動物のリアルを伝えるWebメディア

イギリスの動物愛護事情 vol.2…不幸な動物たちを減らすための活動と日本が学ぶべきこと

イメージ
  • イメージ
  • イメージ
  • イメージ
  • イメージ

前回紹介したように、イギリスでは4月に悪質なペット繁殖・販売業者撲滅のための「ルーシー法」が施行された。その一方で、違法に動物を売る業者の手口もより巧妙になる懸念が指摘されている。

今回は、そうした状況を防止するために行われている活動を紹介する。

飼い主が「ダークサイド」を認識することの重要性

「ゲット・ユア・ペット・セーフリー(= ペットを安全に迎えよう)」キャンペーンのウェブサイトには、適切なブリーダーを見分けるためのチェックリストも提供されている。販売者(ブリーダー)に電話やメールで問い合わせをする前、問い合わせる際、実際に訪問する時と、3つの段階ごとに分かりやすく説明されている。

子犬・子猫が生後8週齢を過ぎているか、健康管理に関する情報が(必要書類もあわせて)全て得られるか、問い合わせの際に購入のプレッシャーをかけないか、予約金を要求しないかなど、合計14のポイントが挙げられている。

日本の場合、大手ペットショップや規模の比較的大きいブリーダーによる販売が一般的なため、前回紹介した様なイギリスで問題となっている手口はあまりないだろう。しかし、同国政府が警告しているように、「飼い主は、(繁殖業界の裏で)何が実際に行われているのかを知り、常に『その子』(=子犬/子猫)の後ろに誰がいるのか」を意識することは、日本の飼い主にとっても重要だと感じる。

イギリスで活躍する動物愛護組織「RSPCA」

このキャンペーンにも参画しているのが、「王立動物虐待防止協会(The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」という非営利団体の動物愛護団体。数人の有志によって1824年に「SPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」として設立され、1840年には当時のビクトリア女王より「Royal(王立)」の称号が許されて「RSPCA」となった組織だ。実に200年近い歴史・伝統と実績がある。

基本的に寄付によって運営されているが、QUEENのギタリストであるブライアン・メイなどの著名人も運営メンバーに名を連ねており、162拠点に500名近くのスタッフが勤務する大きな団体である。動物虐待ダイヤルが24時間稼働しており、イングランドとウェールズでは30秒に1本の割合で電話が鳴る計算だそうだ。

そうした情報を基に年間13万件以上の調査を行い、2018年には10万頭以上の動物を保護・救出。そのうち4万頭以上の動物に新しい里親を見つけるなど、精力的に活動している。

さらに4つの動物病院、5か所の診療所と17の保護施設を直接運営するとともに、全国に散らばる拠点も39の診療所、3台の医療車両と42か所の保護施設を有している。なお同協会はペットだけでなく、実験動物、家畜、野生動物の福祉向上のための活動にも従事しているそうだ。

日本における動物愛護の今後

日本でも昨年「動物の愛護及び管理に関する法律」(通称、動物愛護法)が改正され、今年の6月から段階的に施行される。先行している印象の強いイギリスでも、まだ課題は多いようだが、日本の動物愛護は今後、どのように「進歩」していくだろう。今後も、REANIMALでは国内外の情報を随時紹介していきたい。

ごく一部ではあるが、今回2回にわたってイギリスにおける動物愛護の取り組みを紹介した。イギリスと日本では様々な事情が異なるが、飼い主が賢く動物を迎える意識を持つことが、劣悪な環境で繁殖させられる動物たちを救うことにつながる点は同じだろう。

日本の場合、イギリスのように偽の家族を装う明らかな違法行為はないだろう。しかしながら、「ブリーダー」と称する業者の中には、接客スペースやウェブサイトなど目につく所には投資を惜しまない一方で、犬舎の中を公開しようとしない業者や遺伝的疾患のリスクを承知しながら繁殖を続ける業者も存在する。

繰り返しになるが、「ゲット・ユア・ペット・セーフリー(= ペットを安全に迎えよう)」キャンペーンでイギリス政府が警告しているように、私たちは繁殖業界の裏で何が実際に行われているのかを知ることが大切ではないだろうか。そうした流れを作っていくことが、不幸な動物たちを減らすために私たちに課せられた責任でもあると考える。

イメージイメージ

《石川徹》

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top