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愛犬への「混合ワクチン」接種、慎重に考えてみませんか? vol.2… 事件発生!

チワプーのひめりんご
  • チワプーのひめりんご
  • 6種混合ワクチンは6種類の病気から犬を守る
  • まず現れた目の周囲の赤みと痒み
  • 背中にも赤みと痒みが発現
  • 世界小動物獣医師会の「ワクチネーションガイドライン」は日本語もあります

前回、これまでご紹介してきた犬用のワクチンについて、ポイントをまとめました。今回は、筆者の愛犬に実際に起こった出来事と、そこで改めて感じた安心で安全なワクチン接種についてご紹介します。

混合ワクチンの中身

まず、ひめりんごが久しぶりに注射した「6種混合ワクチン」ですが、この「混合」って何でしょう?

6種というのは、このワクチンが予防できる病気が6種類あることを意味します。ひめりんごが接種した製剤の場合、犬のジステンパー、犬伝染性肝炎、犬アデノウイルス(2型)感染症、犬パルボウイルス感染症、および犬パラインフルエンザ感染症と犬コロナウイルス感染症に対応します。この中で、犬伝染性肝炎はアデノウイルス2型用ワクチンで予防できるため、製剤の「添付文書」等に記載されているお薬自体は5種類しかありませんが、6種類の病気に対応する意味で「6種」と呼ばれているようです。

6種混合ワクチンは6種類の病気から犬を守る6種混合ワクチンは6種類の病気から犬を守る

ちなみに、同じ製薬会社からは8種と10種の混合ワクチンも出ています。違いは、この6種に「ノンコアワクチン」であるレプトスピラ感染症に対応するワクチンが2種類または4種類追加されているところです。また、6種からノンコアワクチンの犬コロナウイルス感染症予防ワクチンを除外した5種混合ワクチンも最近発売されました。なお、「コロナウイルス」はウイルスの構造上の分類なので、犬コロナウイルスは、いわゆる「新型コロナ(正式名称:SARS-CoV-2」」とは全く別ものです。

アナフィラキシー反応はクリア

ひめりんごは6種混合ワクチンの接種を受けたわけですが、ワクチンの副反応(以下、一般的な表現として「副作用」とします)で怖いのは「アナフィラキシー反応」です。人間にも起こるので、多くの方がご存知だと思います。急に発症し、命に関わるまでに悪化することもあるアレルギー反応で、発症時には緊急治療を要します。

まれに1時間ほど経ってから症状が出る場合もあるそうですが、注射(=アレルゲンに晒されて)から15分ほどで現れるのが一般的だそうです。ひめりんごの場合も、念のため1時間ほど様子を見ました。特に変わった様子は見られず、一安心。

赤みと痒みから嘔吐と下痢

しかし! 夕食後、注射から2時間ほどして目の周りと背中が赤くなり始めました。かなり痒いようです。ぐったりした様子などはありませんでしたが、さらに4~5時間経過すると嘔吐してしまいました。しばらくして下痢も…。引き続き、元気がなくなったり呼吸が荒くなったりするなどの重い症状は見られず、目の周りの赤みも次第に解消したので、定期的にかかりつけの獣医さんからお電話をいただきながら経過観察ということになりました。

まず現れた目の周囲の赤みと痒みまず現れた目の周囲の赤みと痒み

その後も注射を打った周辺の背中の皮膚がかなり赤く、痒みも強かったようです。夜は何度も起きて背中を掻いていたため、朝起きた時にはピンポン玉くらいの大きさの抜け毛のかたまりが2つ床に落ちていいました。朝は落ち着いて食欲もありましたが、念のために診ていただき、輸液や投薬で回復しました。

比較的軽かったとはいえ、痒がって夜通し背中を「掻きむしる」愛犬の姿を見るのはかなりつらい経験でした。少し血が滲んでいたため、背中のかさぶたはしばらく残りました。アナフィラキシー反応とは違って命に関わるリスクは高くないことも分かってはいましたが、不安はとても大きいものでした。何よりも、肉体面だけでなく精神的にもひめりんごにかかった負担はかなりの物だったと思います。

背中にも赤みと痒みが発現背中にも赤みと痒みが発現

反省…注射は午前中に

体調も良かったですし、以前は問題無かったため予測できない事態ではありましたが、飼い主としての反省は午前中に接種を受けさせなかったことです。ありがたいことに、かかりつけの先生は真夜中でも電話対応してくれますし、必要があれば往診もしていただけます。近くに深夜対応の救急病院もありますが、昼間の時間帯であれば念のための受診もすぐできました。やはり、注射は午前中の早いタイミングが安心です。知ってはいましたが、「まさか起きないだろう」という気の緩みが、我が子の苦痛を増やしてしまいました…。

ワクチンに関する現在の考え方…コアワクチンの免疫持続期間は最低3年

この出来事を通して改めて考えたのが、「ワクチン接種は必要最低限に」という世界小動物獣医師会(WSASA)など世界的な専門団体が提唱しているガイドラインについてでした。ワクチン接種後の免疫持続期間(DOI)は最低3年であり、3年以内に再接種を行わない、というのがWSAVAのガイドラインです。ただし、免疫反応には個体差があるため例外は考えられます。抗体検査によって充分な抗体値が確認できれば、免疫力が充分に備わっていることの証明になることもWSAVAは明言しています。

世界小動物獣医師会の「ワクチネーションガイドライン」は日本語もあります世界小動物獣医師会の「ワクチネーションガイドライン」は日本語もあります

必要な時に必要なワクチンを

ひめりんごの場合、抗体検査で必要と判断した上での接種であり、いずれにしてもこの副作用は避けられませんでした。ですが、前回の接種から3年経っていてもあの症状だったわけですから、抗体検査無しに毎年接種していたら、いつ、どんな症状が出ていたか分かりません。もちろん、何も無かった可能性もありますが、「もしも」を想像すると怖くなります。

また、抗体が充分ある状態でさらに同じ病気に対するワクチン接種を行っても全く意味が無いことも分かっています。「続・犬猫のワクチン接種について vol.1…犬のコアワクチン、"1年に1回"の必要はない」でご紹介した安田英巳獣医師の例えをお借りすると、「いくら頑張ってもテストで100点を越えられない」のと同じです。

今回、ひめりんごは必要な時に必要な物を接種したわけなので、今後どうするかはかかりつけの先生と相談しながら決めて行こうと思います。数年は免疫が続くはずですから、その間に獣医療やワクチン製剤もさらに進歩するかもしれません。

次回は、もう一度、ワクチン接種に関する専門家の意見を副作用の状況とあわせてご紹介します。

《石川徹》

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