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本当の殺処分ゼロに向けた「犬猫サポートプロジェクト」…名古屋市健康福祉局【インターペット愛知】

名古屋市健康福祉局ブース(インターペット愛知)
  • 名古屋市健康福祉局ブース(インターペット愛知)
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11月に初開催された「インターペット愛知」には90を超えるペット関連事業者が出展した。その中でもユニークな存在だったのが、自治体である名古屋市だろう。今年の4月に「人とペットの共生推進プラン」を発表し、犬猫の殺処分ゼロに取り組む健康福祉局がブースを構えていた。

犬の殺処分は4年前からゼロ

名古屋市は、ボランティアとの連携や譲渡会などを通して保護された犬猫の譲渡数を増やす努力を行っている。同時に、飼い主を対象としたしつけ教室や子ども向けの「いのちの教室」などの取り組みも行い、動物愛護や適正な飼育についての理解を促すことで収容される頭数の減少も図っている。平成30年度における犬の収容は219頭で、756頭だった平成20年度と比べると7割以上減少した。そうした両面からの努力の結果、平成28(2016)年度から犬の殺処分数はゼロを達成し続けている。

東京都をはじめ、犬猫の殺処分ゼロ達成を公言する自治体は増えている。一方で、愛護団体への過剰な譲渡や「殺処分」の定義に関しては疑問の声も上がっている。こうした詳細は別途検証したいと思うが、名古屋市では収容された犬は1頭も殺されておらず、その成果は評価できるだろう。例えば、てんかんの発作を持っていたり噛み癖の矯正が難しかったりと、譲渡が難しい犬も愛護センターで治療や訓練を続けながら犬の「殺処分ゼロ」を続けている。

現在の課題は猫

猫の場合、重い怪我や病気により衰弱した状態で収容されたケースを含め、昨年度に愛護センターで亡くなった個体は64匹だったそうだ。数年前までは年間数百匹が殺処分されていたと言われており、大きな前進と言える。収容数も犬と同様に過去10年間で7割以上減少した。

しかしながら、令和元年度の収容は1274匹にのぼる。このうち、野良猫から生まれ放置されたと見られる子猫が840匹と6割以上を占めるそうだ。名古屋市内では約1万7000匹の野良猫が生活している。健康なメス猫は年間10匹ほどの子猫を生むと言われており、収容数を減らすためには「野良猫の繁殖を防止することが最も重要」と健康福祉局は考えているという。

柱はTNR活動と多頭飼育崩壊の防止

今後はTNR(野良猫への不妊去勢手術)活動を新たに推進すると共に、動物愛護推進員等の育成を通して地域住民の活動や個体把握のサポートなどを進めていくとのことだ。また、多頭飼育崩壊を防止するために、一定数の犬猫を飼育する場合の届け出義務を課すことで、早期の相談支援や指導が行える体制づくりを行うとしている。

ふるさと納税寄附金を活用

現在、名古屋市が行っている犬猫の殺処分ゼロにむけた取り組みの中では、野良猫が生む子猫を減らすための不妊去勢手術に最も多くの費用がかかっている。そのほかにも譲渡ボランティアへのトイレシーツやミルクの提供、愛護センターでの飼育や治療・訓練、譲渡会の開催や新しい飼い主へのサポートなど様々な活動を行う。そうした費用の一部は、ふるさと納税による寄附金によって賄われている。

インターペット愛知に出展したのは、この「犬猫サポートプロジェクト」に関して寄附金の使い道も含め、活動内容を広く知ってもらう目的もあるそうだ。様々な社会的課題もあり、本当の殺処分ゼロは簡単に実現できるものではないというのが名古屋市の見解だ。健康福祉局では「人とペットの共生推進プラン」を通し、2029年度までの10年をかけて「収容された犬猫を殺さない、理由なき殺処分ゼロ」の実現を目指す。

人とペットの共生サポートセンター

活動の一環として、市から委託を受けた名古屋市獣医師会が「人とペットの共生サポートセンター」を今年の6月に設立した。ここでは、飼い主やボランティアからの相談に対応すると共に動物愛護に関するイベントの企画運営を行っている。また、名古屋市の動物愛護センターから犬や猫を譲り受けた飼い主には「診療券」を配布。市内の指定動物病院では不妊去勢手術を無料で実施するとともに、ワクチン接種に対しても3000円の補助を行っている。

「犬猫を生かす政策」へ

なお、名古屋市では昨年、愛護センターに設置されていた殺処分機を撤去した。空いたスペースは犬猫の収容施設増設に活用され、「殺処分を前提とした政策から犬猫を生かす政策への転換」を図っている。

《石川徹》

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