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【動物に会える映画 vol.14】人を幸せにしてくれる動物たちの物語 3選

『ボブという名の猫2 幸せのギフト』© 2020 A Gift From Bob Production Ltd. All Rights Reserved.
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  • 『白いトリュフの宿る森』
  • 『白いトリュフの宿る森』
  • 『白いトリュフの宿る森』

動物好きにとっては、どんな動物も自分を幸せにしてくれる存在です。でも、人生の伴侶ともいえるコンパニオンアニマルと一緒に過ごせば、もたらされる幸福感はひとしおでしょう。今回ご紹介するのは、特別な力を持った動物たちと彼らから幸せをもらった人間たちの物語3作。実話あり、ドキュメンタリーあり、童話あり。三作三様の幸せを目撃してください。

『ボブという名の猫2 幸せのギフト』

『ボブという名の猫2 幸せのギフト』© 2020 A Gift From Bob Production Ltd. All Rights Reserved.『ボブという名の猫2 幸せのギフト』© 2020 A Gift From Bob Production Ltd. All Rights Reserved.

1作目はあの作品の続編、『ボブという名の猫2 幸せのギフト』です。主人公の肩にのった猫が何とも可愛く、日本でも話題となりました。2作目が登場するのも納得です。が、実は私、いわゆる“続編もの”の大ファンではありません。どうしても、大人の事情が絡み合っているような気がしてしまって。とはいえ、今回は可愛くて賢いボブ見たさで迷わず鑑賞したところ、映画としても期待以上の面白さだったのです。

前作『ボブという名の猫 幸せのハイタッチ』で、不思議な茶トラの猫と出会ったことで、薬物依存から抜け出し、社会復帰を果たした青年ジェームズ。作り話のような物語は、驚くべきことに実話だし、登場する猫は本物のボブだし…公開後も、繰り返し鑑賞するほど、私にとってお気に入りの作品でした。ジェームズも、今作ではすでに成功者。ボブとの日々を記録した本が大ヒットして、一躍時の人となっています。

続編では、ベストセラー作家となったジェームズが、クリスマスに路上演奏をするホームレスの青年を、違反行為だと勘違いした警官から救ったことから、過去への回想が始まります。自暴自棄になる青年に、ジェームズは最も辛かった数年前のクリスマスを、どのように乗り越えたかを語り始めるのです。多くの続編が、とってつけたような後日談に終始するのに対し、本作ではボブとジェームズの揺るぎない絆を理解するための、さらなるエピソードが紹介されています。明らかになるのは、第1作目では語られなかった、路上生活者としてのさらに過酷な日々。ジェームズには、ボブと引き離されそうになった過去があったというのです。発端となったのは、ジェームズにはボブを飼う資格があるのかと市の担当者が疑問を持ったため。その“事件”をきっかけに、彼が本を出版することになる経緯も明かされていきます。

イギリスでは、愛玩動物の飼育に対して、飼い主に高い管理能力が求められています。資格なしと判断されれば、行政は飼い主から動物を取り上げる権限を与えられているのです。確かに、日本のように動物虐待やブリーダー崩壊のニュースを頻繁に耳にする国では、羨ましくもあるルール。でも、誤解や過剰な権力の乱用によって、本来求め合っている人間と動物が引き離される危険性も同時にはらんでいることにも気づかされました。このとき、ボブと離れてしまっていたら、ジェームズの社会復帰はなかったでしょう。

文字通り彼の人生を支えたボブの姿は、人と動物がいかに支え合えるか、幸せを分け合えるかを物語っています。彼らの絆を信じた周囲の人々の、粋な計らいの数々にも涙腺崩壊です。

『白いトリュフが宿る森』

『白いトリュフの宿る森』『白いトリュフの宿る森』

次にご紹介するのは、イタリアから届いたドキュメンタリー映画『白いトリュフが宿る森』です。世界で最も希少とされる白トリュフの産地、ピエモンテ州。ここには、伝統的な方法で、森にひっそり育つグルメ垂涎の高級食材を探す老人たちが暮らしています。その仕事ぶりは長年にわたり極秘事項でした。トリュフが採れる場所を家族にすら明かさないという人もいるのです。そんな彼らの元に約3年にも渡り通い続け、信頼関係を築いた写真家のマイケル・ドウェックが密着取材に成功し、完成させたのが本作。トリュフ・ハンターたちの伝統的な暮らしや、高級食材を扱いながらも情報弱者であるがゆえに得られるのがわずかな収入である現実、それでも自然と共に豊かに暮らす様子などが、静かに、そして絵画的な映像の中で展開していくのです。

