新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に広がったことで、免疫や抗体、ワクチンといった感染症の予防に注目が集まっている。犬や猫にもそれぞれに特有の感染症が存在し、その中には感染力が非常に強く、発症した場合の致死率も高い病気がある。ペットの健康と命を守るために、予防は大切だ。一方で、ワクチンにおける副反応のリスクは避けられない。重篤な場合は、死に至るケースもある。また、効果はその種類や接種を受ける犬・猫によってばらつきがある。
したがって、「必要な注射を必要なタイミングで受ける」ことが効果的かつ安全なワクチン接種である。判断のためのエビデンス(科学的根拠)は、様々な専門家団体から発表されている。
感染力が強く致死率が高い病気を予防する「コアワクチン」は、再接種までに3年以上の間隔をあけることが推奨されている。また、抗体検査でそれぞれの感染症に対する抵抗力の有無が確認できる。その他の「ノンコアワクチン」の場合、免疫が持続する期間や予防できる病気がそれぞれ異なるため、住環境や飼い主のライフスタイルを基に検討する必要がある。かかりつけの獣医師と相談し、接種の要否とタイミングを慎重に決めることが重要だ。
犬の「混合ワクチン」は年に1回で大丈夫? vol.1…目的と免疫持続期間について
犬や猫の「混合ワクチン」について、エビデンス(科学的根拠)に基づいた考え方を紹介。犬の「コアワクチン」の場合、基本的には毎年の接種は必要ないとされる。犬の「混合ワクチン」は年に1回で大丈夫? vol.2…副作用のリスクと安全な接種
世界的な専門家団体などが発行しているガイドラインでは、ジステンパーウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス(2型)に対応する「コアワクチン」の接種は3年に一度を推奨。副反応のリスクを最小限にするため、必要以上に接種することは避けるべきとされている。「ノンコアワクチン」の要否と接種タイミングは、獣医師と相談して決めるのが安全。猫にワクチン接種は必要? ライフスタイルに応じて獣医師と相談を
猫汎白血球減少症ウイルス用ワクチンは長い免疫持続期間をもたらすため、世界小動物獣医師会は、犬のコアワクチンと同様に「3年以下の頻度では接種しない」としている。それ以外については、飼い主のライフスタイルなどを基に獣医師と相談の上判断するのが安心といえる。愛犬への「混合ワクチン」接種、慎重に考えてみませんか? vol.1…これまでのまとめ
筆者の愛犬が混合ワクチン接種による副反応に苦しんだのをきっかけに、改めてワクチン接種の基本を振り返る。エビデンスに基づいた接種の要否およびタイミングの判断方法と、抗体検査の重要性について紹介する。愛犬への「混合ワクチン」接種、慎重に考えてみませんか? vol.2… 事件発生!
ワクチンによるアレルギー反応は、軽い場合でも愛犬には大きな負担がかかる。一睡もできずに体をかきむしる愛犬の姿を見ずに済むように、慎重な判断が大切なことを改めて認識した。愛犬への「混合ワクチン」接種、慎重に考えてみませんか?vol.3…起きたら怖い副作用
ある調査による133件の事例を紹介し、犬用ワクチンの副作用によるリスクを解説。死亡したケースもある。狂犬病ワクチンの場合も、接種との因果関係が否定できない状況で死亡した犬が17頭にのぼる(2018年のデータ)。「インフォームドコンセント」を大切にする獣医師を選ぶのは、飼い主の「家族」に対する責任でもある。愛犬への「混合ワクチン」接種、慎重に考えてみませんか? vol.4 獣医学的な世界標準の考え方
ワクチンは「不必要に接種すべきではない」。免疫の続く期間には個体差があり、10年以上免疫が続く場合もある。その一方で、人間も含めワクチンに反応しない体質も存在するため、抗体検査で免疫レベルを確認することが安心につながる。成犬への1年1度の「コアワクチン」接種は「用法及び用量外」であることは認識しておきたい。「ノンコアワクチン」は、獣医師と相談の上、接種の要否およびタイミングの決定が大切。「そのワクチン、毎年打たないで!」、エビデンスに基づいた混合ワクチン接種プログラム
獣医師による「そのワクチン、毎年打たないで!」と題したセミナーを紹介。犬のワクチンについて、エビデンス(科学的根拠)に基づいた効果的で安全な接種方法が語られた。
全ての飼い主は、大切な家族の一員である愛犬・愛猫に健康でいてほしいという思いでワクチン接種を受けさせているだろう。その一方で、ワクチンによる(因果関係が否定できない)アレルギー症状やアナフィラキシーショック、死亡例も報告されている。実証が難しくエビデンスは得られていないが、ワクチンの過剰接種が中長期的に免疫介在性疾患を引き起こすことも懸念されている。
少なくともコアワクチンの場合、効果がある時に再接種を行っても免疫力に変化がないことも分かっている。わずかとはいえ副反応のリスクを冒して、効果のない注射にお金と時間をかけることに意味はないだろう。必要な時に、必要なワクチンを接種することで、安全かつ効果的な感染症予防に努めたい。