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【介助犬フェスタ2021】介助犬の仕事や動物介在療法の取り組みなどをオンラインライブで紹介

PR犬・レモンによる生デモンストレーション
  • PR犬・レモンによる生デモンストレーション
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  • PR犬・レモンによる生デモンストレーション
  • 介助犬フェスタ2021
  • 動物介在療法の現場で活躍するハチ
  • 動物介在療法についても紹介
  • 介助犬フェスタ2021
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日本介助犬協会が主催する「介助犬フェスタ2021」が5月22日に開催された。同協会は、手脚の不自由な方の生活を支えるパートナーとなる、「介助犬」の育成・提供と継続的なサポートを行っている。このイベントは、介助犬の認知拡大を目的として毎年5月に行われており、今年で11回目を迎えた。

新型コロナウイルスの影響で昨年に続いてオンラインでの開催となったが、各地から500人以上が参加した。また、「チャット」を通じて活発な交流が行われたのは、オンラインライブの良さだろう。

認知向上が必要な介助犬

介助犬は、手や脚の不自由な方をそれぞれのニーズに合わせてサポートする。落とした物を拾う、靴や靴下を脱がす、携帯電話を持ってくる、ドアを開閉するなどといった作業を行い、使用者の自立や社会参加を支える相棒として活躍している。

「身体障害者補助犬法」では、盲導犬や聴導犬と同様、「補助犬」として様々な施設への同伴が認められている(参考記事)。ところが、まだあまり知られていないために飲食店などでの同伴拒否を含め課題も多いという。日本介助犬協会では、このフェスタを含め、認知度向上をめざして様々な広報活動も積極的に行っている(参考記事)。

冷蔵庫のドアは「開けたら閉める」介助犬

介助犬は、「主要8動作」と呼ぶ様々な作業を習得している。

・主要8動作
1)落ちた物を拾う
2)指示した物を持ってくる
3)緊急時に電話などの連絡手段を確保する
4)ドアを開閉する
5)衣服の脱衣補助を行う
6)車いすを牽引する
7)起立・歩行を介助する
8)スイッチ類を操作する。

フェスタでは、ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーのミックス犬「レモン」がデモンストレーションに生出演した。3歳になる女の子のレモンは、社交的な性格から「レモンたん」の愛称で親しまれ、広報活動に携わる「PR犬」として活躍している。今回は、主要8動作を基にした3つの作業を見せてくれた。

床に落としたカギを拾う、靴と靴下を脱がせる、冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを取って来るという仕事をミスなくこなし、オンライン中継の「チャットボックス」にはたくさんの拍手が表示された。靴下は、ただ脱がすだけでなく咥えて運び、洗濯かごに入れる。ボトルを取り出した後は、鼻で冷蔵庫の扉を閉めることを忘れないことにも感心させられる。こうした細かいことまで要求される介助犬の仕事だが、レモンは終始尻尾を振りながら楽しそうな様子なのも印象的だった。

人間に寄り添う「ハチ」

介助犬以外の犬たちも動画で登場した。日本介助犬協会では病気の治療などに犬の力を借りる「動物介在活動」や「動物介在療法」にも取り組んでいる(参考記事)。去年の10月から、愛知県の「楓の丘こどもと女性のクリニック」(メンタルクリニック)で活躍している、ラブラドールレトリバーの「ハチ」が紹介された。

対人恐怖や人への不信感が強い子どもたちが、ハチと楽しい時間を過ごすために積極的に通院するようになるとともに、笑顔や意欲を引き出して治療にも効果が見られるという。ハンドラーの向野美紀看護師は、「緊張や不安をやわらげてくれるハチがいることで、治療に向き合えるようになる患者さんがたくさんいる」とその効果を語った。また、患者(子ども)が落ち着いた様子を見せることで、保護者も「"ホッ"と力が抜けているようだ」と、ハチが持つ幅広い力を実感しているようだ。

医療従事者として治療に参加する「モリス」

神奈川県の聖マリアンナ医科大学病院では、スタンダードプードルの「モリス」が活躍している。手術室や病室で患者に寄り添ったり、リハビリテーションのサポートを行ったりする「勤務犬」である。「動物介在療法」では、個々の患者ごとに医療従事者が作成・実施する治療計画に、モリスが大きな役割を担っている(参考記事)。

別の病院では、ドッグセラピーをきっかけに診察への恐怖を克服し、通院できるようになった子どもの例が紹介された。犬がいることで、母親から離れて診察室に入ることができるようになり、家族も笑顔になれたという。日本介助犬協会は、「人間の心にそっと寄り添ってくれる犬の存在が、治療や診察にやって来る人を元気づけ、一歩踏み出す勇気を与えてくれます」と語る。

犬たちが人間に与えてくれる力

昨年2頭目の介助犬を貸与された石川県の使用者も動画で出演した。家族からの、「1代目の介助犬タフィーが我が家に来なければ、寝たきりどころか、あなたはすでにこの世にはいないと思います」とのコメントも紹介された。「あなたが頑張る姿を励みにしている人が大勢います」という言葉からは、犬が人間に与えてくれている本当に大きな力を感じることができた。

犬たちも、適性に合った環境で幸せな「犬生」を

一方で、同協会は犬たちの命とも心を込めて向き合い、「人にも動物にもやさしく楽しい社会をめざして」いる。1頭1頭の犬が持つ個性を慎重に見極め、それぞれに最も適性のある道を見つけ、できるだけ楽しく過ごせる環境で生活できるよう細心の注意を払っている。

人間同様、犬にも個性がある。レモンのようにPR犬に向く犬もいれば、パートナー(使用者)からのお願い(指示)をこなすことに喜びを感じる介助犬たちもいる。ハチやモリスは、誰にでも「寄り添う」能力で人を支えてくれている。そうした個性に応じた「適所」を見つけることで、犬に我慢させることなく、人が必要とする支援を可能にしている。

なお、介助犬フェスタ2021ではこのほか、昨年の年間活動報告や、オリジナルグッズ、素敵な賞品があたるチャリティーラッフルの紹介なども行われた。イベントの様子は、同協会のYouTubeチャンネルにてアーカイブ配信中。ハチやモリス、レモンの仕事ぶりは、いつでも視聴することができる。

《石川徹》

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