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【犬がなりやすい病気】甲状腺機能低下症編…元気がなくなり悲しそうな顔貌に

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どんな病気?

犬の甲状腺機能低下症はクッシング症候群に次いで多い内分泌疾患。国内の有病率は0.4%と言われている。甲状腺は、甲状腺ホルモンという体の代謝を活性化するホルモンを分泌する器官である。この病気の病態は、甲状腺の濾胞が失われ全体的に萎縮することによりT4(サイロキシン)とfT4(遊離サイロキシン)が低下する。ただ、加齢、飢餓、長期ストレス、クッシングなどの全身疾患、グルココルチコイド、PB,NSAIDS、サルファ剤等の薬剤によってT4やfT4は下がりやすいので、ユーサイドシック(euthyroid sick)症候群との誤診に注意が必要。

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好発犬種はトイプードル、柴犬、ミニチュアシュナウザー、ビーグル。先天性甲状腺機能低下症(クレチン病)は非常にまれで、成犬の後天性甲状腺機能低下症が一般的だ。99%以上は原発性甲状腺機能低下症でTSH分泌不足の2次性甲状腺機能低下症は稀である。

症状としては、元気消失はほぼ全例で認められ(歩いたり起立したりすることを嫌がる)、皮膚の肥厚、上眼瞼や唇の皮下にムチンが蓄積し粘液水腫になることも多い。粘液水腫により悲しそうな顔貌になるのも特徴である。脱毛(特に尾や体幹)も見られることがあるが必発ではない。皮膚の代謝障害によりフケや脂漏等の二次感染もしばしばみられる。斜頸や顔面神経麻痺、嗜眠傾向などの神経症状も半数以上でみられる。その他、徐脈、便秘、低体温、肥満なども症状として挙げられる。血液検査上は70%で高コレステロール血症、高トリグリセリド血症がみられる。長期間無治療の症例では、軽度の貧血がみられることもある。

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また、T4の低値=甲状腺機能低下症ではないので解釈に注意が必要だ。T4、fT4、cTSH(犬甲状腺刺激ホルモン)を測定し総合的に判断する必要がある。fT4は血中の蛋白に結合していない遊離体のT4でT4よりもユーサイドシック症候群の影響を受けづらい。T4低値、fT4正常であればユーサイドシック症候群が示唆される。どちらも低値でもユーサイドシック症候群は否定できないのでfT4を過信してはいけない。cTSHに関しては、fT4低値でcTSH高値であれば甲状腺機能低下症が示唆される。ただ、甲状腺機能低下症が無治療で数週間経過するとcTSH低値となることもあるので注意が必要である。また、アフガン・ハウンドやサルーキー、イタリアン・グレイハウンドなどのサイトハウンド種は健康でもT4やfT4が低値となることがあるが治療は必要ない。

血液検査だけでは、ユーサイドシック症候群との鑑別が難しいときは、画像検査で甲状腺の萎縮が確認できれば可能性が上がる。CTが最善であるが、麻酔をかけないとできない場合もあるので、超音波検査でも診断できる。犬種問わず3ミリ未満であれば萎縮している可能性が高い。以上の検査を行っても確定診断が難しい場合もある。その際は期間を限定して試験的治療を行うこともある。

もし甲状腺機能低下症症であれば、甲状腺ホルモンを薬で補充すれば症状は顔貌の変化や神経症状は1ヶ月ほどで治まるはずだ。脱毛については4ヶ月ほどかかることもあるが、まずは1ヶ月の治療反応をみて甲状腺機能低下症症が疑わしくなければすぐにやめるべきである。

かかってしまったら?

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治療はレボチロキシンナトリウム錠剤(チラージン)を使用することが多い。薬の副作用は、過剰なホルモン作用による頻脈、パンティング、元気消失、食欲不振、体重減少がある。このような症状がみられたら投薬を一旦中止し、副作用が消失した時点では半量で再開する。治療がうまく行っている場合は、生涯に渡って内服薬でホルモン補充を継続する必要がある。これがうまく行っている場合、予後は良い病気だと言える。

予防法は?

基本的に免疫異常や遺伝性の疾患なので、予防法はない病気である。ただ、早期発見と早期治療が大切な病気であり、早期の治療が良好な治療効果につながる。上記のような症状が見られたら、早めの動物病院への受診をおすすめする。

《M.M》

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