動物のリアルを伝えるWebメディア

東京大学が犬の膀胱がんに対する新しい治療法を発表

イメージ
  • イメージ
  • ラパチニブの治療を受けた膀胱がんの犬に膀胱腫瘤の変化
  • ピロキシカム単独群とラパチニブ併用群における生存期間の比較

犬の膀胱がんの治療に有効な薬が、東京大学の前田真吾助教らの研究チームによって明らかになった。細胞の中の、ある特定の物質を攻撃する「分子標的薬」の1つである「ラパチニブ」という薬を使用した臨床試験の結果わかった。また、膀胱がんの犬の尿に含まれる特定のタンパク質を調べることで、この治療法の有効性を事前に予測することも可能としている。

臨床試験で半数以上ががん縮小

膀胱がんは犬の腫瘍の中でも悪性度が高く、治療を行っても半年から1年以内に死亡するのが一般的と言われている。2017年8月から2019年9月にかけて行われた臨床試験は、膀胱がんを発症した犬86頭を対象に行われた。このうち42頭には、膀胱がんの現在の標準的な薬である「ピロキシカム」が単独で投与された。そのほかの44頭には、ラパチニブを併用して治療効果を比較した。

ラパチニブを使ったケースでは、44頭中23頭(52%)でがんが縮小するとともに、1頭は「完全寛解」に至ったという。生存期間の中央値も435日と、ピロキシカム単独投与の場合の216日と比べて大幅に延びた。ラパチニブを使用しなかった症例群では、がんの縮小は42頭中4頭(9%)にとどまった。

治療効果を事前に予測することも可能

尿を調べることで、この治療法の有効性が事前に予測できることも判明した。がん細胞表面に多く現れる特定のたんぱく質レベルが高いほど、ラパチニブの治療効果が高い傾向にあることが分かったとしている。

前田助教らのチームは、「今後、より大規模な治験を実施することで、犬の膀胱がんに対する新たな治療法の誕生につながることが期待」されるとしている。

《石川徹》

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top