関連症候群期:免疫異常に伴う様々な症状が認められる。口内炎や歯肉炎が最も多いが、上部軌道炎、持続性下痢などの消化器症状、ニキビダニ、カンジダ症やクリプトコッカス症といった皮膚病変、非再生性貧血、発作などの神経症状が現れる。この時期に入ると1年以内にほとんどがエイズ期に移行する。
・エイズ期:免疫不全状態になるので余命は数ヶ月であることが多く、治療は難しい。感染しても免疫不全状態に陥る猫は一部で、無症候キャリアのまま経過することが多いが、発症してしまうと予後が悪い。

一度ウイルスに感染すると体内から排除することはできないので、根治はできない病気だと考えた方がよい。対症療法で二次感染の予防のため抗生剤投与や抗炎症作用としてステロイドの投与が行われることが多い。また、猫で多い腫瘍性疾患であるリンパ腫の発生リスクは、このウイルスにかかっていない猫に比べて5.6倍となる。

かかってしまったら?

検査はウイルス抗体の検出であり、動物病院で簡易のスナップ検査キットがあるので、血液検査で簡単に診断することができる。感度はかなり高いので陽性の場合は感染していると考えてよい。疑わしい症状があって検査を行うことが多いが、猫を飼い始めた段階で健康診断の1項目として検査を行うことをおすすめする。その場合、抗体産生まで1~2ヶ月かかるので、その期間に検査すると偽陰性になることもある。外から拾ってきた猫や、脱走してしまった猫など、感染の可能性がある場合は6~8週後に再評価する必要がある。

また、6ヶ月未満の子猫では、母猫が感染している場合、移行抗体により陽性になることがある。移行抗体は12週程度まで残存しているので、6ヶ月以上に成長したら再検査をすることが大切だ。子猫の場合が初め陽性でも陰性に変わることはよくあるので、陽性の結果が出ても希望をもって再検査してほしい。

予防法は?

基本的には感染猫と接触しなければうつらない病気なので、屋内飼育を行うことが1番の予防法である。ウイルス自体は強くなく伝播力も高くないので、猫同士の喧嘩に巻き込まれない限り感染リスクは低い。

ワクチンも存在しており、5種混合ワクチンに入ってはいるが、感染リスクがかなり高い猫以外には積極的に接種しない。理由としては、ワクチン接種により抗体検査陽性になる可能性もあり、感染猫とワクチン接種猫の鑑別が煩雑になることや、すべてのタイプのウイルスに効くわけではないことが挙げられる。一度感染してしまうと治療ができない病気であるので、かからないように予防することが最も大切である。

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《M.M》

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