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元気に育ったスナネコの赤ちゃん、 飼育員の奮闘と“伝えたいこと”…那須どうぶつ王国[動画]

スナネコのアミーラ(那須どうぶつ王国)
  • スナネコのアミーラ(那須どうぶつ王国)
  • 7月生まれの妹スナネコ(那須どうぶつ王国)
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  • 7月生まれの妹スナネコ(那須どうぶつ王国)

アフリカや中東の岩砂漠などに生息する、世界最小級の野生ネコ「スナネコ」。今年3月20日から、那須どうぶつ王国(栃木県)と神戸どうぶつ王国(兵庫県)で、国内の動物園では初の展示が始まった。

手探りでの飼育、マヌルネコなどの例を参考に

那須どうぶつ王国にやって来たのは、メスの「ジャミール」とオスの「シャリフ」。日本固有の野生ネコであるツシマヤマネコの保護に力を入れていくため、同じ小型のネコ科動物の飼育経験を積むことを目的として迎えたという。スナネコは、これまで日本国内での飼育例がない。海外でもほとんど実績がないため、参考資料も手に入らない状況で、一から手探りの取り組みがスタートした。

マヌルネコなどの飼育例を参考にしつつ進めてきたというが、スナネコならではの特徴はあるのだろうか。担当飼育員の橋本渚さんは「同じ小型のネコ科動物でも、元々住んでいる環境によって、体の丈夫さも性格も違います。まだはっきりとは言えないのですが、マヌルネコの方が菌などに弱いのではないかと感じています。大人のスナネコは気温・室温に注意しなければなりませんが、防疫をしっかりしていればマヌルネコよりは比較的強いのではないでしょうか」と話す。

小さな命を守るため、必死の人工哺育

ジャミールとシャリフがやって来てから約1ヶ月。4月27日にメスの赤ちゃんが誕生した。3頭誕生したが、2頭は残念ながら死産だったそうだ。母親のジャミールは初めての出産とあって、どうしていいのかわからず上手く赤ちゃんを温められない状況。赤ちゃんは低体温症を起こし危険な状態だったため、その日のうちに人工哺育へ切り替えた。

「それからは付きっきりでした。スナネコは人工哺育の例もありません。野生でも子供のうちは死亡率が高いと言われているので、1時間おきに様子を見ていました」(橋本さん)

生まれて間もない頃のアミーラ

ミルクをあげるのは2時間おき。その後、徐々に回数を減らして、1回にあげる量を増やしていった。母親からお乳をもらっていると乳首と哺乳瓶の感覚が違うため嫌がることもあるが、そのような経験がなかったため最初からよく飲んでくれたそうだ。そして、状態を見ながら市販されている子猫用の離乳食に肉のミンチなど固形の餌を混ぜて与え、1ヶ月弱で離乳食に切り替えていった。

飼育員の懸命なサポートにより無事成長した赤ちゃんは、6月より一般公開がスタート。名前は公募で「アミーラ」(アラビア語で「お姫様」)に決まった。

2度目の赤ちゃん誕生

7月9日には、アミーラに3頭の妹が誕生した。「アミーラを早々に引き離しているため、ジャミールの次の出産準備が整うのも早かったんです。体調を見つつ、今なら大丈夫かな? というタイミングでシャリフと再びお見合いしたところ、お互い求愛行動も多くそのまま妊娠に至りました」と橋本さん。

スナネコは単独動物のため、1年中一緒にいるわけではなく普段は分けて飼育しているが、ジャミールとシャリフは仲良しでくっついていることも多いそうだ。繁殖期以外に一緒にいても喧嘩をしないため、ストレスにならないようであれば一緒にしている。「繁殖期の時だけ一緒にするとお互い攻撃性が高くなることもあるので、それ以外の期間も一緒にいられるのであればその方が良いのです。単独行動の多いネコ科動物ですが、これほど相性が良いのは珍しいのでは」(橋本さん)という。

3頭生まれたうちの1頭は人工哺育となり、2頭はジャミールが育てている。娘たちの“かまって攻撃”にも負けず、しっかり面倒を見ているそうだ。「(ジャミールは)今まで元気だった時間帯に眠そうにしていることもあるので、ちょっとお疲れ気味かもしれません。人と同じように子育ては大変なのだなと感じます(笑)」と橋本さんは話す。子育ての時期が終わると親子という感覚は希薄になるため、飼育スペースを分ける予定とのこと。「時期は全くわかりませんが、子どもが近づいた時にお母さんが遠ざけたり、威嚇で返すような素振りを見せたら、もうそろそろだと思います。でも、海外の資料にも例がないので注意深く見ておく必要がありますね」(橋本さん)

