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自治体と獣医師会、ボランティア団体が連携して殺処分ゼロを目指す…人とペットの共生サポートセンター【わんにゃんドーム2022】

里親コーナー(わんにゃんドーム2022)
  • 里親コーナー(わんにゃんドーム2022)
  • 里親コーナー(わんにゃんドーム2022)
  • 名古屋市人とペットの共生サポートセンターブース(わんにゃんドーム2022)
  • 名古屋市健康福祉局が作成した「都会派猫のニューライフ」のパンフレット
  • 里親コーナー(わんにゃんドーム2022)
  • 名古屋市人とペットの共生サポートセンターブース(わんにゃんドーム2022)
  • 名古屋市人とペットの共生サポートセンターブース(わんにゃんドーム2022)

愛知県のナゴヤドームで、2月5~6日の週末に「わんにゃんドーム2022」が開催された。おやつや用品・雑貨などペット関連企業およそ100社が出展する中、名古屋市獣医師会が広いスペースを使って様々な情報発信を行っていた。

ペットとの共生に向けた取り組み

名古屋市は、2020年に「人とペットの共生推進プラン」を発表し、「人とペットの共生するまち・なごや」を目指している。災害対策や高齢犬猫のケア、高齢世帯のペット飼育など、幅広い課題について専門家による講習会などを無料で実施。飼い主を対象としたしつけ教室や、子ども向けの「いのちの教室」出張授業なども開催し、その取り組みは幅広い。

動物愛護や適正な飼育についての理解を深めてもらうことで、飼育放棄を減らしていくための取り組みだ。同時に、ボランティア団体との連携や譲渡会などを通し、保護された犬猫の譲渡数を増やす努力も続けている。

獣医師会の積極的な関与

こうした活動に実際に取り組んでいるのが、名古屋市獣医師会だ。市から委託を受け、「人とペットの共生サポートセンター」を2020年6月に設立した。このセンターが、飼い主やボランティアからの相談に対応すると共に、動物愛護に関するイベントの企画運営を行っている。

また、名古屋市の動物愛護センターから犬や猫を譲り受けた飼い主には「診療券」を配布。市内の指定動物病院では不妊去勢手術を無料で実施するとともに、ワクチン接種に対しても補助を行っている。

猫の譲渡促進に向けた連携

わんにゃんドーム2022では、同センターの展示スペースに隣接して犬と猫の里親募集コーナーも設けられていた。センター長の石川登紀子獣医師によれば、新型コロナウイルス感染症の影響で参加を断念した保護団体も一部あったそうだ。しかし、会場ではのんびりくつろぐ保護猫を優しくなでる子ども連れの家族の姿も見られた。限られた環境下ではあるが、情報発信や啓発なども含め一定の成果は期待できそうだ。

猫の譲渡会に関する各団体のチラシ配布も行われていた。それを見ると、市や区の施設や動物病院の会議室が譲渡会場として使われているようだ。この様な所にも自治体と獣医師会、民間の密接な連携が感じられた。

猫の殺処分ゼロをめざして

名古屋市では、2020年から2029年度までの10年をかけて、「収容された犬猫を殺さない、理由なき殺処分ゼロ」の実現を目指している。環境省の資料によると、2020年度の犬の殺処分数は3頭。これはすべて、収容後に病気や怪我、幼齢のために死亡したもので“積極的な” 殺処分は行われていない。

猫については、176匹が国の定める「殺処分」に分類されている。だが、このうち7割以上の127匹が、収容後に「殺処分以外の原因で死亡した」幼齢の個体とされる。つまり、屋外に放置された生まれたばかりの子猫が保護されたものの、手当の甲斐なく死んでしまったケースが多いと考えられる。

名古屋市健康福祉局が作成した「都会派猫のニューライフ」には、人と猫が快適に暮らすためのポイントがまとめられている。猫の安全と健康を守り、近隣とのトラブルも防ぐための完全室内飼育の大切さを丁寧に解説したこのパンフレットも、ブースで配布されていた。30ページとボリュームはあるが、可愛いイラストを交えて読みやすい構成になっている。猫の殺処分ゼロをめざす取り組みの一環として、猫の完全室内飼育の普及は1つの大きな柱と言えるだろう。

《石川徹》

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