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愛犬の認知症、どうやって対応したらいい?…後編

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前編ではワンちゃんの認知症の仕組みや初期症状をお伝えしましたが、やはりどんなに対策をしていても発症してしまうケースはあります。いざ愛犬に認知症の症状が出てきたとき、自宅でできることや治療にはどういったものがあるのでしょうか? 残念ながら認知症を完治させる手段は、今のところありません。進行を遅らせ、できるだけ穏やかに生活してもらうこと。そして飼い主さんの負担を少しでも緩和すること。そのために何ができるかを、今回は具体的な症状と合わせて紹介していきます。

徘徊

人間と同様に、認知機能が著しく低下してきた場合、家の中を時間問わずうろうろする「徘徊」が見られるようになってきます。人間とは違いカギを開けて出て行ってしまうようなことはありませんが、換気のために開いていたドアや窓から出て行ってしまい、行方が分からなくなったというケースを何回か見かけました。また認知機能低下の影響で後ろに進むことができなくなる子も多いため、徘徊しながら狭い場所に入り込み抜け出せなくなってしまうこともあります。

日中見ていられる時間は好きにさせてもかまいませんが、深夜はサークルなどに入れて危険を回避しましょう。サークル内でも動き回るようであれば、クッションや座布団をサークルの内側にくくりつけることで騒音やケガの防止につながります。

旋回

徘徊に次いで多くみられるのがこの「旋回運動」です。自分を中心にぐるぐるとその場で回転し続ける動きです。この動きが見られることで異常に気が付き、来院する飼い主さんも多くいらっしゃいます。

止める方法はなく、自然に止まってくれるまで見守るしかありません。旋回運動中は、どこかにぶつかっても本人はわからず、そのまま旋回し続けようとします。徘徊より体を傷つけてしまう可能性が高いので、自宅内の曲がり角や危ない場所はカバーをつけ対策を行いましょう。赤ちゃん用のベビーガードを使用すのもよいと思います。

トイレの失敗

認知症を発症すると、これまで外でなければトイレをしなかった、きちんとトイレシートの上で用を足せていた愛犬が、所かまわず粗相してしまうことやシート外に外すようになってしまうということがあります。この場合どんなに叱りつけても愛犬はわかりませんし、叱ることで余計な不安やストレスを感じさせてしまいます。

認知症が原因でトイレがうまくできなくなった場合には、こちらが愛犬に合わせてあげましょう。お外にトイレのため連れていき、その後はオムツを履かせる。トイレシートの場所を増やす、またはサイズをひとつ上にしてあげるなど。オムツを使用するときは、オムツかぶれにも注意してあげてくださいね。

昼夜逆転/夜鳴き

犬の認知症の症状の中で飼い主さんを最も悩ませる症状。それが「昼夜逆転による夜鳴き」です。家族内の睡眠不足だけでなく、近隣からのクレームなども問題になる可能性があります。

昼夜逆転生活の解決には日中必要以上に寝かせないことがポイントになります。日光をしっかりと浴び体のサイクルを整える。散歩に連れ出し運動させる。そうった積み重ねで改善することもあります。しかし、お仕事をされている方は難しいですし、熟睡する愛犬を起こすなんて心苦しく感じる方も多いですよね。

そんな時は動物病院に相談してみてください。安定剤や睡眠補助薬を処方してくれる病院も多くあります。また飼い主さんの睡眠不足が辛い時は病院でお泊りさせてもらうのも一つの手です。筆者は動物病院で働いていますが、こういったご相談は案外多いものです。

お薬に頼ることや病院で預かってもらうことに、罪悪感を抱く必要はありません。飼い主さんが健康で穏やかに愛犬に寄り添えることも、認知症介護では非常に重要になってきます。それぞれの形で愛犬の余生をサポートしてあげましょう。

■愛犬の認知症、どうやって対応したらいい?…前編

《吉田つぐみ》

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