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【トリマーというお仕事 vol.3】目指すは犬のバリアフリー化、動物との生活を当たり前に…インタビュー

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一頭一頭の個性に合わせ、できるだけ負担のかからないお手入れを目指しているというトリマーの加藤利咲さん。最終回では、そんな彼女が目指す夢についてご紹介します。「犬のバリアフリー」、愛犬家の誰もが常々望んでいることではないでしょうか? そんな日常が、少しでも早く訪れますように!

犬と一緒に入れるフレンチレストランを開店予定

----:これまで加藤さんが、看護師さんやトリマーさんとして動物と関わってきた経験を色々伺いました。キャリアを通して、一番学んだ事は何だと思いますか?

加藤利咲さん(以下敬称略):言葉でしゃべらないだけで、犬たちもそれぞれ言いたい事があるのは人間と同じだと感じます。今さらという感じもしますが、それが一番です。あと、余談になりますが、(人間とは違い)犬って無駄な争いはしないんです。遊びの一環で、時々ちょっかいを出したり、それでもめたりという事はありますが、まったく不要な争いをすることはないんです。そういう事を考えると、私たち人間も逆に犬たちから学ぶべきものはあるのかな…。

----:特に、昨今の社会状況を考えると、そう感じますね(苦笑)。そんな学ぶべきトコロの多い動物たちを対象に、これからやりたいことは何ですか?

加藤: 犬と一緒に入れるフレンチレストランです。そこでは、ワンちゃんたちもそうですが、働く人間も、よりハッピーになれる環境をつくりたいと思っています。働く人間が幸せでないと、犬たちを幸せにすることはできないですよね。(フリーランスになって約3年間、色々なトリミングサロンに)コンサルタントとしてアドバイスをしてきましたが、やはりその形では限界を感じました。それで、もう一度、自分の考え方を実践・進化させていく場を持ちたいと思い、お店の開店準備を進めています。

----:でも、どうしてフレンチなんですか?

加藤:きっかけは、私の結婚式でした。ワンちゃんたちが来られる会場を選んだんですが、披露宴会場に犬を入れるのはNGだったので、長い披露宴の間は控室で待たせることになります。それから、親族から反対の声もあったので、結局あきらめたんです。その時、色々な方々と話す中で、「愛犬家とそうでない人たちの間にあるギャップが、まだまだ大きいんだ」という事を改めて感じました。愛犬家以外にとって、犬は「汚い、臭い、うるさい」という見方が依然あるな、と。残念ながら今のところ、(犬は)結婚式ではリングドッグなど「かざり」の域を出ず、本当の意味で「一緒の結婚式」はできないなと感じました。

他店との差別化など事業面での理由も、もちろんあります。でも、フレンチレストランというフォーマルな場所で、おいしいものを「ちゃんと」犬と一緒に楽しめるというモデルケースをつくる事で、世の中のそういった認識を少しずつでも変えていきたいと思ったんです。また、そこで得られたノウハウを広めれば、同じような場が増える可能性もあります。それから、テーブルで一緒に食事をするために必要なトレーニングを改めて考えるなど、飼い主さんの意識が高まったり、愛犬への向き合い方が変わったりすれば、人間と犬との共生がさらにスムーズになるのではないかと思います。本当の意味で、動物と一緒に生活するということを「当たり前」にしたいんです。

犬を理解し、愛犬家以外の人にも受け入れられる仕組み作りを

----:そういった活動を通して、その先にはどんなことを夢見ていますか?

加藤:一言で言えば、犬のバリアフリー化です。犬と一緒に行けるお店を増やしたいのはもちろんですが、例えばクレートに入っていなくても歩いて電車に乗れたり、飛行機のキャビンに普通に乗れたりすれば、どこへも本当に家族として一緒に行けるようになりますよね。

----:確かに、各方面での「多様化(=ダイバーシティ)」が世界的に叫ばれている今の世の中。犬が社会で受け入れられる体制や意識の面でも日本は欧米諸国に追いついていきたいですよね。では最後に、グルーマーさんとして、また一人の愛犬家として、飼い主さんにひと言お願いします。

加藤:私も含めてですが、犬と暮らしている人はもちろん飼っていない人も、みんなで犬のことをもっと理解していけたら良いですよね。犬のバリアフリー化には、愛犬家以外の方々の理解が絶対に必要なので、そうした方々に受け入れられるような仕組み作りもがんばります。

飼主さんとの関係においては、大事にする、とか、愛情を注ぐ、といったことが「一方的」にならず、犬のことを充分に理解するとともに、飼い主側も愛犬に理解してもらう努力が大切だと思います。人間関係と同じですね。愛情を注いでも、それが相手にとっては迷惑な場合がありますし(笑)。

本来どんな行動をとる生き物なのか、そして「このコ」には何が心地いいのか。愛犬が伝えている「意思」を理解したうえで、気持ちの良い空間をつくってあげるのが大切だと思います。それが、飼い主さんにとっても、周りの方々にとっても心地いい空間をつくることにもつながるはずです。

----:トリミングも、相手が受け入れやすい形を探りながら自発的に動いてくれるような状況になれば、お互いのストレスが減りますね。

加藤:そうですね。率直に言って、トリミングは人間のエゴの部分が多いと思うんです。特に、「完全に形を整える」、といった部分は犬にとっては全くメリットのない事なので。極端に言えば、トイプードルを丸刈りにしても本人(犬自身)には何の問題も無いと思うし(笑)。もちろん、夏の紫外線や冬の寒さ・乾燥から肌を守る被毛は残す必要がありますけど。

ただ、人間が作り上げた犬種であり、被毛のお手入れが必要なのは確かです。であれば、「こら!じっとしなさい!」とやるよりは、「私もあなたの良いようにしてあげるから、ちょっとだけ協力して」、というスタンスでやれたらな、と私は思います。


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3回にわたってご紹介した加藤トリマーの犬との付き合い方。「決めつけ」をせず、一頭一頭にしっかりと向き合って、お互いを理解する努力を惜しまないことがストレスの少ない関係性を築く鍵、というのがポイントだと思います。看護師やトリマー、そして愛犬家として、たくさんの個性ある犬たちとじっくり付き合ってきた彼女の経験から、私たち飼い主も、よりHappyな愛犬との日常を送るためのヒントをもらえたのではないでしょうか。

《石川徹》

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