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愛犬への「混合ワクチン」接種、慎重に考えてみませんか?vol.3…起きたら怖い副作用

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  • 欧州愛玩動物獣医師会連合もコアワクチンによる抗体が長期持続する事をを発表
  • 動物医薬品検査所のウェブサイトで副作用情報の検索が可能
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  • 「用法・用量外」使用

前回までに、ワクチンは必要なものを必要な時に接種することが愛犬の身体を守る上で安心・安全なことをご紹介しました。

これまでのまとめ:ノンコアワクチンは獣医さんと相談して

「ノンコア」に分類される犬コロナウイルス感染症や犬パラインフルエンザ感染症、レプトスピラ病に対応するワクチンは接種後の免疫持続期間(DOI)が短くバラバラであることが分かっています。また居住地や環境、飼い主さんのライフスタイルなどによって感染リスクも大きく異なります。

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したがって、接種の要否に加えてタイミングも、かかりつけの獣医さんと充分に相談した上で決めるのが安心です。さらに、レプトスピラ病の場合は原因となる菌の種類が非常に多いため、ワクチンが効かないケースもあり得ることは知っておいた方が良いと思います。(レプトスピラ感染症については、「水害後は衛生面に注意…ペットも人も感染症の予防を」をご参照ください。)

これまでのまとめ:コアワクチンは多くの場合毎年の接種は不要

コアワクチンについては、ほとんどの場合DOIが長期にわたることと、その期間中に同じ種類のウイルスに対応するワクチンを接種しても全く効果が無いことが分かっていることをご紹介しました。「コアワクチンは3年以内に再接種を行わない」と明記する世界小動物獣医師会(WSAVA)の「ワクチネーションガイドライングループ(VGG)」が作成している「ワクチネーションガイドライン」がその代表的なものです。それ以外にも「欧州愛玩動物獣医師会連合」(=筆者訳:FECAVA)など、複数の世界的な専門家団体からエビデンス(科学的根拠)を伴う論文等が公開されています。

欧州愛玩動物獣医師会連合もコアワクチンによる抗体が長期持続する事をを発表欧州愛玩動物獣医師会連合もコアワクチンによる抗体が長期持続する事をを発表

ワクチンの副作用によるリスク:133件の事例

「犬の"混合ワクチン"は年に1回で大丈夫? vol.2…副作用のリスクと安全な接種」でご紹介しましたが、以前、日本小動物獣医学会が混合ワクチンの副反応(以下、一般的な表現として「副作用」とします)に関する調査を行いました。情報が正確に得られた混合ワクチン接種例1万620のうち、133件(1.25%)で副作用が見られたそうです。元気または食欲の消失が117例、発熱が66例、アナフラキシー症状が1例と、死亡例も1件あったそうです。

狂犬病ワクチンの副作用:少なくとも年間17頭が死亡

狂犬病の予防接種についても調べてみました。もちろん混合ワクチンとは中身が全く違いますが、ワクチンの副作用がどれくらい起きているのかを「ある程度」正確に見てみようと思ったからです。

狂犬病ワクチンの接種頭数は、厚生労働省がデータを開示しています。それによると、平成30年(2018年)には全国で444万1826頭が接種を行っています。一方、農林水産省の関連組織である「動物医薬品検査所」の副作用情報データベースを検索すると、狂犬病ワクチンとの因果関係が否定できない副作用の報告が同年には33件あり、そのうちの17頭が死亡しています。

動物医薬品検査所のウェブサイトで副作用情報の検索が可能動物医薬品検査所のウェブサイトで副作用情報の検索が可能

家族にとっては常に100

この数字を単純計算すると、狂犬病ワクチンによる副作用の発生率は0.0007429377%となります。ただし、同検査所に直接確認したところ、この副作用情報は獣医師または獣医師から報告された製薬会社が、因果関係について「独自に判断し報告」したものに限られるそうです。想像の域を出ませんが、実際の件数はこれよりも遥かに多い可能性が考えられます。また、日本小動物獣医学会が実際の臨床例に基づいて行った混合ワクチンに関する調査では副作用が1.25%の確率で発生しています。

いずれにしても、数字だけを見れば確率的には非常に低いものであり、狂犬病ワクチンも混合ワクチンも安全性の高いお薬であることに間違いは無いでしょう。ただ、今回、愛犬に生じたワクチンの副作用でしみじみと感じたのは、「家族にとっては常に100」だということでした。

確率が数%とかコンマ数%であったとしても、そこに私たちの大切な家族である愛犬が含まれない保証は全くありません。改めて、ワクチン接種は必要な物を必要な時に最低限、かつ体調なども充分に確認の上、慎重を期すことの大切さを実感しました。

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「インフォームドコンセント」の大切さ

人間の医療では、「インフォームドコンセント」という言葉をよく聞くと思います。直訳すると、「告知に基づく同意」といった意味でしょう。

ちなみに、「医療法」第一条の四・第二項では医療従事者に対して以下の義務が課せられています。
「医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、医療を提供するに当たり、適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない」(原文ママ)。

獣医さんが同法上の「その他の医療の担い手」に含まれるかどうかはさておき、飼い主さんへの適切な説明と同意を得ることは獣医療行為としても必要だと思います。

成犬への1年1度のコアワクチン接種は「用法及び用量外」

お薬のテレビCMなどでは、「用量・用法は守りましょう」とよく言っていますね。飲み過ぎたらお薬も毒になり得ますから、これは大切ですよね。動物用のお薬もワクチンも、当然、量と使い方は決められています。

「用法・用量外」使用「用法・用量外」使用

次回は、年に1度の成犬へのコアワクチン接種が「用量・用法」外であることについてご紹介するとともに、理想的なワクチン接種の考え方を改めてまとめます。

《石川徹》

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