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犬の「混合ワクチン」は年に1回で大丈夫? vol.1…目的と免疫持続期間について

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人間のインフルエンザワクチンの有効な期間が一般的には3ヶ月ほどと言われており、ひと冬に2回打つべきだと言う人もいるそうだ。では、犬や猫の「混合ワクチン」は1年で充分なのか? 今回は、まず、犬についてエビデンス(科学的根拠)に基づいた考え方をご紹介する。

犬の飼い主には、年に1度、愛犬に狂犬病の予防接種を受けさせることが法律で義務付けられている。このほかに、多くの飼い主がその他の感染症予防を目的に「混合ワクチン」を接種させているだろう。この混合ワクチンも、1年に1回というケースが多いように思われる。

ワクチン接種の重要性

ワクチン接種は、愛犬を病気から守るのが一番の目的であるのは言うまでもない。しかし同時に、感染症の流行が起きる可能性を最小限に抑える、いわゆる「集団免疫」を通して、他の犬を守るためにも非常に大切である。したがって、狂犬病予防接種のような法律の定めがなくても、定期的な接種が求められる。

ワクチンの種類:世界のガイドライン

世界小動物獣医師会の「ワクチネーションガイドライングループ(VGG)」は、科学的エビデンスに基づいて世界的に適用できる犬と猫用のワクチン接種に関するガイドラインを作成している。獣医学の進歩に伴い、必要に応じた改訂が随時行われており、現在は2015年版が最新だ。このガイドラインでは、ワクチンの種類を大きく3つに分類している。

1.コアワクチン:世界中で感染が確認されている、致死性の高い感染症を引き起こすウイルスから守るもので、国や地域の特性に関わらず、世界中すべての犬と猫に接種すべきとされている。犬の場合は、以下のウイルスによる感染症を予防するものがコアワクチンに分類される:

・犬ジステンパーウイルス:呼吸器や消化器系などに重篤な症状をもたらし、回復しても失明や神経症状など深刻な後遺症が残る場合がある
・犬アデノウイルス:重い呼吸器疾患を引き起こす
・犬パルボウイルス(2型):激しい下痢や嘔吐の原因となる

2.ノンコアワクチン:地域の環境や飼い主のライフスタイルによって、リスクが生じる可能性がある感染症に対応するワクチンで、以下は日本で一般的に使用されるワクチンの例:
・パラインフルエンザウイルス:咳やくしゃみ、鼻水などの呼吸器症状や発熱など、風邪症状の原因となる
・ボルデテラ(細菌):呼吸器疾患などを引き起こす
・レプトスピラ(細菌):主にネズミの尿から土などを介して感染する。多くの場合は無症状だが、重症化すると発熱、嘔吐、粘膜からの出血や黄疸などの症状が見られる

3.非推奨:使用を正当化するための科学的なエビデンスが不充分なもの

ここでは主に、世界的に全ての犬に接種が必要とされているコアワクチンについて解説する。

子犬のワクチン接種

子犬を家庭に迎えると、数回の混合ワクチン接種を受けることが一般的だろう。通常は、その前にブリーダーまたはペットショップで最初の接種を受けている。

子犬は、母親から受け継いだ抗体(移行抗体)により生後数週間は守られている。この移行抗体が機能している間は、仮に接種を行ってもワクチンによる効果が得られない。家庭に迎えられる前に最初の接種が行われるのは、多くの場合、生後8~12週で移行抗体のレベルが低下すると同時に、ワクチン接種の効果が期待できるようになるからである。

ただし、この移行抗体の継続期間は同腹子(同じ母親から同時に生まれたきょうだい)間でも大きなばらつきがあると言われている。そのため、6~8週で初回のワクチン接種を行った後、16週またはそれ以降までに2~4週間隔で接種を行うことで充分な免疫を確保することを、VGGは推奨している。

晴れて充分な免疫を得て「お散歩デビュー」を果たした後は、一般的に1年に1度、混合ワクチン接種を行うケースが多いだろう。

その後のワクチン接種の頻度は?

すべてのワクチンには、実験で得られたエビデンスに基づいて免疫持続期間(DOI)が明らかにされている。つまり、ワクチンを接種した場合、どの位の期間、対応するウイルスや病原菌への感染や病気の発症を防ぐことができるかの「最低値」が科学的に分かっている。

世界小動物獣医師会のガイドラインは、ペット用コアワクチンのDOIのほとんどを「最短3年」としている。ところが日本では1年ごとの接種が行われるケースが多い。海外でも、そのような例は少なくないそうだ。この原因を、同獣医師会は製薬会社が説明書の更新を行っていないか、法的規制がある場合は当局がその変更を行っていないからではないかとしている。

念のため日本で販売されているコアワクチンを含む混合ワクチンの添付文書または説明文章をいくつか参照したところ、子犬への接種方法に関しては「用法及び容量」に記載があったが、成犬への接種頻度に関する特記は見られなかった。このDOIは、犬の健康と安全の観点から非常に重要だと思われるため、世界小動物獣医師会によるガイドラインの日本語版から、該当する文章を以下に抜粋する。

「ほとんどのコンパニオンアニマルのコアワクチンに関しては比較的最近まで、最短のDOI が1年間とされていたため、年1回の再接種が推奨されていた。近年は、同じ製剤の多くで最短のDOIが3年(場合によっては4年)で承認されている。」

「しかし、同じ製剤の最短のDOIが今でも1年のままの国は少なくない。これは単に製造業者が製剤添付文書の推奨事項を変更していないか、または国の規制当局が変更を許可していないことによる。」

「特に、コアワクチンのDOIを3年とした承認は最小の値であり、ほとんどのコアワクチンでは真のDOIは接種された大多数の動物で、終生とまでは言えないにせよ、はるかに長い可能性が高いことを忘れてはならない。したがって、ガイドラインでは3年毎またはそれ以下の頻度でのワクチン再接種が推奨されているにもかかわらず、ある国で入手可能なすべての製剤について承認されているDOIが1年のままである事例がなおも認められる。」

次回は、混合ワクチンによる副作用のリスクと、安全な接種についてご紹介する。

《石川徹》

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