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【動物に会える映画 vol.12】読書の秋に楽しむ、絵本から飛び出した映画3選

『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会
  • 『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会
  • 『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会
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  • 『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会
  • 『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会
  • 『ゴリラのアイヴァン』© 2021 Disney
  • 『ゴリラのアイヴァン』© 2021 Disney
  • 『ゴリラのアイヴァン』© 2021 Disney

家に居る時間が長くなり、今までは忙しくてできなかったことにも、目を向けられるようになったという方も多いことでしょう。秋の夜長にゆっくり読書をするのにも、外出を控えている今は、またとないチャンスかもしれません。そこで今回は、動物が登場する名作絵本に注目。絵本から飛び出した映画3作をご紹介します。

『りくはよわくない』

『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会『りくはよわくない』©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会

1作目は、TVで活躍中の坂上忍著、くっきー!(野性爆弾)の絵による絵本を原作としたアニメーション映画『りくはよわくない』。現在劇場公開中の作品です。動物バラエティ番組のMCも行う坂上さんは、無類の動物好き。14匹の犬と8匹の猫と暮らし、彼らを大切に思う姿はメディアでも紹介されていますが、坂上さんの「今」を創るきっかけとなったのが一匹の犬、りく。絵本では、愛犬りくとの出会いと別れが優しいタッチで描かれています。

4匹の犬と暮らす5歳のぼくは、ある日、生まれながらに体が弱くやせっぽちなイタリアン・グレーハウンドと出会います。先住犬たちと楽しく暮らせばきっと元気になると信じて家に連れ帰ることに。りくを迎えたのは、気の強いチワワのツトム、お調子者のミニチュア・ダックスフンドのヨースケ、穏やかなフレンチ・ブルドッグのマルちゃん、優しいパグゾウ。個性豊かなお兄ちゃん犬に囲まれて、食事の流儀を学んだり、お散歩の仕方を習ったり、ぼくの膝の上争奪戦を展開したり。一時は元気になったりくでしたが…。

映像化され動き出したりく達は、絵本らしい温かみを失っておらず、原作通りにとってもキュート。過剰な演出がなされていないせいか、アニメーション作品というよりは動く絵本といった趣です。シンプルで愛に満ちた世界で表現されているのは、動物を飼った者の多くが感じたことのある、「ああしてあげればよかった」「こうしてあげたかった」という思い。そんな後悔を抱いて生きることの切なさと、経験をより良い今に繋げようとするぼくの覚悟の重さが、強く心に響くのです。喜びも悲しみも後悔も、真剣に動物を愛すればこそ。物語の世界に浸りながら、自分と愛犬との日々を思い出していました。

『ゴリラのアイヴァン』

『ゴリラのアイヴァン』©2021 Disney『ゴリラのアイヴァン』© 2021 Disney

2作目は『ゴリラのアイヴァン』です。原作は、2013年に米国の児童文学賞ジョン・ニューベリー賞を獲得したキャサリン・アップルゲイトによる「世界一幸せなゴリラ、イバン」。フィクションですが実話を基に描かれています。アンジェリーナ・ジョリーが映画化を熱望し、製作に参加していることでも話題になりました。

主人公は、郊外にあるショッピングモールのサーカス小屋の檻に住む約180kgのシルバーバック・ゴリラ、アイヴァン。獰猛なゴリラを演じる看板スターです。隣人であるゾウのステラや野良犬のボブ、世話係たちと仲良く、それなりに幸せに暮らしていました。ある日、野生のゾウの赤ちゃん、ルビーがやってきて、失われていた故郷のジャングルを思い出します。そして今の自分に疑問を持ち始め、その気持ちを表すかのように絵を描き始めるのです。モデルとなったゴリラのアイヴァンは、1962年に中央アフリカで生まれ、密猟者から助け出されてアメリカへやって来ました。ワシントン州タコマのショッピングモールで27年間暮らしていましたが、ある日、絵の才能を開花させ注目を集めることとなったのです。

サーカス暮らしの中で失ったものを取り戻そうとするアイヴァンの姿は、私たちに多くのことを気づかせてくれます。友情の尊さ、約束を守ることの大切さ、そして、自分がありのままでいられる場所を見つけることの豊かさ。特に、芸をしなくても、役に立たなくても認めてもらえる場所へと一歩を踏み出そうとする姿は、命ある者の尊厳についてもう一度考える良いきっかけをくれるのです。

物語とともに観る者を魅了するのが、最新のCG技術で描かれているとてもリアルな動物たち。まるで、動物が本当に話をしているよう! 実際には聞くことのできない彼らの本音がアイヴァンたちを通して伝えられているような、そんな不思議な気持ちになりました。アイヴァンはサム・ロックウェル、ゾウのステラはアンジェリーナ・ジョリーが声で熱演。さらにダニー・デヴィート、ヘレン・ミレン、チャカ・カーンらも声優として出演。動物たちの“演技”にも注目です。

『あらしのよるに』

『あらしのよるに』©2005『あらしのよるに』製作委員会『あらしのよるに』©2005『あらしのよるに』製作委員会

最後は、『あらしのよるに』。木村裕一によるシリーズ全7巻が大人気の、同名絵本が原作です。初めて物語に触れたとき、あまりの素晴らしさに心が動かされました。嵐の夜に、避難した山小屋で出会ったオオカミのカブとヤギのメイ。真っ暗闇の中、互いの正体がわからないまま、二匹は心を通わせるのですが…。捕食者と被食者の友情は果たして成立するのかというテーマを軸に、友情を育もうとする二匹に立ちはだかる様々な困難が描かれていきます。

相手の素性など関係なく、ただ仲良くしたいだけの二人は、集団の中では異端児。確かに異色の組み合わせですが、オオカミとヤギの友情を成立するはずがないと決めつけてかかるコミュニティの姿は、国籍や宗教、人種やジェンダーで人を判断することがまだまだ多い人間社会の縮図のよう。闇夜を、目をくらませるものではなく、偏見をなくす「魔法」として描いているのもユニークで皮肉が効いているのです。偏見のない視野を育むには、訓練が必要。この作品は、見るべきものだけを見る方法を分かりやすく示してくれる、子供そして大人のためのバイブルと言えるでしょう。

本作を観ていたら、動画配信サイトでよく見かける、小鳥と猫、猿と犬、犬と猫など、“犬猿の仲”と言われる動物たちが寄り添う姿を思い出しました。決して、寓話の中だけの出来事ではないはずなのです。

学びの多い映画3本。秋の夜長に、原作絵本と一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。

■『りくはよわくない』
全国公開中
配給:東京テアトル/チャンスイン
©坂上忍/くっきー!/インプレス/MMDGP/リクはよわくない製作委員会

■『ゴリラのアイヴァン』
ディズニープラスで独占配信中
© 2021 Disney

■『あらしのよるに』
Blu-ray&DVD発売中
発売元:セディックインターナショナル
販売元:東宝
©2005『あらしのよるに』製作委員会

《牧口じゅん》

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