そして、やはり印象的なのが、ハンターたちにとって欠かすことのできない仕事のパートナー、トリュフ犬たち。例え犬が優秀であっても、ハンターと呼吸が合わず、相性が悪ければ、良い仕事には結びつかないといいます。そんな犬たちをハンターたちは決して仕事のツールのようには扱わず、家族や同志として愛し敬っているのです。一人暮らしのとあるハンターは、質素な暮らしの中で、犬と食事を分け合っていました。その光景は、決して寂しそうではなく、この上ない幸せに満ちていました。

そんな穏やかな暮らしの中にも、高級食材を狙う人々の「欲」が入り込んできていると言います。欲深い人々がもたらす害は、犬好きには許せないものもありました。貴重な珍味の裏にある、美しいだけではない現実をも映し出しているからこそ、ハンターと犬、そして彼らのシンプルな暮らしがいっそう輝きを放っています。

『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』

『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』© 2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』© 2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

最後にご紹介するのは、『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』です。米国で1963年から愛されている童話が原作ですから、クリフォードの大ファンという方も多いことでしょう。現代に舞台を移し、でっかくて赤い子犬がニューヨークで暴れまわります。

ある日、親とはぐれてしまった真っ赤な子犬は、身なりの良い老人に拾われます。連れて行かれたのは、Mr.ブリッドウェルのアニマル・レスキュー・テント。彼はテントの持ち主なのです。そこを訪れたのが、動物が大好きな少女エミリーと、その叔父のケイシー。エミリーの母親は出張中ですが、ひょんなことから1日だけ、クリフォードと名づけた赤い子犬を家に泊めることにしました。

ところが翌朝、小さかったクリフォードは象のような巨大な姿に。アニマル・レスキュー・テントはすでに移動済み。お座りしたり、尻尾を振ったりするだけで、周囲のものを破壊する犬に頭を抱えるエミリーとケイシー。近所の人の知るところとなり、騒動に発展するのです。やがて、話題になったクリフォードの存在を知った、ベンチャー企業が、巨大な犬を我が物としようとして…。巨悪を前に、エミリーとケイシー、そして気の良い隣人たちとの闘いが始まるのです。

まず本作で印象的なのは、クリフォードのリアルな毛並みと動き。喜怒哀楽の表情や人間への愛情表現もとてもリアルなので、自然に感情移入していました。それにしても、大きくなった理由が気になる方も多いことでしょう。実は例のアニマル・レスキュー・テントにいる動物たちは皆、不思議な力を持っています。飼い主たちが望むものを現実化するためのサポートができるのです。では、クリフォードはエミリーのどんな望みを叶えようとしてくれたのでしょうか。それは作品を観てのお楽しみ。というか、それを探るのが本作を観る楽しみの一つなのです。

物語の鍵となるのが、他の犬とは違う鮮やかな赤い色、そして特大サイズというクリフォードだけの特性。そもそも、クリフォードが他者と違うことには、どんな意味があるのか。それを考えながら本作に触れることで、子供はもちろん大人の私たちも、エミリーと一緒に大切な気づきを手にできることでしょう。

それにしても、劇中に登場するアニマル・レスキュー・テントの魅力的なことと言ったら。実は、その持ち主で魔法使いのような存在の紳士Mr.ブリッドウェルは、原作者ノーマン・ブリッドウェルにちなんで名付けられました。こんな楽しくて、心暖まる、マジカルな物語を書き上げた彼も、ペンを使う魔法使いと言えるのかもしれません。

人間を幸せにしてくれる動物たちの物語に触れ、「うちだって!」と思う方も多いことでしょう。それこそ、至極の幸せ。彼らがそばにいてくれるのは、当たり前の日常ではありません。とてもとても特別な日常。映画をきっかけに、その幸せをもっともっと噛みしめてみてください。

■『ボブという名の猫2 幸せのギフト』
2022年2月25日(金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
配給:コムストック・グループ
© 2020 A Gift From Bob Production Ltd. All Rights Reserved.

■『白いトリュフの宿る森』
2022年2月18日(金) Bunkamuraル・シネマほかにて公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

■『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』
2022年1月21日(金) TOHOシネマズ日比谷 ほかにて全国ロードショー
配給:東和ピクチャーズ
© 2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

《牧口じゅん》

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