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イギリスの動物愛護事情 vol.5…犬の福祉向上に向けた署名活動、断耳された犬の輸入禁止

きれいに立たないケース
  • きれいに立たないケース
  • 断耳後は、長期間添え木を当てる必要がある
  • 「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ
  • 耳を切断する処置には大きな苦痛が伴うケースも
  • 「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ
  • 「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ
  • 「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ
  • 「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ

REANIMALでは日本の動物愛護法改正に伴う動きについてお伝えするととともに、海外の動物愛護事情についてもイギリス、ヨーロッパやアメリカなどの例を紹介している。今回はその海外から、イギリスで始まった犬の断耳に関する署名活動についてまとめた。

「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ

耳を切断し形状を変える断耳

もともと垂れ耳で生まれた犬の耳を短く切断し、立ち上がるように成形する行為を「断耳(だんじ)」と呼ぶ。ドーベルマンピンシャーやボクサーなどは比較的よく知られていると思うが、そのほかにもボストンテリアやシュナウザーなどにも行われる。また、「ピットブルタイプ」の犬種も、見た目を精悍に見せる目的で断耳が行われることが多い。

人間本意ではあるが、過去には理由があった手術

歴史的には、狩猟を行う際に獲物にかまれたり木の枝などに当たったりして負うけがを防止する目的で行われていたと言われている。また闘犬の場合も、かまれやすい耳を短くするために断耳が行われていた。番犬の場合は、侵入者に掴まれないように短くしたとの説もある。

今日では単なる美容整形

狩猟犬や闘犬、番犬として生活していた時代には安全性や作業効率の向上が目的だった断耳だが、闘犬が禁止され使役犬も大幅に減少した現代社会においては、そのほとんどが見た目や「犬種標準」によるもので必然性は消滅している。犬のコミュニケーション研究でも有名な、ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)名誉教授で心理学者のスタンリー・コレン博士は、以下のように語っている。

「現在では、そのような行為は『医学的には不必要な手術』に分類されています。なぜなら、その主な目的は美容だからです。」

犬に苦痛をもたらす断耳

断耳手術後は傷の回復に数週間を要するだけでなく、感染症や傷跡がきれいに修復されないなどのリスクも排除できないそうだ。

また、未熟な獣医師などによる処置では、思う様な形状にならないケースもあるという。

「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ

したがってドイツや北欧など、欧州では犬に苦痛をもたらすだけだとして、法律で禁止している国もある。

またイギリスでは120年以上も前の1899年に禁止され、現在、イングランドとウェールズの動物福祉法(Animal Welfare Act)でも禁止されている。

法の網をくぐる「逆輸入」

ところが、法規制のないヨーロッパの国やアメリカに子犬を輸出し、断耳を行った後にイギリスに輸入する業者や、地下に潜って不適切な手術を行うケースが増えているそうだ。「王立動物虐待防止協会(The Royal Society for the Prevention of Cruelty to Animals: RSPCA)」によると、2015年から2019年までの5年間で同協会が受けた断耳(手術行為または手術を受けた犬)に関する通報はおよそ2.5倍に増加。合計では、178件にのぼったとのことである。

「美容」効果に疑問のあるケースも多いようだ

セレブなイメージ

原因の1つとして、断耳が違法でない国々の著名人がSNS等で断耳した愛犬の写真を投稿したり、「ブル」系の犬種が広告に多く使用されたりする傾向をRSPCAは挙げている。こうした耳の形状が、一般的かつ「セレブ」なもの、ととらえられている可能性があると懸念を表明している。

輸入を禁止すべきとの署名運動

これに対してイギリスでは、断耳行為だけでなく断耳された犬の輸入も法律で禁止すべきとする署名運動が始まった。インターネット上では、9/29現在で13000を超える署名が集まっている。10000件以上の署名が集まった場合、英国政府は何らかの対応をする決まりとなっており、今後の反応に注目が集まっている。

この署名活動に対するサポートを公式に表明したRSPCAは、以下の声明を出している。「耳を取り除いたり手術で形を変えたりする断耳は、苦痛を伴う不必要な行為です。犬にはまったくメリットがないだけでなく、健康や行動、そして福祉に対しては有害にさえなり得ます。」

断耳後は、長期間添え木を当てる必要がある

なお日本では現在、断耳および尻尾を短く切る断尾を制限する法律は「動物の愛護及び管理に関する法律」を含めて存在しない。

写真提供:RSPCA(手術直後以外の写真は、断耳後の成形が上手くいかなかった例)

《石川徹》

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