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ヨーロッパにおける犬猫のQOL向上に向けた取り組み…まとめ

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欧州ではペットの繁殖に対する問題が多く取り上げられる。オランダ、ベルギー、ノルウェーでは、遺伝性疾患を解消し、動物たちの生活の質(Quality of Life)向上につなげるための法的な努力が行われている。これまでに紹介した、そうした取り組みをまとめた。

  • ヨーロッパの動物愛護事情 vol.1…オランダで鼻の低すぎる犬の繁殖を禁止する法律が施行

    フレンチブルドッグなどの短頭犬種(いわゆる「鼻ぺちゃ」犬)は世界中で人気がある。しかし、その独特な顔かたちによって、健康上の問題を抱える個体が多いことが指摘されている。オランダでは2020年、動物福祉に反する繁殖を禁じた法律の厳格な運用を始めた。「農業・自然・食品安全省」は正式な基準を公表し、マズルの短さ、目や鼻孔および呼吸の状態などに関して獣医師が確認し、基準を満たさない犬を繁殖に使用することが禁止された。

  • ヨーロッパの動物愛護事情 vol. 2…オランダの動物福祉、短頭犬種の健康を守る法律とは

    短頭犬種の場合、鼻が極端に短く顔の横幅が広い頭蓋骨形状によって、様々な健康上のトラブルが生じる傾向がある。政府から依頼を受けたオランダ・ユトレヒト大学の報告では、呼吸器系統と目に関する問題を指摘している。こうした苦痛を減らし短頭犬種の健康と福祉を守るため、政府が熟慮の上で厳格な運用を決めたのが動物飼育令・第3条の4項である。そこに明記された6項目を全て満たしていない犬を、国内でブリーディングに使うことが禁止される。

  • ヨーロッパの動物愛護事情 vol.3 … ベルギーでスコティッシュフォールドの繁殖と販売が禁止へ

    2021年10月1日より、ベルギーのフランドル地方ではスコティッシュフォールドなど折れ耳の猫の繁殖と販売が禁止されることが当局から発表された。愛らしい容姿で人気の猫だが、折れ耳は軟骨の変形により耳を支えられないためのものだ。遺伝子の変異によって引き起こされる軟骨の形成不全が原因で、体の他の部分にもトラブルが出る傾向があることが分かっている。慢性的な痛みを伴う場合や脚が不自由になるなど重度のケースもあるという。

  • ヨーロッパの動物愛護事情 vol.4 … “ブーム“による無秩序な繁殖と人間が創り出した体の問題に苦しむ犬たち

    フレンチブルドッグやパグなど「鼻ぺちゃ」な犬たち、いわゆる短頭犬種の生活の質(Quality of Life)に関する問題を専門家が指摘している。呼吸器や目に重大な疾患を抱え、恒常的に苦痛を感じる犬たちが多いという。最悪の場合、死に至ることもあるのがこれらの犬種だ。「短頭種気道症候群(BOAS)」と呼ばれる呼吸器系の疾患については、イギリスの「王立獣医科大学(RVC)」やケンブリッジ大学獣医学部なども警鐘を鳴らしている。

  • ヨーロッパの動物愛護事情 vol.5…適切な繁殖と、愛犬家が「目を養う」ことがカギ

    犬種によっては、人間による極端なブリーディングによって生まれながらの疾患に苦しむケースがある。そうした苦痛を取り除き、短頭犬種の福祉向上を図るための根本的な解決策は秩序ある繁殖のみ。愛犬家は、繁殖に適した親犬の特徴を知ることで、犬たちが幸せな「犬生」を送ることができるよう意識したい。

  • ヨーロッパの動物愛護事情 vol.6…犬の「非倫理的」な繁殖でケネルクラブやブリーダーが法廷へ

    ノルウェー動物保護協会は、「動物福祉法」に違反しているとして同国のケネルクラブやブリーダーなどをオスロ市の地方裁判所に提訴した。同国では、動物福祉法で繁殖について定めた第25条が、遺伝的に身体面・精神面で問題を抱えるリスクのあるブリーディングを禁じている。現在ノルウェー国内で行われているブルドッグとキャバリアの繁殖が、この25条に違反しているというのが主張だ。被告側は提訴棄却を求めたが、保護協会の提出した数々の証拠に獣医学的な根拠があるとして5回にわたり裁判が開かれた。


ノルウェーのケースでは、2022年早々には判決が言い渡されると見られている。イギリス同様に、欧州にも動物福祉に関する課題はある。ペットショップでの生体販売が法律で一律に禁止されているという誤解もあるが、例えばドイツでも店舗で犬猫の販売は行われている。一方で、小国ばかりではあるが、動物福祉のための法整備・運用に努力している例も見られる。

《石川徹》

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