安全を考え、成長に合わせたレイアウトを

人工哺育で育った妹は、現在アミーラと隣り合ったスペースで公開されている。随分と大きくなり、今は馬肉や鶏肉、げっ歯類の肉などを食べているが、まだ食べるより遊びたい時期のようで残すこともあるそう。ガラス越しに見えるアミーラに興味津々だ。一方のアミーラは、少し成長してから初めて他のスナネコ(=妹)を見たので、当初「これは一体何なの?」と戸惑いを隠せない様子だったが、最近は慣れてきたのだとか。

2頭とも、昼間は寝ていることが多いという。小さい頃は昼間もよく動いていたが、大きくなるにつれて夜行性になってきた。しかし、ずっと活動したままになってしまうと飼育員の目が届かない所で事故が起きる可能性もあるため、夜はもう少し休めるような場所に移しているのだそうだ。

展示スペース内の気温は25~26度に保たれており、成長に合わせてレイアウトも変えている。アミーラのスペースにある組木は、大きくなってから設置したもの。小さい頃は足を挟む危険もあるので置いていなかったが、最近は足腰が強くなり色々な所へ隠れたり登ったりできるようになったため用意した。天井から吊るしてあるロープで遊んだりもしている。決まった場所で用を足したり、木で爪をといだりする点は家猫と同じだという。

姉妹たちの性格はそれぞれ違うそうだ。「アミーラは大人しくちょっとぼんやりした性格。人工哺育で育った妹は、目が開いたその日から飼育員に対してシャーシャーと上げたりするくらい気が強い子です。お母さんと暮らしているうちの1頭も、警戒心が強めですね。もう1頭は、飼育員が通ると近づいてくるくらい好奇心旺盛です」(橋本さん)

飽くまでも野生動物、ペットとしては飼えない

砂漠に溶け込む柔らかな毛色、大人になっても体長39cm~57cm、体重約2~3kgという小型な体に、大きな耳と目。スナネコの容姿やしぐさは愛らしく、「砂漠の天使」とも呼ばれるのも納得できる。しかし、橋本さんによれば小型のネコ科動物の中でもかなり獰猛な方だという。展示スペースやホームページには、「スナネコは野生動物です。とても可愛らしい動物ですが、牙も鋭く気性も荒く、決してペットとして飼いたいと考えないで下さい」というメッセージが掲げられている。

「とても可愛らしいですし見た目だけだと家猫と変わらないので、飼いたいという声がどうしても出てきてしまうと思うのですが、そういった声が大きくなると密猟に繋がる可能性もあります。近年の例だとコツメカワウソなどが挙げられますね。ペットとして流行してしまったことで、絶滅危惧種になるというケースも少なくありません。このようなメッセージは、ここだけでなく色々な所に書いてあるので、看板やキャプションにも目を向けてもらえたら嬉しい。来ていただいた方には、スナネコが暮らす野生の状況について考えてほしいと思っています」

国際自然保護連合(IUCN)が作成する絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト「レッドリスト」によれば、スナネコは現在「軽度懸念(Least Concern)」とされているが、環境破壊や地球温暖化の影響で住む場所や餌が減少していることも事実だ。同園では、そういった野生動物のために人間ができることを考えてほしいとし、実際の姿を見てもらったり保全活動を行っている。

スナネコの見学方法

現在、スナネコの展示状況は下記の通り。スナネコの体調により見学できない場合や、スケジュールと見学方法に変更がある可能性もあるため、来園の前にはホームページを確認していただきたい。

・4月生まれのアミーラと7月生まれの妹1頭
展示場所:アジアの森出口側通路・展示場
公開時間:平日10:00~15:45
土日祝9:00~12:00/13:00~15:30
※見学時間はアミーラ30秒、7月生まれの妹30秒。土日祝は開演後に配布される整理券が必要。

・ジャミールと7月生まれの妹2頭
展示場所:保全の森
公開時間:平日13:00~15:45
土日祝13:00~15:30
※1m間隔を30秒で移動しながら見学。オープンから13:00までは、同じ場所で父親のシャリフを展示する。

《REANIMAL編集部》

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