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困り顔でマイペースなラブラドールの「アイス」、実は仕事のできる男の子

ラブラドール・レトリーバーの「アイス」
  • ラブラドール・レトリーバーの「アイス」
  • 「困り顔」がチャームポイントのアイスくん
  • お散歩の時間になると変わる表情
  • ブラッシングされるのが大好きなアイスくん
  • お散歩中の“ふたり”
  • アイスくんと江口さんは「合同訓練」を経てパートナーに
  • 「テイク携帯」で、どこに置いていてもスマホを探して持ってくるアイスくん
  • 普段は「基本的に寝ています」というのんびり屋さん

大切な家族の一員として、生活を共にする動物たち。このコーナーでは、一般家庭で生活する犬や猫たちを紹介しています。今回は、ラブラドール・レトリーバーの「アイス」くんです。岡山県に暮らす江口雄司さんにお話を聞きました。

毎日のルーティンがお楽しみ

----:穏やかな雰囲気が伝わってきます。アイスくん、ラブラドールの中でも静かな性格ですか?

江口雄司さん(以下、敬称略):そうですね。基本的には「おっとり」です。どっしり構えている、と言えるかもしれないですね。

----:落ち着いた性格なんですね。

江口:でも、チャームポイントは、この「困り顔」です。何かに困っているわけではありませんが(笑)  それから、すごく “ぶちゃいく”な寝顔を見せることもあります。寝言も言いますし、ちょっとした仕草も可愛いんですよ。

「困り顔」がチャームポイントのアイスくん「困り顔」がチャームポイントのアイスくん

----:癒し系キャラですね?

江口:いつも本当に癒されていますね。自然と笑顔にさせてくれます。

----:普段の困り顔から、「楽しい!」という表情に変わることもありますか?

江口:夕方になると目が輝きますね。散歩に出かけて、晩ご飯を食べて、家族でのんびりしながらブラッシング、という毎日のルーティンがあります。それが一番の楽しみのようで、時間が近づくと表情が変わります。それまでは、いつもの困り顔ですが、「そろそろ時間だよ」と言いたげに目がパッチリ開きます。

お散歩の時間になると変わる表情お散歩の時間になると変わる表情

----:ラブラドールは毛が短いですが、ブラッシングは毎日なのですね。

江口:はい。できるだけ清潔にしておきたいので毎日やります。アイス自身も、ブラッシングされるのが気持ちいいようです。うっとり、まったりしています。そのほか、歯磨きや耳の中のチェックも妻と協力して毎日やっています。

ブラッシングされるのが大好きなアイスくんブラッシングされるのが大好きなアイスくん

物を拾う特技の秘密

----:おっとりしたアイスくんが、さらにうっとり、まったりなんですね(笑) そんなアイスくんですが、特技はありますか?

江口:私には、握力が弱い障害があるんです。物を落としてしまうことがありますが、車いすに座ったまま拾うことはできません。そんな時はアイスがくわえて渡してくれるので、とても助かっています。私が何かを「ポトッ」と落とすと、条件反射的に目で聞いてきます。「あ、落ちた。拾う?」という感じです。

----:すごいですね。そんなアイスくんとはどこで出会ったのですか?

江口:実は、アイスは介助犬なんです。日本介助犬協会さんの訓練センター「シンシアの丘」で出会いました。

お散歩中の“ふたり”お散歩中の“ふたり”

マイペースなアイスと築いた独自の関係性

----:のんびりした介助犬、というのはちょっとイメージと違いました。その頃から落ち着いた性格だったのですか?

江口:今と同じ、ちょっと困ったような表情が印象的でした。その雰囲気にインパクトがありましたね。気になってしまう存在だったのをよく覚えています。

----:介助犬としては、おっとりしたアイスくんに不安はありませんでしたか?

江口:迷いはありませんでした。妻も一緒に会ったのですが、この子にひかれるものを感じたようで、「私はアイスだと思う」と言っていました。意見が一致してアイスに来てもらうことになってよかったなぁと思いました。

----:すぐにお家に迎えられたわけですか?

江口:いえ、訓練センターに泊まって、約2週間アイスと一緒に合同訓練を受けました。

----:おっとりした雰囲気にひかれて決めたわけですが、実際に介助犬としての合同訓練を受けられて、印象は変わりましたか?

江口:想像以上にマイペースでおっとりしてるな、と思いました(笑)  でも、それが私には合っていると感じました。周りの(日本介助犬協会の)皆さんも、そう感じておられたと思います。

アイスくんと江口さんは「合同訓練」を経てパートナーにアイスくんと江口さんは「合同訓練」を経てパートナーに

----:でも、想像以上におっとりしたアイスくんに困ったことはありませんでしたか?

江口:大きな問題はありませんでした。マイペースな性格なので、訓練を始めた直後は私が(うまく連携を取れなくて)焦ってしまうことはありました。指示を出したらすぐに動いてくれるものと思っていましたが、微妙な間があいてしまったり。でも、次第に「こういうやり方だよね」という私たちの関係ができあがっていきました。

普段はお散歩とひなたぼっこ

----:落とした物を拾ってくれることのほかに、アイスくんがするお仕事はどんなものがありますか?

江口:緊急時には助けてもらいます。私は車いすから落ちてしまうと、自分だけでは戻ることができません。家の中で転倒してしまった時は、誰かを呼ぶ必要があります。「テイク携帯」という指示を出すと、アイスは家じゅうを探してスマホを持ってきてくれます。実際にそういった事態がありましたが、緊急時にはなくてはならない存在です。「アイスがいてくれて本当に良かったな」と思える出来事でした。

「テイク携帯」で、どこに置いていてもスマホを探して持ってくるアイスくん「テイク携帯」で、どこに置いていてもスマホを探して持ってくるアイスくん

----:なくてはならない存在ですね。でも、常にお仕事があるわけではないと思います。それ以外の時間はどうしているのですか?

江口:基本的に寝ています(笑)  家の中に彼のお気に入りの場所が何か所かあります。時間ごとに日当たりのいい場所に移動して、寝ています。

----:やっぱり、のんびりなんですね(笑)  そのほかは何をして過ごしているのですか?

江口:朝は妻と散歩に行きます。田舎なので家の周りには散歩する場所がたくさんあります。1時間以上帰ってこない時もありますね。夕方は私が散歩に行きます。

普段は「基本的に寝ています」というのんびり屋さん普段は「基本的に寝ています」というのんびり屋さん

仕事も遊びも一緒に

----:お出かけの時も一緒ですね?

江口:妻も私も季節ごとの良さを楽しむのが好きなので、春には桜を見にドライブに出かけます。秋になれば、紅葉の綺麗な場所に行ったりします。岡山県では井原(いばら)市が桜で有名なので、アイスと妻の“3にん”でお花見に行きます。

----:お仕事も一緒ですか?

江口:はい。基本は在宅勤務ですが、月に数回、会議や打ち合わせに出社します。その時はアイスと一緒です。最初は少し不安でしたが、職場の皆さんが想像以上に受け入れてくれています。

----:介助犬として江口さんの生活をサポートしてくれるとともに、何よりも大切な家族の一員であるアイスくん。一言声を掛けるとしたら何と言いますか?

江口:シンプルに、「我が家に来てくれてありがとう!」です。

お花見の季節は、もうすぐお花見の季節は、もうすぐ

介助犬も含め「使役犬」と聞くと、“人間のために我慢して仕事をする”といったイメージがあるかもしれません。でも、介助犬だけでなく盲導犬や麻薬探知犬などに実際に会うと、彼ら彼女らの生き生きとした様子を見ることができます。人間がイメージする「仕事」というよりも、パートナーと一緒に楽しむゲームをしている印象です。

今回は、介助犬の日常を垣間見る良い機会でもありました。マイペースな性格のアイスくんは、ずっと江口さんに寄り添いながらお昼寝をしていました。その姿は、一般の家庭犬と何ら変わるところはありません。

江口さんご夫妻は、「夜、ブラッシングしながら家族“3にん”でいる時間がすごく大切」だと言います。介助犬であると同時に、アイスが家族の一員であることがよく伝わってきました。優しい雰囲気のご家族に、ほっこりさせられる温かいインタビューでした。

江口さんのカーライフ:
岡山県在住の江口さんは、毎日1本は見るという大の映画ファン。もう1つの趣味はドライブで、目的に合わせた2台のクルマをご夫婦で使い分けているそうです。遠出を楽しむ時は、トヨタ『エスティマ』でドライブに。近所への買い物などでは、小回りの利くホンダ『ライフ』に乗るとのことです。もちろんどちらのクルマにも、アイスくんのスペースが後席に用意されています。

「お出かけするよ~」と言っていそうなアイスくん「お出かけするよ~」と言っていそうなアイスくん
《石川徹》

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